revival june

 山形駅には涼が先についた。睦美からメッセージで、仙山線が少し遅れているそうだ。その間に近くのエキナカで花を二つ買って睦美の到着を待った。
 睦美から聞いてたよりも早く電車はついて、合流した。
「お待たせ!」
「大丈夫。それに花」
「ありがとう。いくらだった?」
「いいよ、これくらい」
「ダメ。ほかのことならありがたく乗るけど、これだけはダメ」
「わ、わかった。千円だった」
「了解」
 睦美から千円を受け取ると、二人は駅を出てタクシーを拾った。
 そのタクシーに揺られること15分。少し山に入ったところに目的のところがあった。
「久しぶり、姉ちゃん」
「陽向姉ぇ。久しぶり」
 『黒崎家之墓』と彫られたまだ新しく感じる墓石を前で、二人は返ってこない挨拶をする。
「姉ちゃん。遅くなってごめん」
「ごめんね」
 二人は陽向が亡くなってから一度も墓参りに来ていなかった。まだ中学生で睦美に至っては住んでいるところが遠いというのもあったけど、どうしても行くと思い出してしまうから、行くことができなかった。
 涼が右側、睦美が左側に生えていた草をむしり始める。お盆からそんなに経ってないのもあって、本格的な道具は持ってこれなかった二人でも掃除することができた。
「姉ちゃん、俺たち付き合い始めたんだ」
「やっと恋人になれたよ」
 掃除を始めてほどなく、涼から陽向へ報告する。少ししかできていないけど、こんな恋人らしいことをしたと楽しく報告した。
「だけどね。私たち、今野球やってないんだ」
「……姉ちゃんとの約束、果たせなくてごめん」
 そして、言い出しづらかったことをついに陽向へと話す。
「今、俺たちは危ない道に行こうとしているかもしれない」
「でも私たちはあんな思い、もうしたくなかった」
 ”二人が野球で活躍するところが見たいな”
 死ぬ前に救急車の中で言った言葉だった。その約束は異形化のせいで果たせなくなってしまった。
 涼は睦美を守るためにこの道を選び、睦美も涼を守るためにこの道を選んだ。けど、陽向との約束を違えたことは心残りだった。
「本当にごめんね。でも、これだけは変えられない」
「だから、許してもらえるなら見守ってて。陽向姉ぇ」
 祈るように線香を備えた。
「「!!」」
 さっきまで話したことの答えが当然ないけれど、まったく風がなかったはずなのに線香の煙が左右に一瞬揺れたような気がした。それと同時にふわっと空気が柔らかくなった気もした。
「……また来るね。姉ちゃん」
「バイバイ。陽向姉ぇ」
 最後に手を合わせて、二人は墓地を後にした。