【3話の翌日】
●街中の道路(昼)
人通りのある街中。
彩人が運転する車が道路を走る。
結衣、後部座席に座っている。ドアに肘を置き、頬杖。不貞腐れている表情(結衣服装:着物)
結衣「ひどいよ、お葬式には出させてくれなかったのにさ」
彩人、ちらりとバックミラー越しに結衣を見る。
(彩人服装:スーツ)
彩人「——そう言ってやるな。旦那様も、申し訳ないと思ってるだろうよ」
料亭に到着。
●料亭・駐車場
彩人、駐車場に車を停める。
彩人「さぁ、着いたぞ」
彩人、車から降りる。
結衣、シートベルトを外す。
彩人、後部座席のドアを開ける。
彩人「記念すべき初仕事だな」
結衣「……」
結衣、硬い表情(緊張している)
彩人、結衣に手を差し出し、少し身を屈め結衣と視線を合わせる。
彩人「そう緊張すんなって。肩の力抜け。お前なら上手くやれる。な?」
彩人、柔らかく笑う。
結衣「……うん」
結衣、少し表情を緩ませて彩人の手を取る。
●料亭・個室
中央に机。
下座に二人の男性が座っている。
奥の方——金宮和弘(四十代後半、スーツ姿)
手前側——金宮英之(十六歳、結衣が通う高校の制服を着ている)
結衣「お待たせいたしました」
結衣、襖を開けて入ってくる。
(※彩人、廊下で待機)
和弘「お久しぶりでございます篠ノ井さん。ありがとうございます、急なお呼び立てに応じてくださって」
▼結衣モノローグ
『この人は金宮和弘さん。不動産会社の社長さん。金宮家と篠ノ井家は昔から親交がある』
和弘「ささ、どうぞこちらへ」(上座へ手を向ける)
結衣「はい——あれ?」
英之に気付く。
結衣「英之くんも来てたんだ」
英之「ああ……。お前最近学校来てないから、その、顔が見たくて」(結衣から目を逸らす)
▼結衣モノローグ
『こっちは英之くん。和弘さんの息子で、私の友達』
結衣「ありがとう、心配してくれて」(微笑む)
英之「べ、別にそんなんじゃ」(頬をかく)
結衣、上座に座る。
和弘「……この度は、詩織さんのご逝去、心よりお悔やみ申し上げます。大変な折にお時間を頂き、誠に申し訳ありません」(深く頭を下げる)
結衣「いえ……。それでは早速——」
結衣、目が光る。
「始めさせていただきます」
●料亭・廊下
部屋の前で待機する彩人。
妖怪の気配を察知。天井を見上げる。廊下を歩く。
●料亭・屋根
丁度結衣達がいる部屋の真上に一匹の猫又(通常の猫と同サイズ、尻尾が二つある。※毛の色は黒以外で)
彩人、猫又の後ろから声をかける。
彩人「よぉ、どうした子猫ちゃん」
猫又、振り向く。
彩人「迷子かい?」
(鬼の姿に変身済み。左手に鞘に納まったままの刀)
猫又「お前、その姿——。篠ノ井に仕える混血か」
彩人「なんだ、俺のこと知ってるのか」
猫又「ああ、有名人だぜ。人間に飼われてる鬼だって」(馬鹿にするような笑み)
彩人、ふっと笑う。
彩人「そういうあんたの飼い主は誰だい、琴絵様ではなさそうだが」
猫又「何言ってやがる」
猫又の身体がぐぐっと膨らみ、虎くらいの大きさになる。
瓦がミシッとなる。
猫又「俺様に首輪をつけられる奴なんざこの世に存在しねぇ、孤高の野良猫だ。あの小娘の前にお前から始末してやる!」
猫又、彩人に接近。鋭い爪を向けてくる。
●料亭・個室
静まり返った室内。
結衣、正座のまま目を閉じている。
額にはうっすらと汗。
呼吸は浅く、表情は険しい。
空気が張り詰める。
向かいでは和弘と英之が、固唾を飲んで見守っている。
結衣、カッと目を見開く(目は光っている)
結衣「視えました! 新規開発中のビルで――基礎部分の欠陥が原因で、崩落事故が起こります!」
和弘「おおっなんてことだ!」(青ざめる)
和弘「だが今なら対処可能だ。事前に知れて本当に良かった」
和弘、分厚い封筒(札束が入っている)を結衣の前に差し出す。
和弘「ありがとうございました。これはほんの心ばかりですが……」
上の方でズシンと物音。
三人、見上げる。
和弘「なんだ? 猫でも暴れているのか?」
結衣、強張った表情。
●料亭・屋根
瓦はあちこち砕け、所々凹んでいる。
全身に傷を負った彩人。息は荒い
右手には抜き身の刀、左手には鞘。
彩人「ハァ……ハァ……」
猫又「なんだ。強いって聞いたが、所詮人間か。全然大したことねぇな!」(余裕の笑み)
猫又の振り下ろされた前足が直撃。
彩人、吹き飛ばされる。
瓦を砕きながら屋根を転がり、結衣達のいる部屋から離れた位置へ。
猫又、ゆっくりと近付く。
彩人、浅い呼吸をしながら猫又を睨む。
猫又、にぃと笑みを浮かべながら前足を振り上げる。
その直後——。
彩人、素早く上体を起こし、猫又の前足を斬る。
猫又、驚いた表情。
猫又(なんだこいつ……急に動きが!)
猫又、彩人から少し距離を取る。
彩人「少々手こずっちまったが」
彩人、ゆっくりと立ち上がる。
彩人「ようやくあそこから引き剥がせた」
口元に笑みを浮かべながら、猫又を見据える。
猫又、はっとする。
猫又「まさか、お前……!」
結衣達がいる部屋の真上の屋根を描写。
彩人「天井でも抜けたら結衣が危ねぇからな!」
彩人、間合いを詰める。
連撃。
猫又、防ぎきれず、その場に倒れる。
彩人、無言で猫又を見下ろす。
猫又、怯えた表情。
猫又「ま、待ってくれ! 分かった降参だ! もう篠ノ井には手を出さねぇ! だから見逃してくれ!」
彩人、猫又の必死の懇願に聞く耳持たず、刀を上段に構える。
猫又「そうだ! お前があの家から解放されるよう、手を打ってやる! だからどうか——」
彩人、はっと僅かに笑う。
彩人「悪ぃな。俺はこの首輪で繋がれてる生活、結構気に入ってんだ」
目を細め、どこか恍惚とした表情。
彩人「俺にとっちゃ、あいつと一緒にいられる唯一の手段だから」
猫又、目を見開く。
彩人、刀を振り下ろし、とどめをさす。
崩れゆく猫又を背景に、彩人の姿が人に戻る。その際傷も回復。
彩人、ふぅと一息つく
彩人「いっ……」
脇腹を押さえる。
服を捲る。そこにはまだ治ってない傷が。
彩人(こいつは時間かかりそうだな……)
●料亭・廊下
個室の前に戻る途中の彩人。
和弘(コマ外)「それでは、失礼いたします」
和弘と英之が個室から出てくる。
彩人、立ち止まりお辞儀。
和弘「ご苦労様」(すれ違いざまに)
英之、彩人を敵意のこもった目で一瞥して通り過ぎる
●料亭・個室
結衣「はぁ〜、疲れた」
大の字で寝転んでいる結衣。少し汗ばんでいる。
襖が開く音。
彩人「何やってんだ、はしたない」(呆れた顔)
結衣「だってぇ」
彩人「ほらさっさと起きろ。帰るぞ」
結衣「えー、無理。今一歩も動けない。も少し休ませて」
彩人「はぁ……。仕方ねぇなぁ」
彩人、結衣をひょいと持ち上げた後、片腕で抱える。
結衣「な……!? ちょっとやめてよ! こんな子供みたいなっ」
結衣、顔を赤くし彩人の胸をバシバシと叩く。
結衣(どうしよう、今汗かいてるのに……っ)
彩人「だって動けないんだろ? ああもう、そんな暴れるな——」
彩人、ピキ、と表情が僅かに歪む。脇腹の傷が痛み、反射的に手を添える。
それを見た結衣、何かを察して大人しくなる。
彩人「観念したか? 車に戻るまでの辛抱な?」(宥める感じで)
結衣「……うん」(素直に頷く)
●料亭・駐車場
駐車場に停めてある車。
彩人、後部座席のドアを開き、抱えていた結衣を降ろす。
彩人「お疲れさん。帰ったらゆっくり休めよ」
結衣「彩人もね」
彩人「うん?」
結衣、彩人のネクタイを引っ張る。
彩人「うぉっ」(驚いた表情)
彩人、前のめりになり座席に手をつく。
結衣「私が手当てしてあげる」
彩人、一瞬ばつが悪そうな顔をするが、その後ふっと笑う。
彩人「そりゃどうも」
車が発進。
●街中の道路(昼)
人通りのある街中。
彩人が運転する車が道路を走る。
結衣、後部座席に座っている。ドアに肘を置き、頬杖。不貞腐れている表情(結衣服装:着物)
結衣「ひどいよ、お葬式には出させてくれなかったのにさ」
彩人、ちらりとバックミラー越しに結衣を見る。
(彩人服装:スーツ)
彩人「——そう言ってやるな。旦那様も、申し訳ないと思ってるだろうよ」
料亭に到着。
●料亭・駐車場
彩人、駐車場に車を停める。
彩人「さぁ、着いたぞ」
彩人、車から降りる。
結衣、シートベルトを外す。
彩人、後部座席のドアを開ける。
彩人「記念すべき初仕事だな」
結衣「……」
結衣、硬い表情(緊張している)
彩人、結衣に手を差し出し、少し身を屈め結衣と視線を合わせる。
彩人「そう緊張すんなって。肩の力抜け。お前なら上手くやれる。な?」
彩人、柔らかく笑う。
結衣「……うん」
結衣、少し表情を緩ませて彩人の手を取る。
●料亭・個室
中央に机。
下座に二人の男性が座っている。
奥の方——金宮和弘(四十代後半、スーツ姿)
手前側——金宮英之(十六歳、結衣が通う高校の制服を着ている)
結衣「お待たせいたしました」
結衣、襖を開けて入ってくる。
(※彩人、廊下で待機)
和弘「お久しぶりでございます篠ノ井さん。ありがとうございます、急なお呼び立てに応じてくださって」
▼結衣モノローグ
『この人は金宮和弘さん。不動産会社の社長さん。金宮家と篠ノ井家は昔から親交がある』
和弘「ささ、どうぞこちらへ」(上座へ手を向ける)
結衣「はい——あれ?」
英之に気付く。
結衣「英之くんも来てたんだ」
英之「ああ……。お前最近学校来てないから、その、顔が見たくて」(結衣から目を逸らす)
▼結衣モノローグ
『こっちは英之くん。和弘さんの息子で、私の友達』
結衣「ありがとう、心配してくれて」(微笑む)
英之「べ、別にそんなんじゃ」(頬をかく)
結衣、上座に座る。
和弘「……この度は、詩織さんのご逝去、心よりお悔やみ申し上げます。大変な折にお時間を頂き、誠に申し訳ありません」(深く頭を下げる)
結衣「いえ……。それでは早速——」
結衣、目が光る。
「始めさせていただきます」
●料亭・廊下
部屋の前で待機する彩人。
妖怪の気配を察知。天井を見上げる。廊下を歩く。
●料亭・屋根
丁度結衣達がいる部屋の真上に一匹の猫又(通常の猫と同サイズ、尻尾が二つある。※毛の色は黒以外で)
彩人、猫又の後ろから声をかける。
彩人「よぉ、どうした子猫ちゃん」
猫又、振り向く。
彩人「迷子かい?」
(鬼の姿に変身済み。左手に鞘に納まったままの刀)
猫又「お前、その姿——。篠ノ井に仕える混血か」
彩人「なんだ、俺のこと知ってるのか」
猫又「ああ、有名人だぜ。人間に飼われてる鬼だって」(馬鹿にするような笑み)
彩人、ふっと笑う。
彩人「そういうあんたの飼い主は誰だい、琴絵様ではなさそうだが」
猫又「何言ってやがる」
猫又の身体がぐぐっと膨らみ、虎くらいの大きさになる。
瓦がミシッとなる。
猫又「俺様に首輪をつけられる奴なんざこの世に存在しねぇ、孤高の野良猫だ。あの小娘の前にお前から始末してやる!」
猫又、彩人に接近。鋭い爪を向けてくる。
●料亭・個室
静まり返った室内。
結衣、正座のまま目を閉じている。
額にはうっすらと汗。
呼吸は浅く、表情は険しい。
空気が張り詰める。
向かいでは和弘と英之が、固唾を飲んで見守っている。
結衣、カッと目を見開く(目は光っている)
結衣「視えました! 新規開発中のビルで――基礎部分の欠陥が原因で、崩落事故が起こります!」
和弘「おおっなんてことだ!」(青ざめる)
和弘「だが今なら対処可能だ。事前に知れて本当に良かった」
和弘、分厚い封筒(札束が入っている)を結衣の前に差し出す。
和弘「ありがとうございました。これはほんの心ばかりですが……」
上の方でズシンと物音。
三人、見上げる。
和弘「なんだ? 猫でも暴れているのか?」
結衣、強張った表情。
●料亭・屋根
瓦はあちこち砕け、所々凹んでいる。
全身に傷を負った彩人。息は荒い
右手には抜き身の刀、左手には鞘。
彩人「ハァ……ハァ……」
猫又「なんだ。強いって聞いたが、所詮人間か。全然大したことねぇな!」(余裕の笑み)
猫又の振り下ろされた前足が直撃。
彩人、吹き飛ばされる。
瓦を砕きながら屋根を転がり、結衣達のいる部屋から離れた位置へ。
猫又、ゆっくりと近付く。
彩人、浅い呼吸をしながら猫又を睨む。
猫又、にぃと笑みを浮かべながら前足を振り上げる。
その直後——。
彩人、素早く上体を起こし、猫又の前足を斬る。
猫又、驚いた表情。
猫又(なんだこいつ……急に動きが!)
猫又、彩人から少し距離を取る。
彩人「少々手こずっちまったが」
彩人、ゆっくりと立ち上がる。
彩人「ようやくあそこから引き剥がせた」
口元に笑みを浮かべながら、猫又を見据える。
猫又、はっとする。
猫又「まさか、お前……!」
結衣達がいる部屋の真上の屋根を描写。
彩人「天井でも抜けたら結衣が危ねぇからな!」
彩人、間合いを詰める。
連撃。
猫又、防ぎきれず、その場に倒れる。
彩人、無言で猫又を見下ろす。
猫又、怯えた表情。
猫又「ま、待ってくれ! 分かった降参だ! もう篠ノ井には手を出さねぇ! だから見逃してくれ!」
彩人、猫又の必死の懇願に聞く耳持たず、刀を上段に構える。
猫又「そうだ! お前があの家から解放されるよう、手を打ってやる! だからどうか——」
彩人、はっと僅かに笑う。
彩人「悪ぃな。俺はこの首輪で繋がれてる生活、結構気に入ってんだ」
目を細め、どこか恍惚とした表情。
彩人「俺にとっちゃ、あいつと一緒にいられる唯一の手段だから」
猫又、目を見開く。
彩人、刀を振り下ろし、とどめをさす。
崩れゆく猫又を背景に、彩人の姿が人に戻る。その際傷も回復。
彩人、ふぅと一息つく
彩人「いっ……」
脇腹を押さえる。
服を捲る。そこにはまだ治ってない傷が。
彩人(こいつは時間かかりそうだな……)
●料亭・廊下
個室の前に戻る途中の彩人。
和弘(コマ外)「それでは、失礼いたします」
和弘と英之が個室から出てくる。
彩人、立ち止まりお辞儀。
和弘「ご苦労様」(すれ違いざまに)
英之、彩人を敵意のこもった目で一瞥して通り過ぎる
●料亭・個室
結衣「はぁ〜、疲れた」
大の字で寝転んでいる結衣。少し汗ばんでいる。
襖が開く音。
彩人「何やってんだ、はしたない」(呆れた顔)
結衣「だってぇ」
彩人「ほらさっさと起きろ。帰るぞ」
結衣「えー、無理。今一歩も動けない。も少し休ませて」
彩人「はぁ……。仕方ねぇなぁ」
彩人、結衣をひょいと持ち上げた後、片腕で抱える。
結衣「な……!? ちょっとやめてよ! こんな子供みたいなっ」
結衣、顔を赤くし彩人の胸をバシバシと叩く。
結衣(どうしよう、今汗かいてるのに……っ)
彩人「だって動けないんだろ? ああもう、そんな暴れるな——」
彩人、ピキ、と表情が僅かに歪む。脇腹の傷が痛み、反射的に手を添える。
それを見た結衣、何かを察して大人しくなる。
彩人「観念したか? 車に戻るまでの辛抱な?」(宥める感じで)
結衣「……うん」(素直に頷く)
●料亭・駐車場
駐車場に停めてある車。
彩人、後部座席のドアを開き、抱えていた結衣を降ろす。
彩人「お疲れさん。帰ったらゆっくり休めよ」
結衣「彩人もね」
彩人「うん?」
結衣、彩人のネクタイを引っ張る。
彩人「うぉっ」(驚いた表情)
彩人、前のめりになり座席に手をつく。
結衣「私が手当てしてあげる」
彩人、一瞬ばつが悪そうな顔をするが、その後ふっと笑う。
彩人「そりゃどうも」
車が発進。



