【9話最後と同時刻】
●別邸・リビング(夕方)
彩人、目を見開いたまま固まっている。
彩人「何、言って……」
結衣、俯いたまま寂しそうに笑う。
▼結衣モノローグ
『まだ少し自信はないけれど、今の私なら、きっと一人でもやっていけるはず。彩人を自由に——!』
結衣「ずっと前から思ってたんだ」
ソファに座り、俯いている結衣の正面からの絵(表情は穏やか。彩人の影が重なっている)
結衣「ほら、私、だいぶ強くなったじゃない? 能力使っても、疲れなくなったし」
(彩人の影が少し大きくなる)
結衣「だから護衛はもう必要ないかなーって」(明るい声音)
(彩人の影が更に大きくなる)
結衣「彩人もその方が嬉しいでしょ——」
結衣が笑いながら顔を上げると、いつの間にか立ち上がり、ソファの背もたれと肘掛けに手をついている彩人と目が合う。顔の距離がとても近い。
彩人、無表情(少し怖い感じで)
彩人「……嬉しい? 俺が?」(感情を押し殺したような低い声)
彩人「誰が、そんなこと言った」
結衣「あ、彩人……?」(動揺)
彩人「俺が、お前のそばを離れたがってるように見えたか?」
彩人、ソファを掴む手に力を込める。
彩人「強くなった? 一人でやっていける? だったら——試してみるか?」
結衣「え……?」
彩人「今ここで」
彩人、結衣の腕を掴む。
結衣の肩がびくりと震える。
彩人「俺を、ここからどかしてみろよ」
結衣の肩がびくりと震える。
結衣「ま、待って彩人、落ち着いて——」
彩人「出来ないなら――」
彩人、結衣の腕を掴む手に、無意識に力が入る。
結衣「——っ」(痛がっている表情)
彩人「勝手に、俺の居場所を決めるんじゃねぇ!」(怒り)
結衣、肩がびくりと跳ねる。
結衣「——言ったんじゃん」
彩人「あ?」
結衣「彩人が言ったんじゃん! 護衛の仕事は嫌だって!!」(ポロポロと涙を零す)
彩人、(幼少期、何気なく言った言葉を思い出し、それを結衣が覚えていたことに)驚き目を見開く。腕を掴んでいた手を離す。
結衣「なのに、なんで……」
結衣、リビングを去る。
彩人、結衣が去っていった方向に、反射的に手を伸ばす。
空を掴むように指先が止まり、そのままゆっくりと下ろす。
静かなリビングの中、ただ一人立ち尽くす。
[回想:彩人過去編]
【9年前】
●アパートの一室
古いアパートの一室。狭い六畳間には、ゴミ袋、食べかけの容器、空のビール缶が散乱している。
部屋の隅っこで体育座りをしている彩人(十歳)
(服装:パーカーとズボン)
パーカーのフードを目深に被っており、片方の頬は殴られて腫れている。表情は暗い。
彩人の目の前にスーツ姿の男(健人)が立っている。
(健人容姿:黒の短髪、赤目。三十六歳。くたびれた感じ)
彩人は男をじっと見つめている。
健人「お前、それ誰にやられた? 父ちゃんか?」
彩人「……俺に父さんはいないよ」
健人「じゃあ、母ちゃんか?」
彩人「……」(俯く)
彩人「おじさん泥棒? うちに金目の物はないよ」
蹴破られた玄関扉の描写。
健人「んなもん見りゃ分かるよ」(部屋を見回しながら鼻で笑う)
健人「でもそうだな。盗みにきたってのはあながち間違いじゃない」(しゃがむ)
彩人「何を——」(再び健人を見る)
健人「お前」(彩人を指差す)
彩人、少し驚いた表情の後、暗い表情に戻り俯く。
彩人「……だめだよ。母さんにここから出るなって言われてるんだ。俺は化け物だから」
健人「関係ねぇよ」
健人、鬼形態に変身。
(彩人同様、髪、肌が赤くなり、爪が伸び、角が生える。服装は軍服+軍帽)
健人「俺だって化け物だが、こうしてフラフラと外出てんだから」(手を差し伸べる)
彩人、驚いた表情。
彩人「おじさん、誰なの?」
健人、口角を上げる。
健人「鬼葉健人。お前の伯父だ」
彩人の瞳が大きく揺れる。
【回想冒頭から一日経過】
●篠ノ井家・廊下(朝/晴れ)
健人・彩人、廊下を歩いている(彩人は健人の後ろをついていく感じで)
(彩人服装:昨日とは異なる色のパーカーとズボン)
(健人服装:スーツ)
(彩人の怪我は完治している)
健人「お前の父ちゃんな、数年前に家を出て、それっきり音信不通だったんだが、まさか子供作ってたとはな。おまけに怖い人からお金借りてたらしくて、今頃海に沈められてるだろうよ」(軽い口調)
彩人、健人の話を興味なさそうに聞いている。
健人「さ、着いたぞ」
襖の前(結衣の部屋の前)に到着。
健人、襖を軽くノック。
健人「お嬢様、入ってもよろしいでしょうか?」
結衣「いいよー」
健人「失礼します」
健人、襖を開ける。
●篠ノ井家・結衣の部屋
和室。壁際には小さな箪笥と本棚。
本棚には絵本や児童書が整然と並び、その横にはぬいぐるみがいくつも座っている。
結衣(七歳)、畳の上でままごとの最中、手には人形。
周囲には人形と、小さなプラスチック製の鍋や皿、コップ、色とりどりの食べ物のおもちゃが散らばっている。
健人「おはようございます」
結衣「おはよー。あれ?」
結衣、健人の後ろにいる彩人に気付く。
結衣「その子は?」
健人、彩人の背に手を添えながら。
健人「俺の甥っ子です。仲良くしてやってください」
結衣、彩人に近付き、じっと見つめる。
彩人、居心地が悪そうに目を逸らす。
結衣、彩人の片手を握り引っ張る。
結衣「おままごとやろ!」
彩人「え……あっ!」
彩人、結衣に引っ張られていく。
ままごと道具が散らばった畳の上に座る彩人と結衣。二人の手には人形。
結衣が何か喋っているが、彩人は上の空。
するとそこへ、出入り口にいた健人のもとへ一人の女性(詩織)がやってくる。
健人・詩織、雑談。それを見つめる彩人。
結衣「どうぞ」
彩人、不意に声をかけられ、視線を結衣に戻す。
結衣の手にはおもちゃのコップ。
彩人「あ……ああ……」
彩人、コップを受け取るが、力加減を間違えて割ってしまう。
彩人、青ざめる。
フラッシュバック:割れた化粧品の容器。殴ろうとする母の描写。
結衣、驚いた表情。
彩人「ご……ごめ——」
彩人、結衣に手を掴まれる。
結衣「大丈夫? 手、怪我してない?」(心配そうな表情)
彩人、面食らった表情。
健人と詩織がやってくる。
健人「どうされました?」
健人、割れたコップを目にする。
健人「あー、壊したのか」
詩織「新聞紙はどこにあったかしら?」
健人「ああ、いいですよ。俺が取ってきます」
健人、退室。
彩人「——あの……」
彩人、おずおずと結衣を見る。
結衣、彩人に顔を向ける。
彩人「ごめん、なさい……」(申し訳なさそうな表情)
結衣「別に良いよぉ。それより、お兄ちゃんに怪我がなくて良かった!」(笑顔)
詩織、二人のやりとりを微笑ましげに見つめる。
彩人、戸惑った表情。
▼彩人モノローグ
『鬼葉家は、鬼の血を引く一族。その中でも特に血を濃く継ぐ人間は篠ノ井家当主の護衛として、その一生を捧げる——らしい』
●篠ノ井家・縁側
縁側に座る彩人と健人。
彩人「やだよ俺、護衛の仕事なんて」
彩人、俯き自身の両手を見つめる。
彩人「俺には、壊すことしか出来ないのに」
健人、彩人を見つめる。
健人「いいじゃねぇか」(にやりと笑う)
健人「壊すことしか出来ないやつが、護る側に回ったら、最強の守護者になれる」
彩人、きょとんとした表情。
健人「壊し方しか知らねぇなら——」(手を差し伸べる)
健人「俺が教えてやるよ。護る方法を」
彩人、少しの不安があるが、希望を見出したような表情。
[ダイジェスト]
・力加減をコントロールする訓練
健人の手のひらに乗せた紙風船を、割らないように受け取る訓練。
最初は触れただけで潰してしまう。
だが何度も繰り返すうちに、徐々に原型を留めたままでいられるように
・剣術(彩人と健人が木刀で打ち合っている)
[ダイジェスト終わり]
●篠ノ井家・結衣の部屋
彩人・結衣、ままごとの最中。
彩人、フードを被っていない(これ以降ずっと)
結衣「どうぞ」(コップを差し出す)
彩人、コップを受け取る。今度は壊さない。
彩人「ありがとう」(微笑む)
健人、出入り口に寄りかかり、二人の様子を見守っている。
【回想冒頭から一年経過】
●篠ノ井・縁側
池の鯉に餌をやる結衣と詩織。
それを縁側に座って見つめる彩人と健人。
健人「お前、お嬢様のこと好きだろ」
彩人「なっ……!?」(顔を赤くし、勢いよく健人の方を見る)
彩人「な、何言って——」(引き続き顔は赤い。焦っている感じで)
健人、真面目な表情。
健人「悪いことは言わねぇ、諦めな。篠ノ井に鬼の血が入ることを、周囲は許しちゃくれねぇよ」
彩人、落ち込み俯く。
彩人「それでも……想ってるだけならいいだろ。そばにいさせてくれるなら、それで……」
健人、渋い顔をしてため息をつく。
健人「……お前には、俺みたいになってほしくなかったんだがな」(寂しそうに笑う)
彩人「!」(驚きと察した表情で健人を見る)
健人、詩織の方へ視線を戻す(寂しそうな笑顔)
【数日後】
●篠ノ井家・玄関前
小学校から帰ってきた彩人・結衣が雑談しながら並んで玄関に向かう(二人ともランドセルを背負っている)
彩人の表情は以前よりも豊か。
彩人、玄関の戸を開ける。
結衣、元気よく入っていく。
結衣「ただいま〜!」
彩人、結衣の後に続いて入っていく。
彩人「ただいま戻りました」
廊下からダダダと足音。聡が血相変えてやってくる。
聡「彩人くん! 健人さんが——」
彩人、表情が凍りつく。
●公園
地面に落ちている軍帽。
血を流して倒れている健人(鬼の姿、右手の近くには刀が転がっている)
傍らで泣き崩れている詩織。
聡「健人さんが、亡くなられたって……」
●別邸・リビング(夕方)
彩人、目を見開いたまま固まっている。
彩人「何、言って……」
結衣、俯いたまま寂しそうに笑う。
▼結衣モノローグ
『まだ少し自信はないけれど、今の私なら、きっと一人でもやっていけるはず。彩人を自由に——!』
結衣「ずっと前から思ってたんだ」
ソファに座り、俯いている結衣の正面からの絵(表情は穏やか。彩人の影が重なっている)
結衣「ほら、私、だいぶ強くなったじゃない? 能力使っても、疲れなくなったし」
(彩人の影が少し大きくなる)
結衣「だから護衛はもう必要ないかなーって」(明るい声音)
(彩人の影が更に大きくなる)
結衣「彩人もその方が嬉しいでしょ——」
結衣が笑いながら顔を上げると、いつの間にか立ち上がり、ソファの背もたれと肘掛けに手をついている彩人と目が合う。顔の距離がとても近い。
彩人、無表情(少し怖い感じで)
彩人「……嬉しい? 俺が?」(感情を押し殺したような低い声)
彩人「誰が、そんなこと言った」
結衣「あ、彩人……?」(動揺)
彩人「俺が、お前のそばを離れたがってるように見えたか?」
彩人、ソファを掴む手に力を込める。
彩人「強くなった? 一人でやっていける? だったら——試してみるか?」
結衣「え……?」
彩人「今ここで」
彩人、結衣の腕を掴む。
結衣の肩がびくりと震える。
彩人「俺を、ここからどかしてみろよ」
結衣の肩がびくりと震える。
結衣「ま、待って彩人、落ち着いて——」
彩人「出来ないなら――」
彩人、結衣の腕を掴む手に、無意識に力が入る。
結衣「——っ」(痛がっている表情)
彩人「勝手に、俺の居場所を決めるんじゃねぇ!」(怒り)
結衣、肩がびくりと跳ねる。
結衣「——言ったんじゃん」
彩人「あ?」
結衣「彩人が言ったんじゃん! 護衛の仕事は嫌だって!!」(ポロポロと涙を零す)
彩人、(幼少期、何気なく言った言葉を思い出し、それを結衣が覚えていたことに)驚き目を見開く。腕を掴んでいた手を離す。
結衣「なのに、なんで……」
結衣、リビングを去る。
彩人、結衣が去っていった方向に、反射的に手を伸ばす。
空を掴むように指先が止まり、そのままゆっくりと下ろす。
静かなリビングの中、ただ一人立ち尽くす。
[回想:彩人過去編]
【9年前】
●アパートの一室
古いアパートの一室。狭い六畳間には、ゴミ袋、食べかけの容器、空のビール缶が散乱している。
部屋の隅っこで体育座りをしている彩人(十歳)
(服装:パーカーとズボン)
パーカーのフードを目深に被っており、片方の頬は殴られて腫れている。表情は暗い。
彩人の目の前にスーツ姿の男(健人)が立っている。
(健人容姿:黒の短髪、赤目。三十六歳。くたびれた感じ)
彩人は男をじっと見つめている。
健人「お前、それ誰にやられた? 父ちゃんか?」
彩人「……俺に父さんはいないよ」
健人「じゃあ、母ちゃんか?」
彩人「……」(俯く)
彩人「おじさん泥棒? うちに金目の物はないよ」
蹴破られた玄関扉の描写。
健人「んなもん見りゃ分かるよ」(部屋を見回しながら鼻で笑う)
健人「でもそうだな。盗みにきたってのはあながち間違いじゃない」(しゃがむ)
彩人「何を——」(再び健人を見る)
健人「お前」(彩人を指差す)
彩人、少し驚いた表情の後、暗い表情に戻り俯く。
彩人「……だめだよ。母さんにここから出るなって言われてるんだ。俺は化け物だから」
健人「関係ねぇよ」
健人、鬼形態に変身。
(彩人同様、髪、肌が赤くなり、爪が伸び、角が生える。服装は軍服+軍帽)
健人「俺だって化け物だが、こうしてフラフラと外出てんだから」(手を差し伸べる)
彩人、驚いた表情。
彩人「おじさん、誰なの?」
健人、口角を上げる。
健人「鬼葉健人。お前の伯父だ」
彩人の瞳が大きく揺れる。
【回想冒頭から一日経過】
●篠ノ井家・廊下(朝/晴れ)
健人・彩人、廊下を歩いている(彩人は健人の後ろをついていく感じで)
(彩人服装:昨日とは異なる色のパーカーとズボン)
(健人服装:スーツ)
(彩人の怪我は完治している)
健人「お前の父ちゃんな、数年前に家を出て、それっきり音信不通だったんだが、まさか子供作ってたとはな。おまけに怖い人からお金借りてたらしくて、今頃海に沈められてるだろうよ」(軽い口調)
彩人、健人の話を興味なさそうに聞いている。
健人「さ、着いたぞ」
襖の前(結衣の部屋の前)に到着。
健人、襖を軽くノック。
健人「お嬢様、入ってもよろしいでしょうか?」
結衣「いいよー」
健人「失礼します」
健人、襖を開ける。
●篠ノ井家・結衣の部屋
和室。壁際には小さな箪笥と本棚。
本棚には絵本や児童書が整然と並び、その横にはぬいぐるみがいくつも座っている。
結衣(七歳)、畳の上でままごとの最中、手には人形。
周囲には人形と、小さなプラスチック製の鍋や皿、コップ、色とりどりの食べ物のおもちゃが散らばっている。
健人「おはようございます」
結衣「おはよー。あれ?」
結衣、健人の後ろにいる彩人に気付く。
結衣「その子は?」
健人、彩人の背に手を添えながら。
健人「俺の甥っ子です。仲良くしてやってください」
結衣、彩人に近付き、じっと見つめる。
彩人、居心地が悪そうに目を逸らす。
結衣、彩人の片手を握り引っ張る。
結衣「おままごとやろ!」
彩人「え……あっ!」
彩人、結衣に引っ張られていく。
ままごと道具が散らばった畳の上に座る彩人と結衣。二人の手には人形。
結衣が何か喋っているが、彩人は上の空。
するとそこへ、出入り口にいた健人のもとへ一人の女性(詩織)がやってくる。
健人・詩織、雑談。それを見つめる彩人。
結衣「どうぞ」
彩人、不意に声をかけられ、視線を結衣に戻す。
結衣の手にはおもちゃのコップ。
彩人「あ……ああ……」
彩人、コップを受け取るが、力加減を間違えて割ってしまう。
彩人、青ざめる。
フラッシュバック:割れた化粧品の容器。殴ろうとする母の描写。
結衣、驚いた表情。
彩人「ご……ごめ——」
彩人、結衣に手を掴まれる。
結衣「大丈夫? 手、怪我してない?」(心配そうな表情)
彩人、面食らった表情。
健人と詩織がやってくる。
健人「どうされました?」
健人、割れたコップを目にする。
健人「あー、壊したのか」
詩織「新聞紙はどこにあったかしら?」
健人「ああ、いいですよ。俺が取ってきます」
健人、退室。
彩人「——あの……」
彩人、おずおずと結衣を見る。
結衣、彩人に顔を向ける。
彩人「ごめん、なさい……」(申し訳なさそうな表情)
結衣「別に良いよぉ。それより、お兄ちゃんに怪我がなくて良かった!」(笑顔)
詩織、二人のやりとりを微笑ましげに見つめる。
彩人、戸惑った表情。
▼彩人モノローグ
『鬼葉家は、鬼の血を引く一族。その中でも特に血を濃く継ぐ人間は篠ノ井家当主の護衛として、その一生を捧げる——らしい』
●篠ノ井家・縁側
縁側に座る彩人と健人。
彩人「やだよ俺、護衛の仕事なんて」
彩人、俯き自身の両手を見つめる。
彩人「俺には、壊すことしか出来ないのに」
健人、彩人を見つめる。
健人「いいじゃねぇか」(にやりと笑う)
健人「壊すことしか出来ないやつが、護る側に回ったら、最強の守護者になれる」
彩人、きょとんとした表情。
健人「壊し方しか知らねぇなら——」(手を差し伸べる)
健人「俺が教えてやるよ。護る方法を」
彩人、少しの不安があるが、希望を見出したような表情。
[ダイジェスト]
・力加減をコントロールする訓練
健人の手のひらに乗せた紙風船を、割らないように受け取る訓練。
最初は触れただけで潰してしまう。
だが何度も繰り返すうちに、徐々に原型を留めたままでいられるように
・剣術(彩人と健人が木刀で打ち合っている)
[ダイジェスト終わり]
●篠ノ井家・結衣の部屋
彩人・結衣、ままごとの最中。
彩人、フードを被っていない(これ以降ずっと)
結衣「どうぞ」(コップを差し出す)
彩人、コップを受け取る。今度は壊さない。
彩人「ありがとう」(微笑む)
健人、出入り口に寄りかかり、二人の様子を見守っている。
【回想冒頭から一年経過】
●篠ノ井・縁側
池の鯉に餌をやる結衣と詩織。
それを縁側に座って見つめる彩人と健人。
健人「お前、お嬢様のこと好きだろ」
彩人「なっ……!?」(顔を赤くし、勢いよく健人の方を見る)
彩人「な、何言って——」(引き続き顔は赤い。焦っている感じで)
健人、真面目な表情。
健人「悪いことは言わねぇ、諦めな。篠ノ井に鬼の血が入ることを、周囲は許しちゃくれねぇよ」
彩人、落ち込み俯く。
彩人「それでも……想ってるだけならいいだろ。そばにいさせてくれるなら、それで……」
健人、渋い顔をしてため息をつく。
健人「……お前には、俺みたいになってほしくなかったんだがな」(寂しそうに笑う)
彩人「!」(驚きと察した表情で健人を見る)
健人、詩織の方へ視線を戻す(寂しそうな笑顔)
【数日後】
●篠ノ井家・玄関前
小学校から帰ってきた彩人・結衣が雑談しながら並んで玄関に向かう(二人ともランドセルを背負っている)
彩人の表情は以前よりも豊か。
彩人、玄関の戸を開ける。
結衣、元気よく入っていく。
結衣「ただいま〜!」
彩人、結衣の後に続いて入っていく。
彩人「ただいま戻りました」
廊下からダダダと足音。聡が血相変えてやってくる。
聡「彩人くん! 健人さんが——」
彩人、表情が凍りつく。
●公園
地面に落ちている軍帽。
血を流して倒れている健人(鬼の姿、右手の近くには刀が転がっている)
傍らで泣き崩れている詩織。
聡「健人さんが、亡くなられたって……」



