おれの文字起こしした資料を読んだあと、葛西くんは自分のスマホで不動産サイトを検索した。おれが見た時と同じ物件情報が、画面に表示される。
「電話してきたのは、この家を管理してる人じゃないかな。制服姿の高校生が侵入してるのを見て、怒って電話かけてきたんだよ」
誰でも予測できそうなおれの言葉に、誰も反応しない。皆の視線は、スマホに表示されている賃貸サイトの文字に釘付けだった。
『和室に真っ黒な男性の幽霊』
火災で死亡事故のあった家に、真っ黒な幽霊。まるでホラー映画みたいだ。
苦情電話と事故物件の不気味な繋がりに、みんなの表情は暗くなった。
「調査しようと思って住所をメモってたけど、ここを撮影で使うのはやめよう。もしこの電話してきた人に見られたら、大変なことになりそうだし」
「……本当に管理人の方だと思いますか」
ふいに、夏目くんが言った。
はっとしておれが顔を上げると、葛西くんと志度くんも同時に目を見開いた。
「実際に聞いていないので判断できませんけど、この電話はただのクレームじゃありませんよね。過去にあった火事と、なにか関係があるんじゃありませんか」
夏目くんの言いたいことが、なんとなく分かってくる。おれが反論しようと息を吸ったタイミングで、葛西くんが笑った。
「まさか、火事で死んだ人の幽霊が電話してきたってことか? だったら怖すぎんだろ」
「それを調べるのが、ここの活動ですよね」
まるで挑発するような言い方だ。なにかを試されているような気がして、胸の奥がザワザワした。
「……そんなんじゃない。あの電話は人間の声だよ。幽霊に電話なんかかけられないし、学校に苦情も言えない。だってもう亡くなってるんだから」
おれはそう言うと、スマホに表示されているページをブックマークした。
「いいよ、ここの家を調べよう。プロモ動画も、ここを」
「……大丈夫すか、部長」
おれがムキになっていることに気付いたのか、志度くんが心配そうに見つめてくる。
「うん。なんでうちの学校に電話してきたのか気になるし、今から新しい場所を探す時間もないしね。今月中に動画をつくる必要があるから、なんにせよ急ピッチで進めることになるけど……」
「かまわねぇよ。今週の土日から、さっそくはじめようぜ。撮影はスマホで充分だし、動画編集も部室のパソコンさえあればなんとかなる」
「天気とか時間帯によっては暗くなるかもしれないし、照明くらいは必要じゃないすか。新聞部に知り合いがいるんで、借りられるか聞いてみます」
「志度お前、よそに友達いたんだな」
「……ウス」
さっそく打ち合わせを始める葛西くんと志度くんの隣で、夏目くんはじっとおれの書き起こした資料を見つめていた。
ぱちん、ぱち、ぱちん。
なにかが燃えるような、小さな音が脳内によみがえる。
火災による死亡事故。
和室に真っ黒な男性の幽霊。
――たぁ……なベです
会話に割り込んでくるような、とつぜんの名乗り。
穏やかな日差しが満ちた部室はいつも通りなのに、なぜか息苦しい。
そっと深呼吸すると、なにかが焦げるような匂いがした気がした。
「電話してきたのは、この家を管理してる人じゃないかな。制服姿の高校生が侵入してるのを見て、怒って電話かけてきたんだよ」
誰でも予測できそうなおれの言葉に、誰も反応しない。皆の視線は、スマホに表示されている賃貸サイトの文字に釘付けだった。
『和室に真っ黒な男性の幽霊』
火災で死亡事故のあった家に、真っ黒な幽霊。まるでホラー映画みたいだ。
苦情電話と事故物件の不気味な繋がりに、みんなの表情は暗くなった。
「調査しようと思って住所をメモってたけど、ここを撮影で使うのはやめよう。もしこの電話してきた人に見られたら、大変なことになりそうだし」
「……本当に管理人の方だと思いますか」
ふいに、夏目くんが言った。
はっとしておれが顔を上げると、葛西くんと志度くんも同時に目を見開いた。
「実際に聞いていないので判断できませんけど、この電話はただのクレームじゃありませんよね。過去にあった火事と、なにか関係があるんじゃありませんか」
夏目くんの言いたいことが、なんとなく分かってくる。おれが反論しようと息を吸ったタイミングで、葛西くんが笑った。
「まさか、火事で死んだ人の幽霊が電話してきたってことか? だったら怖すぎんだろ」
「それを調べるのが、ここの活動ですよね」
まるで挑発するような言い方だ。なにかを試されているような気がして、胸の奥がザワザワした。
「……そんなんじゃない。あの電話は人間の声だよ。幽霊に電話なんかかけられないし、学校に苦情も言えない。だってもう亡くなってるんだから」
おれはそう言うと、スマホに表示されているページをブックマークした。
「いいよ、ここの家を調べよう。プロモ動画も、ここを」
「……大丈夫すか、部長」
おれがムキになっていることに気付いたのか、志度くんが心配そうに見つめてくる。
「うん。なんでうちの学校に電話してきたのか気になるし、今から新しい場所を探す時間もないしね。今月中に動画をつくる必要があるから、なんにせよ急ピッチで進めることになるけど……」
「かまわねぇよ。今週の土日から、さっそくはじめようぜ。撮影はスマホで充分だし、動画編集も部室のパソコンさえあればなんとかなる」
「天気とか時間帯によっては暗くなるかもしれないし、照明くらいは必要じゃないすか。新聞部に知り合いがいるんで、借りられるか聞いてみます」
「志度お前、よそに友達いたんだな」
「……ウス」
さっそく打ち合わせを始める葛西くんと志度くんの隣で、夏目くんはじっとおれの書き起こした資料を見つめていた。
ぱちん、ぱち、ぱちん。
なにかが燃えるような、小さな音が脳内によみがえる。
火災による死亡事故。
和室に真っ黒な男性の幽霊。
――たぁ……なベです
会話に割り込んでくるような、とつぜんの名乗り。
穏やかな日差しが満ちた部室はいつも通りなのに、なぜか息苦しい。
そっと深呼吸すると、なにかが焦げるような匂いがした気がした。
