revival june

「それって私たちを狙ったあの人たちのことですか?」
「ああ。正確にはそいつらもあくまで実行部隊で本命はかなりの大物と睨んでいる。もっとも、ちゃんと確認できたのは今日が初めてだがな」
「今までわからなかったんですか?」
「これも一から説明させてくれ」
 そもそも異形をサポートする活動を始めたのはさっき戦争の話が出た霧島さんのおじいさんで、戦闘を生き延びたおじいさんと親友さんは森の中へと逃げ込んだが、親友さんはたくさんの弾丸を浴びすぎていて流石に倒れたそうだ。そしておじいさんは親友さんとんでもない話を聞いた。
 親友さんの先祖にはかなり上位の個体の異形がいて、異形の研究をしていたそうだ。まだ若かった親友さんは何の目的でそんなことをしていたのかは知らされてなかったが、異形の力を恐れていて、この力は絶対に外に出してはダメだと思っていた。だが、自分は異形となってしまった。また、こっそり盗み見た資料ではこれからも自分みたいなケースが出てくるかもしれないと危惧していたそうだ。だから、もしそういう人が出たら人として過ごせるよう助けてくれ。絶対に公にしないでほしいと残して亡くなったそうだ。戦後、その親友さんの家は空襲で焼けてしまったが、異形の資料は特別な倉庫にあり、その鍵を親友さんが合鍵をひっそり作っておじいさんに渡していた。そのおかげでおじいさんは異形を知ることができ、そして親友さんの願いのためにサポートできる体制を作ったそうだ。
「で、会社を作り、子供の施設を作った。資料を読んで調べて詳しくなった。万全な体制ができた1970年代から爺さんの友人の言う通り、異形化する人が出てきた」
 最初はそれらしき事例を聞くと全国を駆け巡り異形を保護した。だが、80年代から妙なことが起き始めた。
「異形化したと思われる事例を聞いて行ったが、既に姿を消した後だった」
 それだけ聞けばガセネタだったで済むが、ビルや車が破壊されたり、時にはあわや殺人事件という大きな事例もあったそうだ。
「だけど、該当する人物を探したけど、その痕跡が全く見つからない。それまでは普通に人間として過ごしていれば何かしらの痕跡が残る。だけど全く見当たらないし、聞き込みをしても口封じされてる感じがあって。だから俺たち以外の何者かが同じように異形化した人を集めていると疑った。たが証拠はないし、目的もわからない。だから俺たちと同じ異形の保護するための可能性も捨てきれなかったわけだ。結局都市伝説みたいな感じで今まで来たが」
「今日、僕たちが襲われていたから」
「その何者かがいることもわかったわけですね」
「その通りだ。陽菜な報告を聞いた感じ、異形の保護を目的としてる感じじゃない。何か良からぬことを企んでる可能性が高い」
 さっき襲ってきた人たちのことを思い出したら、霧島さんの言っていることには説得力がある。今落ち着いて考えると、あの人たちは涼と睦美に人権がないような言い方をしていた。そんな奴らの手に落ちたらと思うと怖い。良くないイメージが意図せず溢れて来てしまう。
「そういう連中から守るためにも、ここに身を置いた方がいいと思う」
 霧島さんが涼と睦美に改めて提案した。
 涼はふと、陽向の顔が頭に浮かんだ。
 陽向が殺された時、自分は弱かった。睦美と通り魔に遭遇したときは、睦美を守ることはできたけど自分を犠牲にしてしまった。そして今度はもっと強大で邪悪な何かが涼と睦美を狙っている。今の自分では到底敵わないようなモノが。
 そうなればまた大切な人を失うかもしれない。そう考えたら、すっと心が軽くなり、覚悟が決まった。
 涼は睦美と顔を合わせる。睦美も覚悟を決めたみたいで、決め球を投げる前の緊張した顔をしていた。
「睦美、僕は霧島さんの提案を受けるべきだと思う」
 涼も意を決して自分の意見を言った。
「私も同じよ。陽向姉ぇもわかってくれると思う」
「うん。……その提案、受けさせていただきます」
 涼と睦美は2人同時に頭を下げた。
「ありがとう」
 霧島さんは静かにお礼を言った。
「だけど、もう遅い時間だから今日は泊まって行きなさい。客人用の部屋を用意するね」
 時計を見ると夜10時になろうとしていた。確かにこの時間から帰るのは危ない。
「「ありがとうございます」」
 涼と睦美はその提案を受けた。
「陽菜さん。案内お願いしていい」
「わかりました」
「あ、その前に親御さんに電話したほうがいいな。心配してるだろうから」
 霧島さんに言われて家族のことをすっかり忘れていたことに気づいた。恐らく学校から電話が入っているから心配しているのは誰でも予想できる。
 涼と睦美はそれぞれ電話して無事だということを伝えた。また心配されて強く言われてしまったけど、ちゃんと助けてもらったことを伝えて安心させることができた。それから霧島さんに変わり、2人の保護と今日は施設に泊まること、そして次の日事情を説明するということで話がまとまった。
 陽菜さんに連れられて、さらに奥へ通路を進む。そこで青島学園の寮と変わらない大きさの部屋が二部屋隣同士で用意してもらえた。
 一旦睦美が涼の部屋に来て、涼の左肩に頭を乗せた。
「大変なことになったね」
「うん。これからどうなるんだろうね」
「でも、涼と一緒なら大丈夫だから」
「うん。僕も」
 あり得ないと言われていたこと、信じられないことが現実に起きて、そのせいで誰かに狙われる。怖くて不安しかない中、睦美がいてくれたことは本当によかった。そして守っていくためにも、霧島さんや陽菜さんを頼ってみようと思った。