未来視少女と守護鬼

【2話から数日が経過】
 ●別邸・結衣の部屋(昼)
 結衣「さてさて、生活の基盤も整ったことですし」
 ボストンバックをごそごそ。
 結衣「レッツ修行〜!」
 バックから出した古びた和綴じの本を掲げる。

 結衣(特定の未来を視るのは大変らしいから、早めにコツを掴んでおかないと)
 ページをパラパラとめくる。
 結衣「えーっとなになに……最初のうちは直近の未来から、か」
 本を閉じる。
 結衣「じゃあ今日のお昼ごはんは何かなーっと」
 正座をして目を瞑る。目に意識を集中させる。
 数秒後、目を開く。その際、目が光っている。
 結衣(おお、見えてきた見えてきた)

[未来視]
 ●別邸・キッチン
 キッチンの前に立ち、にんじんを切っている彩人の後ろ姿。
 手前にあるテーブルにはカレールーが置かれている。
 結衣(カレーかぁ)
 彩人「痛った!」
 彩人、包丁で指を切る。指から血が滲んでいる。
 彩人「あー、やっちまった……」
 軽く舌打ち。
[未来視終わり]

 結衣(大変だ……!)
 立ち上がろうとするが足に力が入らず、その場でぐらりとよろめく。
 結衣(わ……なにこれ!?)
 ぺたんと座る。
 結衣(こんなに疲れるんだ……。お母様大変だったろうな……)
 なんとか立ち上がり、ふらふらとした足取りで部屋を出る。

 ●別邸・キッチン
 キッチンの前に立ち、にんじんの皮をピーラーで剥いている彩人。結衣がやってきたことに気配で気付く。
 彩人「飯ならもうちょいかかるぞ」(振り向かずに)
 結衣「わ、私も手伝うよ……」
 結衣、出入り口に手をつき、ゼェゼェと荒い呼吸をする。
 彩人「え? いやお前そんな満身創痍な感じで……」
 彩人、振り向き若干引き気味な表情で言う。

 結衣「大丈夫だよぉ! 全然元気だから!」(必死な表情)
 彩人「だいいち料理なんてしたことないだろ」
 結衣「あるよ! 学校で鮭のムニエル作ったことあるもん!」
 結衣(焦がしたけど……)

[回想]
 中学時代の思い出。黒焦げになったムニエルが皿に乗っている。周囲の微妙な空気。
[回想終わり]

 まな板に乗ったにんじん。
 意気込んだ表情の結衣。包丁を持っている。
 彩人、少し離れた場所で腕を組んで様子を窺っている。
 結衣「あれ? 全然切れない……」
 中々刃が入らず戸惑う。
 呆れた表情で眺める彩人。

 彩人「はぁ……。そんなんじゃ切れねえよ」
 彩人、結衣の背後に近付く。結衣の猫の手をしている左手を包み込み、右手の上から包丁を握る。
 結衣、びくっと肩を揺らす。
 彩人「硬い食材の場合は、こういうふうに押すようにして——」
 結衣、彩人との距離が近くてドキドキ。顔が赤くなる。
 結衣「ち、近い! 分かったから! 後は大丈夫だから離れてよ!」
 彩人「はいはい」
 彩人、少し揶揄うように笑い、その後離れて別の作業へ。

 ●別邸・ダイニング
 テーブルの上にカレー二皿。にんじん、じゃがいもの大きさが不揃い。
 結衣・彩人「いただきまーす」(二人とも手を合わせて)
 結衣、スプーンでカレーを掬い口に運ぶ。
 結衣「んー、美味しい!」(幸せそうな笑顔)
 結衣「見た目はちょっとアレだけど」
 ちらっと具材を見る。
 彩人「まぁ、普段料理しないにしては上出来じゃねーの」(さらっと)
 彩人、カレーを口に運ぶ
 結衣、少し顔を赤くする。
 結衣「えへへ」(照れ笑い)

 テーブルに置いてある結衣のスマホが鳴る(画面表記:お父様)
 結衣、電話に出る。
 結衣「もしもし、どうしたのお父様?」
 聡「結衣、すまないが依頼がきた」
 結衣、強張った表情。