revival june

 睦美と付き合って一ヶ月。ゴールデンウィークに一日監督の都合で男女ともに野球部は休みになったため涼は睦美と横浜へ遊びに来ていた。せっかくの二人揃った休日に寮で過ごすのは嫌だと意見が一致し、どこかへ行こうとなったが、場所については急すぎてなにも思い浮かばなかったけど、睦美の希望が横浜に決めた。
 昨日の夜に妹の菊に根掘り葉掘り聞かれながらコーディネートしてもらった甲斐あって恥ずかしくない服装にはなったと思う。
「ごめんね。支度に手間取って」
「大丈……ぶ」
 睦美の格好は小学校時代でも見ることのないタイプの私服だった。黒い生地にカラフルな丸い絵が泡のようなデザインのTシャツと灰色のジーンズ、そしてキャップを合わせて女性のロックミュージシャンを思わせるスタイルだ。
「すごく……似合ってる」
「えへへ、ありがとう。よかった持ってきて。涼も似合ってるよ。」
「ありがとう」
 横浜ではまずマリーナに向かった。睦美のおじいさんは漁協組合長で小さい頃から漁船に乗ったりして船と海には縁があり、涼も何回かお邪魔させてもらったことがある。涼はマリーナは初めてでいろんな細かいけど用途によって違う船がたくさんあった。二人は免許はないし年齢的に取ることはできないから遊ぶことはできないけど、見ているだけでも楽しかった。
 それからランドマークタワーや赤レンガ倉庫、山下公園と有名なところはだいたいコンプリートできた。とはいえ一つ一つの滞在時間が短くてきちんと堪能できたかというと微妙だけど、それでも楽しかった。
 13時近くになり中華街でお昼を食べるために移動した。今いるのはみなとみらい駅近くだから歩いてすぐのところにある。スマホの地図アプリで確認しながらゆっくり進んでいたけど、急に車のブレーキ音が聞こえ騒がしくなった。
「何かな?」
「わからない。気をつけよう」
 嫌な予感がして離れようとしたとき、猛スピードで車が突っ込んでくるのが見えた。そしてその車は涼たちのいる方向へと進んでくる
「危ない!!」
 睦美の腕を引っ張り車道から離れる。車は涼たちのところを通り過ぎ30メートル進んだところの電柱にぶつかり大破して止まった。
「おい、ぶつかったぞ」
「救急車呼べ」
 あたりは騒然となった。涼も睦美も呆然として車の方を見つめる。
 誰もが固唾を呑んで救急車と警察の到着を待っていたが、自体はとんでもなく悪い方向へ向いてしまった。
「;p.;@。@p;、p@!!」
 なんと運転席から刃渡り10センチはありそうな大きなサバイバルナイフを持った男が出てきた。目の焦点は合ってなくこの世の意味不明な言葉を叫びながら人だかりに突進し始めた。
『キャー!!』
「逃げろー!」
 それを見て一斉に蜘蛛の子を散らすように逃げ始めた。
「睦美!」
「うん!……キャッ!」
「睦美!」
 睦美は後ろから来た人に倒されてしまい、その間に涼も人の波で睦美から離されてしまった。人の波が切れ、睦美のいる方を見るとまだ倒れて足を押さえている。そしてその様子を通り魔がロックオンするように捉えてナイフを前に掲げていてその様子に睦美は気づいていなかった。
 そして無常にも通り魔は睦美に向けて突進し始めた。睦美は立ち上がろうとしたけど足を押さえて苦痛の表情を浮かべている。
「睦美!!!」
 このままだと睦美が殺されてしまう。また自分が弱いせいで大切な人が犠牲になるのはもう嫌だ!
 そう思う前に涼の体は既に駆け出した。
 間に合ってくれ。
 ギリギリ睦美と通り魔の間に入ることができたが、同時にお腹に激痛が走った。
「涼!!!」
「この野郎!!」
 男の顔面に向けて一発パンチをお見舞いすることができ、通り魔はその場に顔を押さえてうずくまった。けどどういうわけかナイフだけは手放さずに抜かれてしまい血が吹き出してしまった。
「涼!!涼!!!」
 睦美が涼を抱きとめるがバランスを崩して倒れる。だんだんと涼も眠気が出始めた。
「……よかった。今度は……守れた」
「涼!涼!!涼!!!」
 睦美が叫ぶ声がこだまするなかで、涼は意識を失った。