ぴんく・いんぱるす

 午前七時から午後三時くらいまでは穏やかだけど、午後四時くらいから気が狂い始めるような、朗らかでどんよりしてる、量産型で味のない日曜日のことでした。りょう君と遊園地でチュロスを食べていたら、カラフルな飛行機雲をおしりから吐き出しながらアクロバティックに飛ぶ、小さい飛行機のショーが遠いところで始まりました。
 ちょっと眺めてみたけれど、わたしにはその良さがいまいちわからなかったし、絶対あんなにぐるぐる動く飛行機なんて乗りたくないなーと思っただけだったのですが、りょう君は右手でひさしを作りながら、「ぼくも自衛官とか目指してるときあったなあ」ってじじいみたいな顔をしていました。わたしはそうなんだあとゆって、チュロスをがじがじしました。チュロスは表面がざらざらしていて、中にはいちご味のクリームが入ってました。 
 あとからりょう君にきいたのですが、さっきの飛行機は、ブルーインパルスとゆう名前らしいです。航空自衛隊? の人がなんか運営してるそうです。それから、りょう君は名前の意味も教えてくれました。ブルーとゆうのは単に「青色」とゆうわけではなく青空を意味していて、インパルスとゆうのは「衝動」とか「衝撃」とゆう意味のことばらしいです。その話をきいたわたしは、ブルーとゆうのはいまいちかわいくないなと思って、ピンクインパルスがあったらいいのにねとゆってしまいました。するとりょう君は「りかちゃん、それだったら空の色がピンクってことになっちゃうよ? 異常気象すぎない?」って苦笑いしました。わたしは首をひねりました。別にいいんじゃないかなあと思います。青色より、ピンクのほうが断然かわいいので。
 ブルーインパルスのショーが終わりました。りょう君は周りの人と一緒に拍手をして、たまに指笛を鳴らしました。わたしも、ワンテンポ遅れて拍手をしました。
 りょう君は「やっぱりすごいねー」とゆうと、わたしと手を繋ぎました。指と指を絡める恋人繋ぎです。この繋ぎ方をすると、指の間にりょう君の汗が染み込んでくるので、わたしはけっこういやなのでした。それもそのはず、りょう君はいわゆる手掌多汗症とゆうやつらしくて、よく手汗をかくのです。でも、りょう君だっけ好きで手掌多汗症になっているわけではないし、それをいちいち指摘するのはかわいそうなので、わたしは我慢して手を繋ぐのです。
「りかちゃんチュロスちょーだい」
 りょう君が、わたしが手にしていたチュロスをせがんできます。仕方ないので、口元に持っていってあげると、りょう君は嬉しそうにチュロスをかじりました。中に入っているいちごクリームがどろっと溢れます。
 チュロスを食べ終わってから、りょう君とわたしは一緒にメリーゴーランドのところにいきました。とはゆっても、乗るのはわたしだけで、りょう君は木馬にまたがるわたしの撮影係です。和やかなヨーロッパ風の音楽が流れ、木馬が上下しながらぐるぐる円を描く中、わたしはずーっと、白馬の王子様ください白馬の王子様ください白馬の王子様ください白馬の王子様ください白馬の王子様くださいと祈っていました。わたしより精神的に年上で、変態じゃなくて、カルト映画を好んで観るタイプじゃなくって、インテリだけど鼻につかなくて、スポーツマンで、性格がよくて紳士で、何よりイケメンかつ高身長で、歯並びがよくて歯が真っ白い人と巡り合いたいです。ですが、白馬(とゆうか、真っ白く塗装された木馬)に乗ってるのわたしじゃないの、とゆうことに気づいてしまいました。もしかしたら、白馬の王子様はわたしのもとに現れてくれないかもしれません。現にわたしのもとにいるのはりょう君なのですから。
 何回かぐるぐる回ってから木馬を降りると、りょう君が撮れた写真とか動画を見せてくれました。写真の中のわたしは、ちょっと顎がぷにっとしていて、自分でメイクするときに見る顔とは若干違います。もしかしたらりょう君にはこんなふうに見えているのかもしれない、て思うと、まだ午後四時じゃないのに病みそうでした。
 その次に、お化け屋敷いこう、ってりょう君がゆってきました。わたしは、りょう君がこの遊園地にわたしを誘ったのは、そのお化け屋敷にいくためだったとゆうことを薄々知っていましたので、うーんわかったけどぶっちゃけいきたくないかもー、とやんわり断りました。そろそろりょう君から離れていかないといけないなと思います。〈続くかも〉