怪奇!ユキ!マジック!


僕が経験した奇妙な出来事とそれに関する話をここに書いておきます。
僕、中学生なんですけど、中学の時ユキっていう友達が居たんです。
居たんですって書いたら、もう死んだみたいな言い方になっちゃいますよね、実際には行方不明なんですけど。とにかく、その友人のユキについての話です。

ユキは僕と同じ中学の一年生(現在は二年生)で、女の子みたいにかなり可愛い顔だったんですけど男の子です。二つ結びをして学ランを着ていたので悪目立ちした後に、顔が可愛いから許されてる、って感じで変わった奴です。

僕が住んでる町は結構田舎で、でも不便はなく過ごせる都会といえば都会な田舎なんですけど、基本的に僕たちみたいな子供の移動は自転車か電車でしています。
5キロくらいだったら自転車で一走りしていけます。
その日僕たちは隣町のイオンで映画を見ようってなって、当然みんな自転車でいつもは行くんですけど、たまたまユキが足を捻挫してたんです。捻挫した理由はユキの自業自得な悪ふざけが原因なのでここには書きません。
なのでユキだけ電車で移動して最寄駅で再集合しようかってなりました。
ユキは僕の後ろに乗せろってうるさかったんですけど、みんなが「危ないし警察に見つかったらダルい」と宥めてくれたので渋々ホームで別れました。
改札に入っていくのも僕はちゃんと見ました。
ユキは休みの日は髪を下ろしているので、痩せて小さい後ろ姿は少し伸びたボブの女の子みたいでした。

ユキと別れた僕たちは、ちんたら走ってユキを待たせたら可哀想だと面白おかしく話しながら、急いで待ち合わせの駅に向かいました。

到着したのは20分後くらいだったと思います。
ユキが乗る予定だった電車は7分前に着いているはずですが、ユキが見当たりません。
てっきりユキは外で僕たちを待っていると思っていたので、僕たちはまたユキの悪ノリが始まったんだなと呆れつつ自転車を停めました。
通話でさっさと呼び出そう、となり一人がスマホを取り出し「あれ、ユキだ」と言いました。
僕たちは自転車を爆走していて気付かなかったのですが、どうやらグループチャットにユキから連絡が入っていたようです。それも5分前に。

ユキからのチャットの内容は「やばい」「ここどこ」とありました。
僕たちはユキが電車を間違えたと笑いながら、各々「戻ってこい」「何やってんだ」「走れ」「落ち着け」等ふざけながらユキを茶化すメッセージを送りました。
間を開けずすぐに既読マークの数が揃い、一枚の画像が送られて来ました。
駅名が書かれた看板を背景に、ユキが口を尖らせ顔を顰めた変顔の自撮りでした。
みんな笑いながらまた茶化すメッセージを送り、そのうちの一人が通話の呼び出しをしようとしました。
しかし、通話のキャンセルのシステムメッセージがすぐに表示されます。
不思議に思い、僕も同じように呼び出しボタンを押しましたが即座に通話キャンセルのシステムメッセージが表示されました。他の人も同じでした。
誰かが「ユキ誰かと通話してる?」とメッセージを送りました。しかしユキからは「してない!」と返信がきます。試しにユキから通話するように頼むと、同じようにユキが通話をキャンセルされたシステムメッセージが表示されました。
僕たちはなんだか薄気味悪くなり、ユキは今どこにいるのか調べることにしました。
先ほど送られて来た写真のメッセージに駅名看板があったとメッセージを遡り僕たちは言葉を失いました。
何故か写真の取得保存期間が終了されており、こちらからは解読できないほど画像の解像度が下がっていたのです。
普通保存期間は二週間程あるはずです、たった数分前に送られた画像の画質がここまで変になるなんておかしいです。
僕たちはユキに今どこにいるのとかメッセージを送りました。少ししてユキから「瀬芹」と簡素なメッセージが届きます。その後は「あ」とか「ぬの、る」とか妙なメッセージが送られて来ました。ポケットに入れた際に勝手に送られてしまった意味のない言葉のようでした。
その後はどんなにメッセージを送っても返事がありません。
一人が「瀬芹」という駅を検索しましたが、そんな駅どこにもありませんでした。
そのときはもう、ユキのいつもの悪ふざけだと考える人は誰もいませんでした。僕たちはすぐに駅室に駆け込み、瀬芹駅と、数分前に到着した電車について職員さんに聞きました。
妙な事を言っているのはわかっていましたが、誰一人笑っておらず、異常なチャット画面を必死に見せていたので、職員さんも困った顔をしつつも丁寧に話を聞いてくれました。
他にも何人か職員さんが来て、僕たちはパニックになりながらこの事を伝えました。
職員さんが泣きそうな僕たちを適当にあしらう事はありませんでしたが、全員困った顔をしながら話し合っていました。
少しして、乗車した電車や時間経過からしてそこまで遠くの駅には居ないはずだからと近辺の駅に特徴に当てはまる男の子がいないか確認の連絡を取ってくれることになりました。
僕たちは対応してくれる事に少し落ち着きを取り戻し、お礼を言いながら職員さんが奥の部屋に行くのを見守りました。
ユキの悪ふざけで駅員さんに結果怒られたとしてもいいから、ユキがどこにいるか知りたかったのです。
待っている間もみんなはユキに個人やグループチャットでこちらの今の状況をメッセージで伝えましたが、ユキから返信はありませんでした。

しばらくして、駅員さんが戻って来て困ったようにユキが見つからなかった事を教えてくれました。駅員さんが僕たちが悪ふざけをしてる可能性を考え、そもそも最初の駅でユキが電車に乗ったのかも確認したそうですが、駅員さんが足を引き摺った女の子か男の子わからない子供が電車に乗っていく様子を覚えていたため、ユキはちゃんと電車に乗っていたようでした。
それを聞いた僕たちは完全にパニックになってしまい、収集がつかなくなってしまったため、最終的に警察に通報する事になりました。
またも困った顔の警察に事情聴取を受けながらも、内心に警察がこの事を解決できるようには思えませんでしたが、僕はその場であった事をちゃんと全て説明しました。
全員の事情聴取が終わった後、ユキのお兄さんの連絡先を知っている子がいたので、連絡先を警察に伝えてから僕たちは返される事になりました。
警察からは不要な憶測や噂をペラペラ話さないようにと言われました。
僕たちは映画どころではなくなってしまい、暗い顔つきで帰路に着きました。

次の日、ユキは学校に来ませんでした。僕たちはユキの話題は避けました。
後から聞いた話でしたが、ユキは行方不明扱いとして、僕たちが家に帰った後、すぐにユキは行方不明者として捜索が始まっていたそうです。
僕があの時ユキを後ろに乗せていればこうなっていなかったかもしれないと何回も後悔しました。

一週間経ってもユキは見つかりませんでした。
その間にもう一度警察からあの日のことをよく思い出してほしいと聴取を受けましたが、僕が伝えられることは何もありませんでした。
一つ気になっていることがあったのですが、あまりに馬鹿馬鹿しいので警察に伝えはしませんでした。

気になっている事というのが、ユキが飼っていたハムスターの名前が何故か肉の名前でつけられており、その内の一匹の名前が「セセリ」だった事でした。
セセリは二ヶ月前、寿命で死んでいました。
もちろん自分でも今は何にでも意味を見出そうとしてしまっていることは理解していたのでずっと黙っていました。
しかし、同じ事を考えた友人は他にもいたようでした。

数日後の事です、学校に突然「ユキに会った人がいるらしい」という噂が流れ出しました。
ユキはみんなからも好かれていたので、ユキの事を噂話として話すのは不謹慎だと、そこまで広まる事はありませんでした。
しかしあの時一緒にいた僕たちは噂の発信元に確認しに行く事になりました。ユキに関する情報は少しでも欲しかったのです。
ユキに会ったという人物は隣のクラスの真面目な女子生徒でした。話を聞くと、噂を流すつもりはなく、たまたま自分が経験した事を家で弟に話した際、それが回り回って学校に戻って結果噂になってしまったとの事でした。
勘違いでも良いので情報が欲しかった僕たちは彼女に話を聞きました。
結果的に、彼女は僕達が警察や職員さんにしか話してない、この前の休日の行動とほぼ同じパターンを繰り返していました。
彼女も電車で僕達の待ち合わせ場所だった駅に行く予定で自分が乗り過ごしていた事に気付き、慌てて窓の外を見た際、見たこともない寂れた駅で足を引き摺りながら歩くユキが見えた、と言いました。その駅は何個かの駅を通り過ぎた後、◯◯駅という僕たちも知っている駅に停まったと言いました。
彼女に駅名の看板は見たのか聞いたところ、ユキらしき人物に気を取られ見ていなかったそうです。

僕達はそれを聞き、同じ条件で僕達も試すことにしました。みんなユキを迎えに行けるかもしれないと希望を抱き、休日の同じ時間に駅で待ち合わせました。
お小遣いが許す限り何度も繰り返しましたが、彼女の言う「寂れた駅」を見つける事はできませんでした。

僕達はその後も休日になると電車に乗ってユキを探しに行きましたがユキを見つける事はできませんでした。
僕たちが彼女に教わった方法でユキを探すのを諦め、しばらく経った頃でした。
ある噂が流れて来ました。

隣町の学校で三日前から行方不明になった小学生がいたそうなのですが、最近最寄駅付近の植え込みで発見された、との事でした。
彼は、三日前、例の駅から例の時間に電車に乗っていたようなのですが、その際乗り過ごしてしまい、そして停車した見たことのない寂れた駅に降りようとしたら、ホームにいた足を引き摺った女の子みたいなお兄さんが、

「降りるな!」

と叫んで来たため、降りるのをやめたそうです。
その後止まらない電車の中で寝てしまったら、気付いたら病院にいた、と言うことらしいです。
彼はその駅はどこの駅なのかと聞かれた際、駅名看板には「ユキ」と書かれていたと言ったそうです。

嘘か本当かは分かりませんが、ユキは今でも間違って降りてしまう人を止めるために駅に一人でいるのかと思うと、胸が押しつぶされそうです。