都内の一等地にある高層ビル。社員のほとんどは帰宅してオフィスには空調の音と警備員の足音だけが鳴り響く。その中にある一室では、まだ社長が残って書類に目を通している。
最後の一枚に目を通し、サインをすると別の足音が聞こえた。軽いヒールの音から社長は誰なのかがわかった。
「社長、失礼します。横浜大里病院から、例の高校生の血液検査の結果が届きました」
一糸乱れぬ動作でお辞儀をして入ってきた秘書が、一枚の封筒を手渡す
「貰おう」
終わった書類を部屋にある鍵付きロッカーに入れた後、早速封筒を開ける。
「……ところで、彼らはまだかね」
社長は声が低くなって捲し立て気味に秘書に確認する。
「はい。しかし、珍しいですね。あの2人が何の連絡もなしに遅れるなんて」
「だからなんだと言うのだ。遅れていることは事実。私の時間を無駄に消費するなど、あってはならん」
「……はい」
噂をすればなんとやら。秘書が返答に困っているところにドタドタと誰かが駆け込んでくる音が近づいてきた。
そして乱暴に扉が開けられ、中に大学生くらいの男女が入ってくる。
「遅くなり、申し訳ありません」
男女共に頭を下げる。
「何をしていたんですか?私は遅刻が嫌いなのですよ」
社長は怒りを隠さずに理由を聞く。さらにいるはずの“同伴者”がいないことにボルテージが上がる
「それに、手ぶらとはどういうことですか?」
頭を下げる男を睨みつける。
「申し訳ございません。指示のあった通り松月涼、広川睦美の2人を確保しに向かいましたが邪魔が入り、取り逃しました」
女が頭を下げたまま答えた。
「取り逃した?」
「はい、後少しのところで邪魔が入りました」
「邪魔ですか?」
「はい。私たちは全くあの女の接近に気づけず、タカは一撃を喰らって動けなくなりました」
「……」
「そして、恐らくあれは私と同じ“特殊個体”かと」
「なんですって?」
説明を聞いていた社長の目が変わった。
「君、絵はうまかったね。彼女から特徴を聞いて似顔絵を描いてくれるか」
「わかりました」
女は秘書と共に部屋を出る。残された男は社長と2人になってしまい、顔をしかめて部屋の中の装飾品に目を移した。
そんなことは全く気にせず社長は秘書から受け取った書類に目を向けている。
「………フフフ」
社長は急に笑い出した。男がそれを見て不気味な顔をする。
「神という存在を私は今まで懐疑的でしたが、どうやら本当にいるようですね」
「は?」
「タカノリ君、今日の失敗は不問としましょう。私は今最高に気分がいい。それに、よく考えたら君は今まで失敗はほとんどなく、私への貢献はかなりのものだ。それを考えれば、今回は水に流すべきですね」
男が社長を気持ち悪い目で見てきた。普段なら怒り出すだろうが、社長は男に向かって一言。
「ですが、次からはこうはいきません。気をつけてください」
「……はい」
「では、今日は帰っていいですよ。次の指令は追って話します」
「……了解しました」
男は社長室を後にした。
その後、出来上がった似顔絵と病院の書類を見て社長は珍しく満足気な顔で呟いた。
「まさかこんなところで出会えるとはね……“はるか”」
髪型や顔の形は違うけど、目の鋭さは社長の忌々しい記憶を呼び覚ますのには十分だった。
「そして、君は私の希望です。必ず迎えにいきますね」
最後の一枚に目を通し、サインをすると別の足音が聞こえた。軽いヒールの音から社長は誰なのかがわかった。
「社長、失礼します。横浜大里病院から、例の高校生の血液検査の結果が届きました」
一糸乱れぬ動作でお辞儀をして入ってきた秘書が、一枚の封筒を手渡す
「貰おう」
終わった書類を部屋にある鍵付きロッカーに入れた後、早速封筒を開ける。
「……ところで、彼らはまだかね」
社長は声が低くなって捲し立て気味に秘書に確認する。
「はい。しかし、珍しいですね。あの2人が何の連絡もなしに遅れるなんて」
「だからなんだと言うのだ。遅れていることは事実。私の時間を無駄に消費するなど、あってはならん」
「……はい」
噂をすればなんとやら。秘書が返答に困っているところにドタドタと誰かが駆け込んでくる音が近づいてきた。
そして乱暴に扉が開けられ、中に大学生くらいの男女が入ってくる。
「遅くなり、申し訳ありません」
男女共に頭を下げる。
「何をしていたんですか?私は遅刻が嫌いなのですよ」
社長は怒りを隠さずに理由を聞く。さらにいるはずの“同伴者”がいないことにボルテージが上がる
「それに、手ぶらとはどういうことですか?」
頭を下げる男を睨みつける。
「申し訳ございません。指示のあった通り松月涼、広川睦美の2人を確保しに向かいましたが邪魔が入り、取り逃しました」
女が頭を下げたまま答えた。
「取り逃した?」
「はい、後少しのところで邪魔が入りました」
「邪魔ですか?」
「はい。私たちは全くあの女の接近に気づけず、タカは一撃を喰らって動けなくなりました」
「……」
「そして、恐らくあれは私と同じ“特殊個体”かと」
「なんですって?」
説明を聞いていた社長の目が変わった。
「君、絵はうまかったね。彼女から特徴を聞いて似顔絵を描いてくれるか」
「わかりました」
女は秘書と共に部屋を出る。残された男は社長と2人になってしまい、顔をしかめて部屋の中の装飾品に目を移した。
そんなことは全く気にせず社長は秘書から受け取った書類に目を向けている。
「………フフフ」
社長は急に笑い出した。男がそれを見て不気味な顔をする。
「神という存在を私は今まで懐疑的でしたが、どうやら本当にいるようですね」
「は?」
「タカノリ君、今日の失敗は不問としましょう。私は今最高に気分がいい。それに、よく考えたら君は今まで失敗はほとんどなく、私への貢献はかなりのものだ。それを考えれば、今回は水に流すべきですね」
男が社長を気持ち悪い目で見てきた。普段なら怒り出すだろうが、社長は男に向かって一言。
「ですが、次からはこうはいきません。気をつけてください」
「……はい」
「では、今日は帰っていいですよ。次の指令は追って話します」
「……了解しました」
男は社長室を後にした。
その後、出来上がった似顔絵と病院の書類を見て社長は珍しく満足気な顔で呟いた。
「まさかこんなところで出会えるとはね……“はるか”」
髪型や顔の形は違うけど、目の鋭さは社長の忌々しい記憶を呼び覚ますのには十分だった。
「そして、君は私の希望です。必ず迎えにいきますね」

