新天地の東京は想像以上にのどかなところだった。
これから三年間通う私立青島高校とその学生寮のある五日市駅を降りて目に入ってきた光景は住宅街と町を囲うように聳える山という、地元によく見た光景だった。松月涼には東京という場所はすべて首が痛くなるくらい見上げる高い建物がまるで巨大な森のように建っていて、すれ違う時も注意しないとぶつかるくらい人が溢れているというイメージがあった。実際新幹線を降りた時はそのイメージ通りの光景が広がり少し感動もした。けど乗り換えて進んでいくうちにそのイメージは覆され、高い建物はだんだん見えなくなり、終点のこの駅につく頃には自然が豊かになっていた。でも涼にとって都会か田舎かはあまり気にはならなかった。確かに都会には憧れはあったけど、好きな野球ができるのであればどこでもよかった。
学生寮のある場所を再確認するため、涼はスマホと地図アプリと観光案内用の地図を照らし合わせる。ロータリーの前の道を右に曲がってすぐの十字路を今度は左に曲がる。その後は山へ向かって大きな道路をまっすぐ歩けば着くらしい。
電車の中にいた時も思ったけど、本当に東京なのかとまだ疑っていた。実は隣の山梨県に入っていて、非公式で東京を名乗ってるんじゃないかと思ったが、道路標識の下に東京都の文字を見てここも東京なんだとちゃんと認識した。
歩き始めて15分で目的の建物が見えてきた。民家が多い中にドーム球場のような外観の大きな建物は周囲からかなり目立っていたので、見間違えるはずがなかった。2年前にリフォームしてきれいになったとは聞いていたけど、ここまで気合の入ったものだとは思っていなかった。
正面玄関を通るとここはマンションのロビーのようなところだった。事務室がすぐ横にあり、呼び鈴を押した。
「はーい」
窓から見えない奥の方から女性の声が聞こえた。少し低いけど、柔らかく包みこまれそうな声だった。
「おまたせしました。新入生ですね、お名前をいただいてもいいですか?」
出てきたのは営業スマイルが可愛い感じの40代くらいの女性だった。だけど身長が涼と同じか少し上くらいある。涼は同じ年代の男子高校生としては背が低い方で157センチしかない。女性としては普通なんだろうけど、なんか少し悔しかった。
「ま、松月涼です」
「松月涼さん。えっと、松月……松月……。あ、はい。ようこそ青島高校学生寮『あきがわ』へ。私はここの寮長、藤野巴里です。何か困ったことがあったら遠慮なく言ってくださいね」
「あ、はい」
優しそうな寮長さんで涼の緊張が少し解けた。
「じゃあ部屋にご案内しますね」
リフォームされただけあって寮は大きくてきれいだった。まず共有スペースは市民体育館みたいな施設にあるテニスコート2面分くらいあり、8人が一緒に使えるテーブルが20個から30個並べられていて、大きなテレビやソファーも備えられていた。外の景色も加わってホテルのロビーにいるような感じがした。どういうわけか今は誰もいなかったけど、なんとなく人がいる時の様子が想像できて楽しみになってきた。
「松月さんの部屋はここです」
部屋は階段上がってすぐの203号室。8畳くらいの広さで、クローゼットとベッド、涼も実家で使っていたタイプの勉強机が備えられている。男子高校生の一人暮らしならこれでも十分だと涼は思った。
「では生活していくうえでのルールを説明しますね」
基本的には集団生活していく上で、今までやってきたことを説明された。けど、ここでの独自のルールとして、門限は22時になっているけれど、ここ最近は部活に力を入れている関係で24時までに入れば問題無いという。それはそれでザルじゃないかなとは思ったものの、確かに高校の部活は夜遅くまでやっているイメージで、大会が近づけば特にそうだろうなと思った。また夕食は基本19時からで遅くまで部活がある場合はずれて取ることができる。またそういった場合はあらかじめ顧問や監督から連絡が行くようになっているから申請する必要はないそうだ。また、部屋にはお風呂と洗濯機がなく共同のものを使用するらしいが、時間や数が限られているとのことなので注意しないととも思った。
「では改めてこれからよろしくお願いします」
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
挨拶も終わったことで、あらかじめ送っておいた荷物の片付けを始めることにした。
これから三年間通う私立青島高校とその学生寮のある五日市駅を降りて目に入ってきた光景は住宅街と町を囲うように聳える山という、地元によく見た光景だった。松月涼には東京という場所はすべて首が痛くなるくらい見上げる高い建物がまるで巨大な森のように建っていて、すれ違う時も注意しないとぶつかるくらい人が溢れているというイメージがあった。実際新幹線を降りた時はそのイメージ通りの光景が広がり少し感動もした。けど乗り換えて進んでいくうちにそのイメージは覆され、高い建物はだんだん見えなくなり、終点のこの駅につく頃には自然が豊かになっていた。でも涼にとって都会か田舎かはあまり気にはならなかった。確かに都会には憧れはあったけど、好きな野球ができるのであればどこでもよかった。
学生寮のある場所を再確認するため、涼はスマホと地図アプリと観光案内用の地図を照らし合わせる。ロータリーの前の道を右に曲がってすぐの十字路を今度は左に曲がる。その後は山へ向かって大きな道路をまっすぐ歩けば着くらしい。
電車の中にいた時も思ったけど、本当に東京なのかとまだ疑っていた。実は隣の山梨県に入っていて、非公式で東京を名乗ってるんじゃないかと思ったが、道路標識の下に東京都の文字を見てここも東京なんだとちゃんと認識した。
歩き始めて15分で目的の建物が見えてきた。民家が多い中にドーム球場のような外観の大きな建物は周囲からかなり目立っていたので、見間違えるはずがなかった。2年前にリフォームしてきれいになったとは聞いていたけど、ここまで気合の入ったものだとは思っていなかった。
正面玄関を通るとここはマンションのロビーのようなところだった。事務室がすぐ横にあり、呼び鈴を押した。
「はーい」
窓から見えない奥の方から女性の声が聞こえた。少し低いけど、柔らかく包みこまれそうな声だった。
「おまたせしました。新入生ですね、お名前をいただいてもいいですか?」
出てきたのは営業スマイルが可愛い感じの40代くらいの女性だった。だけど身長が涼と同じか少し上くらいある。涼は同じ年代の男子高校生としては背が低い方で157センチしかない。女性としては普通なんだろうけど、なんか少し悔しかった。
「ま、松月涼です」
「松月涼さん。えっと、松月……松月……。あ、はい。ようこそ青島高校学生寮『あきがわ』へ。私はここの寮長、藤野巴里です。何か困ったことがあったら遠慮なく言ってくださいね」
「あ、はい」
優しそうな寮長さんで涼の緊張が少し解けた。
「じゃあ部屋にご案内しますね」
リフォームされただけあって寮は大きくてきれいだった。まず共有スペースは市民体育館みたいな施設にあるテニスコート2面分くらいあり、8人が一緒に使えるテーブルが20個から30個並べられていて、大きなテレビやソファーも備えられていた。外の景色も加わってホテルのロビーにいるような感じがした。どういうわけか今は誰もいなかったけど、なんとなく人がいる時の様子が想像できて楽しみになってきた。
「松月さんの部屋はここです」
部屋は階段上がってすぐの203号室。8畳くらいの広さで、クローゼットとベッド、涼も実家で使っていたタイプの勉強机が備えられている。男子高校生の一人暮らしならこれでも十分だと涼は思った。
「では生活していくうえでのルールを説明しますね」
基本的には集団生活していく上で、今までやってきたことを説明された。けど、ここでの独自のルールとして、門限は22時になっているけれど、ここ最近は部活に力を入れている関係で24時までに入れば問題無いという。それはそれでザルじゃないかなとは思ったものの、確かに高校の部活は夜遅くまでやっているイメージで、大会が近づけば特にそうだろうなと思った。また夕食は基本19時からで遅くまで部活がある場合はずれて取ることができる。またそういった場合はあらかじめ顧問や監督から連絡が行くようになっているから申請する必要はないそうだ。また、部屋にはお風呂と洗濯機がなく共同のものを使用するらしいが、時間や数が限られているとのことなので注意しないととも思った。
「では改めてこれからよろしくお願いします」
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
挨拶も終わったことで、あらかじめ送っておいた荷物の片付けを始めることにした。

