数時間後。
ホールの照明が落ち、ステージだけが眩しく浮かび上がった。司会者がマイクを握り、声を張る。
「第一ラウンド!千六百二十二人の中からペーパークイズを勝ち抜いた六十人は誰だー!?」
音楽が一気に大きくなる。客席から手拍子が湧いた。俺もその流れに乗って手を叩きながら、胸の奥が少しずつ熱くなっていくのを感じていた。ここからが栄光杯だ。名前を呼ばれた者だけが、次の舞台へ進める。
「映えあるペーパーテスト第一位! 桜田剛毅(さくらだ ごうき)!」
会場がどっと沸いた。
お、桜田さんすげぇ。
素直にそう思って、俺は拍手をした。さっき通路で会ったときの軽い笑い方を思い出す。あの人は昔から知識派クイズプレイヤーで、ペーパーテスト上位の常連だ。
隣を見ると、祈本は拍手どころではなさそうだった。両手の指を固く組み、祈るように膝の上へ置いている。横顔はいつもよりずっとこわばっていて、額にはうっすら汗が浮いていた。
楽観ではなく客観的に見て、こいつがペーパーを通過できないわけがない。毎週のように問題集を読み込み、読んだものをほとんどそのまま記憶した。あの異様なほど正確な記憶力を、誰より近くで見ている俺は信じている。きっと祈本本人よりも。
その名が呼ばれたのは、思ったよりもすぐだった。
「第二十三位――祈本綴(きのもと つづる)!」
表示された名前を見た瞬間、反射的に立ち上がっていた。
「おおおおおお!」
声が出た。自分でも驚くくらい大きかった。祈本はぽかんとして、俺を見上げている。
「おい、祈本! 呼ばれたぞ!」
俺はステージのプロジェクターを指さした。そこには確かに、祈本綴の名前が光っていた。けれど当の本人は、まだ状況を飲み込めていないみたいな顔をしている。
祈本が俺の腕を引っ張った。
「……わかったから。声でかい」
俺はしぶしぶ座る。
「いや、もっと喜べよ!」
そう言っても、祈本は派手には笑わなかった。顔に出すのが苦手なのだろう。いつものように静かな表情のままだった。それでも、周りの席の人たちから「おめでとう」と拍手されると、少しだけ目を伏せて、「ありがとうございます」と恥ずかしそうに答えた。
名前は次々に呼ばれていった。
三十位、四十位、五十位。
拍手が起こり、歓声が上がり、そのたびに誰かが立ち上がっていく。呼ばれた人間は光のほうへ進み、呼ばれなかった人間は客席に残る。その境目が、一人ずつ、残酷にはっきりしていく。
俺は手を叩きながら、自分の名前を待っていた。
まだ大丈夫だと思った。去年優勝した自分が、ここで落ちるはずがない。六十位以内に入っていればいい。ペーパーテストの順位なんて関係ない。壇上に立てれば、次のラウンドの早押しで勝てる。
五十八位が呼ばれ、五十九位が呼ばれた。
そして。
「第六十位――」
最後の名前が、読み上げられた。
───俺の名前は、ついに呼ばれることはなかった。
