未来視少女と守護鬼

【5話最後と同時刻】
 ●路上(夕方)
 英之、占い師(琴絵)を不審に見つめる。
 英之「い、いえ結構です。急いでいるので失礼します」
 足早に去ろうとする。

 占い師(琴絵)「好きな人が自分に振り向いてくれなくて悩んでいるのでしょう?」
 英之、足を止めて振り返る。
 占い師(琴絵)「私なら、解決してあげられますわ」

 机の前にある椅子に座る英之の描写。
 英之「——その人には年上の幼馴染がいるんです。僕なんかよりずっと強くて、かっこよくて……。その人は彼のことが好きだから……」
 占い師(琴絵)「ご本人がそう言ってましたの?」
 英之「いえ、でも分かるんです」
 英之、拳を握り締め、俯く。
 英之「ずっと近くで見てたので……」(暗い表情)
 占い師(琴絵)「——なるほど。ならば、その幼馴染を想い人から引き離せばいい」
 英之「え……そんなことが……?」

 占い師(琴絵)、机の下から黒い液体の入った瓶を取り出し、机に置く。
 英之、瓶を見て怪訝な顔。
 占い師(琴絵)、瓶の蓋を開ける。
 占い師(琴絵)「こちらにご注目ください」
 英之、恐る恐る瓶の中を覗き込む。
 瓶の中の液体が突如蛇の形となり、英之に飛びかかる。
 英之「うわっ!」
 英之、驚いて立ち上がる。
 蛇、英之の鼻の中に入る。
 英之、苦しそうにもがくが、やがて大人しくなる。目が虚ろ。
 占い師(琴絵)「力は与えたわ。さぁ——」
 琴絵の顔アップ。口角が上がっている。
 占い師(琴絵)「鬼葉彩人を、殺してきなさい」


【6話冒頭の翌日】
 ●料亭・駐車場
 車まで歩く結衣と彩人。(※仕事帰り)
(結衣服装:着物)(彩人服装:スーツ)
 結衣「んー! なんか今日身体が軽い! トレーニングの成果が出てきたかも!」
 結衣、スキップ。
 彩人「あんまりはしゃぐと転ぶぞ」
 彩人、結衣の少し後ろから、微笑ましげな表情をして歩く。

 ●道路
 彩人が運転する車が走る。
 ●車内
 結衣のスマホが鳴る。
 画面表示:聡
 結衣、電話に出る。
 結衣「はーい、どうしたのお父様?」
 聡「結衣、英之くんを見てないか?」
 結衣「え? 見てないけど……」(戸惑った表情)
 聡「そうか……。実は金宮さんから連絡があってな、昨日から家に戻ってきてないらしいんだ」
 結衣「え!?」(驚いた表情)
 結衣「——うん……うん、分かった。見かけたら連絡する」
 彩人、ミラー越しに結衣を見ている。

 結衣、通話を切る。
 彩人「どうした?」
 結衣「英之くんが家に戻ってないんだって」
 彩人「あの坊ちゃんが?」
 結衣、心配そうに俯く。
 彩人(コマ外)「非行に走るタイプでもないし、何か変なことに巻き込まれてなきゃいいけどな」
 結衣「……」

 結衣、手を叩く。
 結衣「そうだ! 未来視を使えば、どこにいるか分かるかも!」(少し明るい表情)
 彩人「え? でもお前、さっき使ったばっかなのに大丈夫かよ」
 結衣「だいじょーぶ!」
 結衣、目を光らせる。

[未来視]
 ●廃倉庫前
 今は使われていない古びた倉庫。
 そこに英之が入っていく。
[一旦区切る]

 結衣、目は光ったまま。
 結衣「倉庫の中入ってった」
 彩人「倉庫?」
 結衣「周りの景色からしてここから近い場所。次の信号を左に曲がって」
 彩人「分かった」
 結衣(良かった、これで——)

[続き]
 ●廃倉庫前
 車が停まる。
 ●廃倉庫内
 出入り口付近に鉄パイプが転がっている。
 奥の方で英之が後ろを向いて立っている。
 彩人「英之様!」
 彩人、英之に駆け寄る。
(※結衣は車内に待機)
 彩人「ご無事でしたか。ご家族が心配しておられましたよ。さ、家までお送りしま——」

 突如、英之の身体から黒い液体が溢れ出る。
 液体は巨大な蛇の胴体となり、彩人に巻き付く。
 彩人、もがく。
 ゴキンと骨が折れる音。
 彩人、身体がビクンと跳ねたかと思えば、次の瞬間全身を脱力。首がガクンと傾く。
[未来視終わり]

 青ざめて震える結衣。
 結衣「——止めて」
 彩人「え?」
 結衣「倉庫に行っちゃだめ! 車止めて!!」(錯乱している感じで)
 彩人、車を路肩に停める。
 タイヤが軋む音。

 彩人、結衣の方に顔を向ける。
 彩人「おい、どうしたんだよ。急に取り乱して」(眉を寄せ、心配そうな表情)
 結衣、頬に手を置いて俯いている。呼吸が浅く、狼狽している表情。
 結衣(どうしよう……このままだと彩人が死んじゃう。でも英之くんを放っておくわけには……。でも……でも……どうしよう)
 彩人「……」(何かを察した表情)
 彩人、運転席から後部座席に移動。結衣の隣に座る。

 彩人「結衣」
 彩人、結衣の両手ごと彼女の頬を包み込む。強引すぎない力で、顔を上げさせる。
 彩人「何を視たのか教えてくれ。そしたら対処出来る」
 結衣「でも……」(瞳が揺れている)
 彩人「大丈夫だ」(安心させるように笑う)
 彩人「俺が強いの、知ってるだろ? お前が望むなら、俺はどんな未来だって変えてみせる」
 結衣、未だ不安が残るが、少し落ち着いてきた表情。


 ●廃倉庫前
 車が停まる。
 ●廃倉庫内
 出入り口付近に鉄パイプが転がっている。
 奥の方で英之が後ろを向いて立っている。
 彩人「英之様!」
 彩人、英之に駆け寄る。
(※結衣は車内に待機)
 彩人「ご無事でしたか。ご家族が心配しておられましたよ。さ、家までお送りしま——」

 突如、英之の身体から黒い液体が溢れ出る。
 液体は巨大な蛇の胴体となり、彩人に巻き付こうとするが——。
 彩人、地面を蹴って大きく飛び退き、回避。
 着地と同時に、さらに距離を取る。
 その動きの中で、髪と肌が赤く染まり、角が生え、服装は軍服に変わり、鬼の姿へと変貌する。(※刀は未所持)
 彩人「おーおー、これはまた……」(目を細めて口角を上げる)
 巨大な黒い蛇(大蛇)と化した英之の全身描写。
 彩人「少し見ない間に随分と大きくなりましたね」
 大蛇、舌を出して威嚇。
 彩人「こりゃあ骨が折れそうだ」