未来視少女と守護鬼

 ■14話
 ●別邸・彩人の部屋(夜/小雨)
 雨は弱まり、窓を叩く音も静かになっている。

 薄暗い洋室。必要最低限の家具だけが置かれた、無機質な空間。
 奥の方で縄で縛られた状態で転がっている琴絵(気絶したまま)

 彩人、手前の方でスマホで聡と通話中。
 彩人「——ええ、意識はありませんが、生きています。——はい、承知しました。……はい、では失礼します」
 通話を切る。
 琴絵を一瞥した後に部屋を出て、結衣の部屋へ。

 ●別邸・結衣の部屋
 ベッドに腰を下ろしている結衣(首には絞められた際に出来た彩人の手形)
 ドアが開く音。視線を向ける。彩人が入ってくる。
 彩人「旦那様に連絡した。すぐこっちに行くそうだ」
 結衣「そっか……」
 気まずい沈黙。

 彩人、結衣の首を悲痛な表情で見つめている。
 彩人「……じゃあ、俺は廊下で待機してるから」(部屋を出ようとする)
 結衣「ま、待って——」
 結衣、ベッドから降りるも、身体に力が入らずその場にへたり込む。

 彩人、焦った様子で結衣に駆け寄る。
 彩人「おい、安静にしてろって——」
 彩人、しゃがんで結衣に触れようとするが、すんでのところで止まる。
 結衣「彩人?」(不思議そうに見上げる)
 彩人、苦しげな表情をして目を伏せる。
 彩人「……今は俺から離れた方がいい」
 結衣「なんで? 叔母様の術は解いたから、もう大丈夫だよ?」(純粋な眼差し)
 結衣、彩人の両頬に触れる。
 彩人、驚いた表情をした後に目を逸らす。

 彩人「もうだめなんだよ。今まで抑え込んできた欲望が、ここ最近になって膨れ上がってきてる。俺はこれ以上、お前を傷つけたくない」(辛そうな表情)
 結衣、安心させるように笑う。
 結衣「馬鹿だなぁ彩人は。私がちょっとやそっとで壊れるように見える?」
 彩人の瞳が揺れる。

 結衣「それにそんなに辛そうにしてる貴方を放っておくなんて出来ないよ」
 結衣、顔を近付ける。
 結衣「だから教えて? 彩人の望み。彩人が幸せになってくれないと、私も幸せになれないんだ」

 彩人、ほうけた表情の後にふっと笑う。
 彩人「怒らないか?」
 結衣「私が怒りそうなことなの?」
 彩人「ハハ、そうだな」(小さく笑う)
 彩人、結衣の片手に自身の手をそっと重ねる。
 彩人「俺の望みは——」
 重ねた手を掴み自身の首へ。
 彩人「お前を守って死ぬこと」
 結衣「なっ!? そんなの——っ」(少し怒り混じりの慌てた表情)
 彩人「落ち着け、これはあくまで建前だ」
 再び手を動かす。
 彩人「本当の望みは——」
 結衣の手を口元へ。
 彩人「俺のこと、幼馴染でも、守護者としてでもなく、一人の男として見てほしい」
 彩人、熱い眼差しを結衣に向ける。
 彩人「俺を選んでくれ、結衣」
 結衣、顔を赤くし、目に涙を溜める。彩人に抱きつく。
 結衣「私もね、きっと叶わないだろうって諦めてたけど——」
 彩人、突然抱きつかれて驚いている。
 結衣「そんな未来が、ずっと欲しかったの……!」(笑顔で涙を流す)
 彩人、結衣を抱きしめる。
 結衣「ずっと私の隣にいてね……彩人!」
 雨が上がる。


【数ヶ月後】
 ●学校・昇降口(夕方/晴れ)
 結衣、友人A・Bと喋りながら外へ向かう。
 結衣「それでねー」
 彩人(コマ外)「結衣」
 結衣、前方を見る。
 少し離れた場所に彩人の姿が。手を振っている。
 結衣「彩人!」(ぱっと顔が輝く)
 友人に別れの挨拶。
 結衣「それじゃあ、また明日ね!」(手を振る)
 A・B「またねー」(手を振る)
 結衣、彩人に駆け寄る。

 A・B、囁き合う。
 A「ねーねー、あの二人なんか雰囲気変わった?」
 B「言われてみれば……たしかにそうかも」
 楽しそうに会話をしながら駐車場へ向かう結衣・彩人の後ろ姿。

 結衣「えっ! 今度の親族の集まりのときに、私達の婚約発表するの!?」(驚きの表情)
 彩人「ああ、旦那様がそうおっしゃってた」
 結衣「え〜やだ〜。絶対なんか言われるじゃん。結婚するまで黙ってようよ〜」(げんなりした表情)
 彩人「そんな長い期間隠し通せねぇって」(笑う)
 結衣、むぅと膨れっ面。
 結衣「仕方ない、覚悟を決めるか。反対意見は強権でねじ伏せてやる」(胸を張る仕草)
 彩人「さすがご当主様。頼もしいな」(少し誇らしげに笑う)
 結衣「でしょ?」(得意げに笑う)

 ●学校・駐車場
 結衣、彩人にドアを開けてもらい車に乗る。
 彩人、運転席に座る。
 結衣、彩人がシートベルトをつけている際に、突如未来視発動(内容は特に見せないかたちで)
 結衣の口元アップ(一瞬驚くが、すくに口角を上げる)
 結衣「フフッ」
 彩人「ん? どうした?」(振り返る)
 結衣「ううん、なんでもない!」(幸せそうな笑顔)

 完