神のいない世界に,祝あれ

あの日を境に俺の静かな入院生活は終わりを迎えた。しかし終わりを迎えたということは新しい何かが始まるということはごくごく自然なことであり例に漏れず僕の静かな入院生活とは180度違う生活が始まる合図でもあった。俺にとってこの変化が良いことであるのか悪いことであるのかはきっとそのうちわかるだろう。今はただただ今までとは違うということしかわからない。勿論俺の入院生活もとい余生を変えたのはこの人しかいないけど。
「なー君。アイス食べたい!買ってきてよ!」
「明日香さんまた食べるの?毎日アイスかスイーツ食べてるじゃんそんなに毎日食べてたら健康に良くないよ。」
「うっるさいなー。別にいいのー。ただでさえ病院なんてつまらないのに自分の好きなものも満足に食べれなかったら最悪じゃん。それに病院食すんげー健康に気を遣われてるんだから多少は全然問題ないのー。」
「とは言ってもだよ。いくら病院の人たちが気を遣ってくれててもこっちが好き勝手やってたら意味がないじゃん。多少は自分達も生活に気を遣っていかないと。」
まぁとは言っても病院で出てくるご飯は味が薄いしあまり好んで食べたくなるようなものではない。だからぶっちゃけ俺の好みのものが病院にあるコンビニにないから食べてないだけできっといつでも好きなように俺の好きなもが買える状況にあったら健康とか全く気にせず食べていると思うけど。
「ほんとに君は真面目君だなー。一回考えて見てよ!病院の下にコンビニがあるんだよ!こんなの病院側がこのコンビニでお好きに買い物してくださいーって言ってるようなものじゃん。それに対して何も買わないってのは逆に失礼だと思わないのかい。これで私たちがコンビニでお金を使うことで病院も儲かるし買ってる人も嬉しいしで一石二鳥じゃん!こんなWin-Winなことなかなかないよ。」
「いやそうかもしれないけどさ。流石に毎日行くのはやばいと思うよ。それに明日香さん毎日俺にいかせて自分では全然行かないじゃん。たまには一人で行って来なよ。」
「はー君はほんと勿体無いなー。」
「勿体無いってなにがだよ。別に俺はなんも変なこと言ってないし惜しいこともしてないよ。」
「いいんだなー。後悔してもしらないよー。ほんと勿体無いなー君はー。」
「だから何がどう勿体無いんだよ。言ってくれないとわかんないじゃん。」
「えーだってさー。どーせ君はこんな風に女の子になんか頼まれたりされたことなんてほとんどないでしょう。それなのにこーやって君を信頼して頼んでくれる人がいるなんてめちゃくちゃレアなんだからね!むしろラッキーくらいに思ったほうがいいよ!」
さっきからなんでこの人はこんなにも痛いところをついてくるんだろうか。けど悔しいことに言ってることに間違いは一つもない。これが女の勘ってやつか。おそろしいほどにあたってるな。確かに俺に女子の友達や仲良い人なんてほとんどいないからそりゃ当然女子から何かを頼まれるわけなんてないんだけど。なんかここまでバレてるとこーやって考えてることも全て見透かされてそうだ。けど何故だろう。俺はこんな風に女子からパシられたことなんて全くないはずなのに何故かこれに慣れている気がする。きっと遺伝子的にパシられ慣れてる体質なのだろうか。
「いやーいくらそう言われてもこんだけ毎回行かされるのはやだよ。こっちは車椅子なんだから結構行くまで大変なんだよ。」
「えーじゃあわかったよ。仕方ない、一緒に行こう。これならいいでしょ!」
それなら一人で行けばいいのに思ったが俺は知ってる。ここでもしそんなことを言ってしまったら絶対に生きて帰れない。こうゆう時はリアクション大きくありがとうとか、やったーとか言うのが鉄則なんだ。じゃないと何されるかわかんないし何より嫌われてします。こんな周りに人がいない状況で唯一いる人と仲悪くなるのは一番避けないといけない。
「えーやったー。今まで一人で寂しかったからまじ嬉しい。」
我ながら完璧。これでこの人の機嫌もとれるだろう。とりあえず怒られなくてよかったよかった。
「ダウト。それ思ってないでしょ。」
……。俺の聞き間違いだろうか。いや確かにダウトって言われてた気がするんだけど。いやけどそこそこ感情込めて言ったつもりなのになんでバレてるんだろ。
「い、いや。そんなことないよ。俺はまじで嬉しいって思ってるしほんとに一人なら寂しかったから。」
「ふーん。そーなんだー。まぁいいや!じゃあ早く行こ!私の体がアイスを欲してるからさ!」
た、耐えたのか?多分信じてくれたはずだ。いやそうであってほしい。しかしなんでバレてるんだろ。本当に女子の勘ってのは恐ろしい。まじ女子にだけ特殊能力としてついてるとしか思えない。男子にこんなやつ一人もいなかったぞ。まぁけどこれで今回はほんとなんだって信じてくれれば次以降はそんなに疑われないで済むだろう。ただ話すだけでもこんなに気を遣っていたら俺のメンタルなんて持つわけがない。
「わかったわかった。じゃあちょっと待って。財布とかベットのとこに置いて来ちゃったからさ。明日香さん準備してていいよ。」
「はーい。って言っても対して準備することなんてないんだけどねー。どーせ私のこと知ってる人なんて誰もいないからメイクもする必要なんてないし。服装も病院のやつだからわざわざ着替えなくていいし。ほんとに楽でいいやー。」
そっか。この人メイクしてないんだ。にしてはすんごい綺麗だな。肌も白いし。ぶっちゃけメイクしてないって言われてもほんとかどうか疑ってしまうほどに綺麗だ。
「そっか明日香さんメイクしてないのか。それにしてはめちゃくちゃ綺麗だね。」
「なに笑?見惚れちゃった?いやー私ってほんと罪な女
だなー。」
なんでせっかく褒めたのにこの人は褒めたことを取り消したくなるような反応をするのだろうか。そりゃもちろん綺麗っていうのは本心で言ったし嘘なんてついてないけどこんな風になると言わなきゃよかったと後悔するのはきっと俺だけじゃない気がする。女子慣れしてる人ならこうゆうのは上手く返せるのだろうけど俺には無理だ。返し方なんて全くわからないしどうゆう顔をしたらいいかもわからない。けど流石に否定しちゃいけないのはわかる。不本意ではあるけどここはなんとなく認めるみたいな返しが一番いいだろう。てかそれ以外の返し方が全く想像つかない。
「そうかもねー。見惚れちゃったかもしんない。」
あ、やっべ。どう考えても良くない感じになってしまった。隠そうと思ってたけどついつい本心というかめんどくさくなってしまった。これはどう考えても見逃してくれそうにない。普通の人でも気づくレベルなのにこの人すんごい勘がいいから絶対に見逃してくれるはずがないんだ。
「えーやっぱりー笑。私ってほんとだめだなー。」
え?これは気づかないのか?自分でもわかるくらい適当に返した感じがしたしそれにさっきのはバレたのに今回のはなんでバレてないんだろう。ほんとによくわからない。まぁいいや。助かったことに変わりはないし。きっと自分に気持ちよくなってほとんど話を聞いてなかったのだろう。とにかくラッキーラッキー。
「明日香さん。早く行くよ。アイス食べたいんでしょ。」
「わかってるよ!もう食べたくてしかたないんだよ。
今日は何にしようかなー。」
なんかほんとにこの人を見てるとこっちまで楽しくなってくる。表情豊かだし何より今を思う存分楽しんでるように見える。よくこんなつまらない病院という場所でこんなに楽しそうに過ごせるな。この前は入院とか全然楽しくないとか言ってけどほんとに嘘にしか聞こえないな。
「あ、君そういえば車椅子なのか。じゃあ仕方ない!早く行きたいから私が押してあげるよ。そんなに運転は荒くないはずだから安心して!まぁ初めてだからどうなるかわかんないけどね。」
「んーそう言われるとちょっと怖いけどここはお言葉に甘えてお願いしようかな。一人だと結構動くの大変なんだよね。腕がすんごい疲れるから。」
「じゃあそうゆうことで出発ー。あ、押してあげてるからさ、私の分のアイス買ってー。お願いお願いお願い。」
「えーそれはちょっと話が変わってくるよ。んー気分次第かなー。」
「ふーん。いいんだ。さっき適当な反応した時に私がなんも言わなかったかは私は気づいてないとか思ってるかもしんないけど全部優しさだからね。まぁそれについてどう思うかは君次第だけどー。」
「わかったよー。買ってあげるからー。ほんとにさっきのはわざとじゃなかったのー。」
「おっけー!じゃあいいよー全然怒ってないからさー!」

やっぱりこの人めんどくさい。