澪の目が覚めると、そこは畳のある和室のような場所。
布団の上で目が覚めると、女の子が襖を開けて中へ入って来た。
座敷童「おはようございます、若奥様さま」
澪「おはようございます」
座敷童「わらわは、座敷わらしの雅と申します」
澪「ざ、座敷わらし?!」
澪は昨日の出来事を思い出し、ここが小山田の家だということに思い至る。
座敷童「いま、若旦那さまを呼んできます」
澪「ちょ、ちょっと待って。ここはどこなの?」
座敷童「ここは、鬼界の鬼屋敷になります」
澪「日本じゃないってこと?」
座敷童「いえ、ここは日本です。日本の裏側にかくりよという世界があって、昔は奥方さまが住んでいた現世とも繋がっていたのですが、江戸時代の終わりに閉鎖されてしまって……若旦那さまは勉強がてら現世へ花嫁探しに行っていたのです。鬼界では1000年に一度、人間の花嫁を迎えなければならないという決まりがありますので……それにしても、花嫁が見つかって本当によかったです」
(ま、待って……これは夢じゃないわよね)
混乱した澪は、自分で自分のほっぺたをつねっていた。
現実だと思い至った澪は涙目になりながらも青ざめる。
ほむら(小山田)「おい、余計なことまで喋るんじゃない」
ほむらが部屋の中へ入って来ると、雅を窘めた。
座敷童「若旦那さま、失礼いたしました。昼餉を持って参りましょうか?」
ほむら「いや、いい」
座敷童「それでは、失礼いたします。ごゆっくり」
ほむら「すまない、大丈夫か? 雅は見た目が人間に近いし、癒しの力も持っているからつけたのだが、お喋りが過ぎる奴でな。人間を連れ帰ったんで、花嫁だと勘違いしてるんだ」
澪「……現世へは、嫁探しに?」
ほむら「いいや。私の本当の目的は、現世での勉強だ。なんせ次の鬼王は私だからな」
澪「でも、それじゃ花嫁は……私、やっぱり現世へ帰ります」
ほむら「帰って、どうするんだ?」
澪「……迷惑はかけられません」
ほむら「傍にいてくれないか?」
(えっ、それはどういう意味?)
彼の黒髪から生えている、小さな三角の形をした二本の角と赤い瞳を見ていたが、整った顔立ちと優しい笑顔に心がかき乱され、赤面してしまう澪。
ほむら「私の嫁になってくれたら嬉しいが、無理じいはしたくないんだ。もともと、鬼は残虐というイメージが強い。だけど、力で捻じ伏せるようでは鬼の頂点に立てない。それを証明するためにも、人間の花嫁を迎える」
澪「人間の花嫁を迎えることが、一種のステータスということですか?」
ほむら「よくも悪くも昔からの習慣でな。ステータスというわけではない。ただ、人間の嫁を迎えられるくらい鬼として魅力的な鬼という証明になるくらいだと思う。そうだ、澪……と言ったな?」
澪「はい」
ほむらは澪に近づいて行き、澪の頬に手を当てて彼女を見つめていた。
ほむら「わたしは君のことが……いや、なんでもない」
ほむらはそう言うと、澪の顔から手を離して顔をそむけた。
澪「いま、何と……」
ほむら「父親の実験の手伝いをしていたのか?」
澪「いえ、簡単な道具の手入れはしておりましたが、発明の方は……」
ほむら「手先は、器用な方か?」
澪「……」
ほむら「なに、料理が出来るのであれば料理人として雇えるし、澪の居場所を作ってやれると思ってな」
名前を呼ばれて、ドキリとする澪。
澪「得意ではありませんが、簡単な物なら作れます」
ほむら「それなら、試しに料理人見習いをやってみるか?」
澪「はい、ありがとうございます」
(あれ? 今、嫁になってくれたら嬉しいと言っていたような……私の聞き間違い?)
ほむら「鬼の妖の中には残虐な者もいる。うちで働いているスタッフは大丈夫だと思うが、念のために私の婚約者だということにしておこう」
澪「はい、ありがとうございま――え?」
ほむら「寝る布団は別々だが、しばらくの間、部屋は一緒にする。構わないか?」
澪「分かりました」
(……おじいちゃんは、男子はケダモノだから決して二人きりになるなと言っていたような気がするんだけど、大丈夫かしら?)
ふと、要のことを思い出し、泣きそうになってしまう澪。
ほむら「嫌か?」
ほむらが私の顔を覗き込んできた。
澪「いえ……今日から私は、若旦那様の婚約者ですね。よろしくお願い致します」
ほむら「ほむらだ。婚約者のフリをするなら、ほむらと呼んでくれ」
澪「はい、ほむら様」
ほむら「雅に昼餉を持ってこさせる。ゆっくり休んでいてくれ」
澪「ありがとうございます、ほむら様」
居場所を得て安心した澪は、思わず微笑んだ。
その笑顔に、固まるほむら。
ほむら「また明日な」
澪「はい、また明日」
部屋を出て行くほむら。
澪は昼餉を待っていたが、そのまま眠ってしまう。
布団の上で目が覚めると、女の子が襖を開けて中へ入って来た。
座敷童「おはようございます、若奥様さま」
澪「おはようございます」
座敷童「わらわは、座敷わらしの雅と申します」
澪「ざ、座敷わらし?!」
澪は昨日の出来事を思い出し、ここが小山田の家だということに思い至る。
座敷童「いま、若旦那さまを呼んできます」
澪「ちょ、ちょっと待って。ここはどこなの?」
座敷童「ここは、鬼界の鬼屋敷になります」
澪「日本じゃないってこと?」
座敷童「いえ、ここは日本です。日本の裏側にかくりよという世界があって、昔は奥方さまが住んでいた現世とも繋がっていたのですが、江戸時代の終わりに閉鎖されてしまって……若旦那さまは勉強がてら現世へ花嫁探しに行っていたのです。鬼界では1000年に一度、人間の花嫁を迎えなければならないという決まりがありますので……それにしても、花嫁が見つかって本当によかったです」
(ま、待って……これは夢じゃないわよね)
混乱した澪は、自分で自分のほっぺたをつねっていた。
現実だと思い至った澪は涙目になりながらも青ざめる。
ほむら(小山田)「おい、余計なことまで喋るんじゃない」
ほむらが部屋の中へ入って来ると、雅を窘めた。
座敷童「若旦那さま、失礼いたしました。昼餉を持って参りましょうか?」
ほむら「いや、いい」
座敷童「それでは、失礼いたします。ごゆっくり」
ほむら「すまない、大丈夫か? 雅は見た目が人間に近いし、癒しの力も持っているからつけたのだが、お喋りが過ぎる奴でな。人間を連れ帰ったんで、花嫁だと勘違いしてるんだ」
澪「……現世へは、嫁探しに?」
ほむら「いいや。私の本当の目的は、現世での勉強だ。なんせ次の鬼王は私だからな」
澪「でも、それじゃ花嫁は……私、やっぱり現世へ帰ります」
ほむら「帰って、どうするんだ?」
澪「……迷惑はかけられません」
ほむら「傍にいてくれないか?」
(えっ、それはどういう意味?)
彼の黒髪から生えている、小さな三角の形をした二本の角と赤い瞳を見ていたが、整った顔立ちと優しい笑顔に心がかき乱され、赤面してしまう澪。
ほむら「私の嫁になってくれたら嬉しいが、無理じいはしたくないんだ。もともと、鬼は残虐というイメージが強い。だけど、力で捻じ伏せるようでは鬼の頂点に立てない。それを証明するためにも、人間の花嫁を迎える」
澪「人間の花嫁を迎えることが、一種のステータスということですか?」
ほむら「よくも悪くも昔からの習慣でな。ステータスというわけではない。ただ、人間の嫁を迎えられるくらい鬼として魅力的な鬼という証明になるくらいだと思う。そうだ、澪……と言ったな?」
澪「はい」
ほむらは澪に近づいて行き、澪の頬に手を当てて彼女を見つめていた。
ほむら「わたしは君のことが……いや、なんでもない」
ほむらはそう言うと、澪の顔から手を離して顔をそむけた。
澪「いま、何と……」
ほむら「父親の実験の手伝いをしていたのか?」
澪「いえ、簡単な道具の手入れはしておりましたが、発明の方は……」
ほむら「手先は、器用な方か?」
澪「……」
ほむら「なに、料理が出来るのであれば料理人として雇えるし、澪の居場所を作ってやれると思ってな」
名前を呼ばれて、ドキリとする澪。
澪「得意ではありませんが、簡単な物なら作れます」
ほむら「それなら、試しに料理人見習いをやってみるか?」
澪「はい、ありがとうございます」
(あれ? 今、嫁になってくれたら嬉しいと言っていたような……私の聞き間違い?)
ほむら「鬼の妖の中には残虐な者もいる。うちで働いているスタッフは大丈夫だと思うが、念のために私の婚約者だということにしておこう」
澪「はい、ありがとうございま――え?」
ほむら「寝る布団は別々だが、しばらくの間、部屋は一緒にする。構わないか?」
澪「分かりました」
(……おじいちゃんは、男子はケダモノだから決して二人きりになるなと言っていたような気がするんだけど、大丈夫かしら?)
ふと、要のことを思い出し、泣きそうになってしまう澪。
ほむら「嫌か?」
ほむらが私の顔を覗き込んできた。
澪「いえ……今日から私は、若旦那様の婚約者ですね。よろしくお願い致します」
ほむら「ほむらだ。婚約者のフリをするなら、ほむらと呼んでくれ」
澪「はい、ほむら様」
ほむら「雅に昼餉を持ってこさせる。ゆっくり休んでいてくれ」
澪「ありがとうございます、ほむら様」
居場所を得て安心した澪は、思わず微笑んだ。
その笑顔に、固まるほむら。
ほむら「また明日な」
澪「はい、また明日」
部屋を出て行くほむら。
澪は昼餉を待っていたが、そのまま眠ってしまう。



