revival june

 一晩明けて朝8時に目を覚ました涼はやっと食事をとることができ、たくさん刺さっていた針も左腕の点滴以外全部抜かれ、体の自由がだいぶ利くようになった。
 その後簡単な検査を受けたあと、看護婦さんと入れ違いの形でスーツを着た男の人が4人入ってきた。
「意識が戻ったばかりなのにごめんね。神奈川県警捜査一課、松下です」
「同じく神奈川県警捜査一課、雪澤です」
 と警察手帳を見せられた。松下という人は近所の食堂の大将みたいなおっちゃんって印象を受け、雪澤という人はなんか交番にいそうな感じがして違和感があった。
「あ、はい。松月涼です」
 涼は自分が目を覚ましたから話を聞きに来たのかと納得した。だけど男の人はもう2人いたことに疑問を持ったが、すぐに答えは返ってきた。
「俺たちは東京の警視庁の宇野気だ」
「同じく警視庁の金丸です」
 同じように警察手帳を見せられた。金丸という人は真面目という印象を受け、宇野気という人はダンディーが売りの男性アイドルみたいだけど口調はヤクザみたいで涼は苦手なタイプだった。
「あれ、東京ですか?」
「君たちの現住所が東京都っていうのと、君を刺した犯人は事件の前に町田でも暴れてたんだ。だから東京と神奈川の合同で当たってるんだ」
 その説明に涼は納得したけど町田で取り逃したことに憤りを覚える。でなければ睦美が危険な目に遭わず、涼も刺されることはなかった。と心の中で毒づいた。
「というわけで、まだつらいかもしれないけどお話を聞かせてくれるかな?彼女さんも君の看病で話を聞ける状態じゃなかったからね。一緒にお願いします」
 話さない理由はないし、早く裁いてほしいのもあった涼は睦美と一緒に事情聴取に応じた。
 といっても話すことは車の音がしたところから涼は刺されて意識を失うまでの覚えていることだった。だがその後のことは初めて知ったが、血の気が引いた。
 涼が意識を失ってから間もなく、うずくまっていた通り魔が起き上がった。そして自分を殴った涼に逆上して滅多刺しにしようと恨み言を吐きながら襲いかかった。それを見た睦美が通り魔に座った状態から強烈なパンチをお腹に一発入れ、さらに倒れたところを馬乗になってタコ殴りにして取り押さえたらしい。
 本人は頭に血が昇って覚えていないらしいが、
 そんな涼の不安を感じ取ったのか松下さんが優しく答えた。
「大丈夫ですよ。確かに過剰防衛を問う声はありますよ。何しろ犯人の怪我の容態は最低でも全治一年。全身の骨が全部、背骨と首を除いて折れていたらしいです。おまけに広川さんは中学の三年間ジークンドーを習っていたらしいじゃないですか。それを加味しても女子高校生がタコ殴りにしたにしてはとんでもない重傷ですからね」
 涼と睦美を安心させようと笑顔で言ってはいるけど、二人からすれば罪の宣告にしか思えず呼吸がしづらく感じ、隣からは荒い息遣いが聞こえた。
「ですが、広川さんの状況や恋人が刺されたという立場を考えれば、不起訴は間違いないでしょう。世間も広川さんの味方ですから」
 それを聞いて涼は安心した。睦美もホッとしたように胸をなで下ろす。
「それに、君たちにはあそこまで必死になる“理由”もあるみたいですし」
 意味を含む言い方に涼も睦美も息を呑む。
「できたら話して頂けませんか?その内容によってはより過剰防衛を回避できる可能性が上がります」
 雪澤さんも追及する。
「話してもいい?」
「……私はいいけど、涼は大丈夫?」
「うん。それで睦美が理不尽な罪に問われないなら」
「わかった。話そう」
 覚悟を決めて、2人は三年前の事件を話すことにした。
「話します」