探偵事務所に着いた。
旭さんと佑斗が例のビデオカメラを見せてくる。
「これ、高橋が撮影で使うビデオカメラやねん」
「じゃあ、高橋くんが送ってきたってことですか」
「まずは、映二郎にも動画を見てほしいんだよね」
二人は既に動画を見たようだ。
「いくよ」
佑斗がUSBでカメラと接続したPCで、動画ファイルの再生ボタンを押した。
パッと、画面いっぱいに高橋くんの顔がアップで映し出される。
カメラとの距離を調整してちょうどいいところで、高橋くんが咳払いをした。
見慣れたリュックを背負って、服装はパーカーにジーンズとカジュアルなスタイルだ。
手持ちカメラとライトで両手がふさがっている。
時刻は夜のようで、ライトの光で高橋くんの顔が白く照らされていた。
「はい、初めましての方は初めまして!
お久しぶりの方はお久しぶりです。
オカルトチャンネルのT君こと、高橋と申します。
この度、個人チャンネルを開設させていただきます。
勇気を出して、顔出しで頑張っていきます〜。
今から、その記念すべき第一回目の動画をお届けします。
題して『神隠しの起きる山。リアル行方不明者が頻発する山に潜入!!』です!
今回臨むのが、K県××市の⚫︎⚫︎山です。
本当は生配信したかったけど、場所によっては電波が入らないところもあるみたいなんで〜。
動画で見やすく編集してお届けしたいと思います。
皆さん神隠しって信じますか。
今回、訪れるこの山なんですが、
実は、現在進行形で行方不明者が発生しているヤバ〜イ場所なんですね。
行方不明になってから日数も経っていて、捜索が打ち切りになってしまったので、仮に遭難だとしてもちょっと生存は厳しそうな状況なんですよね。
結構、登山道が整備されている山なので、普通に不慮の事故とか、
もしくは〈そういった目的〉がないと、遭難とか考えづらいんですよね。
元々は心霊スポットではないんです。
今回とある理由があって、もしかして全国屈指の心霊スポットなのではないかと思ってます。
それを証明する為にも、この高橋がですね!
調査をしていこうと思います。
はい。前置きも程々にして、
早速、行ってきま〜す」
画面が切り替わる。
カメラは足元を映し、そこから180度回転して高橋くんの顔が映る。
「……一時間くらい歩いたかな?
はあ、疲れた。はあ。
え〜、一年前なんですけど、市内の小学校に通うAちゃんが行方不明となりました。
実はそのAちゃんがオカルトチャンネルのリスナーだったみたいです。
AちゃんからのDMには『山の中で女の幽霊に襲われる夢を見た』と書いてあったんです。
これね、失踪前に届いたDMなんですが、本当に偶然です。
でね、Aちゃんの失踪事件の捜査では、最後の目撃情報が自宅の近辺であった以降はめぼしい情報がなくて、結局捜査は打ち切りになってしまったそうなんです。
僕は、Aちゃんは一人でこの山に登って、そこで行方知れずになったんじゃないかなと読んでます。
何故かというと、現在進行形で行方不明になっている、Bさんがいるんですけど、同じ市内に住む男性です。
この方は山の麓に車を乗り捨てて、そのまま失踪したので、この山に入って行ったのは、ほぼ確定なんですね。
その男性が、Aちゃんと全く同じ夢を見ていたんです。
僕の情報筋によるんですけど、親戚の方に聞いた極秘情報です。
皆さん、これねマジの話なんですよ。
信じられないでしょう?
この山には同じ夢を見た人を誘い込む何かがいると思いませんか」
再度、画面が切り替わる。
ライトで道を照らしつつ、歩きながらカメラを構えているようだ。
先程までの整備された道ではなく、明らかに木が生い茂った場所で獣道を辿って歩いている。
「さっき、山小屋の管理人さん?に声掛けられました!
外真っ暗だからめっちゃビビりました〜。
道教えてもらって、逆に助かったけど。
山道から外れた場所に石祠があるらしいです。
向かっているのはそこです」
ほとんど同じ画角だが、草木の少ないスペースに出たようだ。
高橋くんが録画を再開したことがわかった。
「はあ、はあ……。
ずっと歩いてるせいか、疲れたな。
もう夜だから寒いし、あ、ちょっと場所が開けてるから、ここら辺。
……あった!皆さん、ありましたよ!
例の石祠です!」
ライトで照らした先には、小さな石祠があった。
苔の生した古めかしい見た目から、定期的な手入れはされていないようだ。
お供物もなく、完全に自然の一部と化している。
高橋くんは周辺一帯をライトで照らしながら、画角に収めた。
山中の為、周りは草木で覆われている。
しかし石祠の周り数メートルに関しては、不自然に何もないスペースがあった。
黒い土泥が広がっており、そこだけ草も花も咲いていない。
「こんな場所で〜す。
この石祠、なんだろう?
どうしよう、一応拝んでおくか。
あ、両手塞がってるから無理か。
う〜ん、コメントないとイマイチ何していいかわかんなくなるな。
ここで配信開始してみるか?
ちょっと待って……あ、ここ電波ないのか。
うわ〜もったいね!この不気味な感じ配信できたらなあ。
っていうか、何でここだけ土がドロドロなんだよ」
後半は独り言のようだった。
手持ち無沙汰になった高橋くんは石祠に近づき、間近の距離で石祠を映し始めた。
「はい、ということでね。
皆さんいかがでしたか?
K県××市の新たな心霊スポットでした。
AちゃんとBさんは一体、どこに消えてしまったんですかね。
変な声や映り込みはありましたか?
もし、そういったものがあればコメント欄にて教えてください。
チャンネル登録もよろしくお願いします!
でわまたね〜」
締めのコメントで動画は終わったように思えたが、すぐに画面が切り替わる。
よほど焦っているようで、画面が左右に揺れた。
一瞬、白いナニから映った気がするがカメラを構える手元が落ち着かず、よくわからない。
「早く早く!おい、やばいやばいやばい
はあ、は、はあ、はあ
ちょっと……え?
うああ ヒイいい ヒイいいい!
ひ、人!?なんだあれ なんだあれ
なんでこんなとこに うああ、やばい」
ざっざっざっ 土を踏む音
ライトに照らされたわずかな先しか見えない。
画面が激しく揺れて、まともに映像が映っていない。
「はあ、はあ、はあっ
あれ、あれ、え?え?え?え?
うわああっ、あああああ! あ」
〈暗転〉
ドシャッ
何かが崩れる音と共に画面が暗闇で大きくブレる。
カメラが地面に落ちたのだとわかった。
薄暗闇の中、画角の隅に石祠が静かに佇んでいる。
カメラのわずかな電子音以外には何の音もしない異様な静寂。
ざく、ざく、と人が歩いてくる音がした。
ぬちゃ
粘ついた水音と共にカメラが拾い上げられる。
━━ ブツッ
カメラが切られる音がして、
映像はそこで終わった。
旭さんと佑斗が例のビデオカメラを見せてくる。
「これ、高橋が撮影で使うビデオカメラやねん」
「じゃあ、高橋くんが送ってきたってことですか」
「まずは、映二郎にも動画を見てほしいんだよね」
二人は既に動画を見たようだ。
「いくよ」
佑斗がUSBでカメラと接続したPCで、動画ファイルの再生ボタンを押した。
パッと、画面いっぱいに高橋くんの顔がアップで映し出される。
カメラとの距離を調整してちょうどいいところで、高橋くんが咳払いをした。
見慣れたリュックを背負って、服装はパーカーにジーンズとカジュアルなスタイルだ。
手持ちカメラとライトで両手がふさがっている。
時刻は夜のようで、ライトの光で高橋くんの顔が白く照らされていた。
「はい、初めましての方は初めまして!
お久しぶりの方はお久しぶりです。
オカルトチャンネルのT君こと、高橋と申します。
この度、個人チャンネルを開設させていただきます。
勇気を出して、顔出しで頑張っていきます〜。
今から、その記念すべき第一回目の動画をお届けします。
題して『神隠しの起きる山。リアル行方不明者が頻発する山に潜入!!』です!
今回臨むのが、K県××市の⚫︎⚫︎山です。
本当は生配信したかったけど、場所によっては電波が入らないところもあるみたいなんで〜。
動画で見やすく編集してお届けしたいと思います。
皆さん神隠しって信じますか。
今回、訪れるこの山なんですが、
実は、現在進行形で行方不明者が発生しているヤバ〜イ場所なんですね。
行方不明になってから日数も経っていて、捜索が打ち切りになってしまったので、仮に遭難だとしてもちょっと生存は厳しそうな状況なんですよね。
結構、登山道が整備されている山なので、普通に不慮の事故とか、
もしくは〈そういった目的〉がないと、遭難とか考えづらいんですよね。
元々は心霊スポットではないんです。
今回とある理由があって、もしかして全国屈指の心霊スポットなのではないかと思ってます。
それを証明する為にも、この高橋がですね!
調査をしていこうと思います。
はい。前置きも程々にして、
早速、行ってきま〜す」
画面が切り替わる。
カメラは足元を映し、そこから180度回転して高橋くんの顔が映る。
「……一時間くらい歩いたかな?
はあ、疲れた。はあ。
え〜、一年前なんですけど、市内の小学校に通うAちゃんが行方不明となりました。
実はそのAちゃんがオカルトチャンネルのリスナーだったみたいです。
AちゃんからのDMには『山の中で女の幽霊に襲われる夢を見た』と書いてあったんです。
これね、失踪前に届いたDMなんですが、本当に偶然です。
でね、Aちゃんの失踪事件の捜査では、最後の目撃情報が自宅の近辺であった以降はめぼしい情報がなくて、結局捜査は打ち切りになってしまったそうなんです。
僕は、Aちゃんは一人でこの山に登って、そこで行方知れずになったんじゃないかなと読んでます。
何故かというと、現在進行形で行方不明になっている、Bさんがいるんですけど、同じ市内に住む男性です。
この方は山の麓に車を乗り捨てて、そのまま失踪したので、この山に入って行ったのは、ほぼ確定なんですね。
その男性が、Aちゃんと全く同じ夢を見ていたんです。
僕の情報筋によるんですけど、親戚の方に聞いた極秘情報です。
皆さん、これねマジの話なんですよ。
信じられないでしょう?
この山には同じ夢を見た人を誘い込む何かがいると思いませんか」
再度、画面が切り替わる。
ライトで道を照らしつつ、歩きながらカメラを構えているようだ。
先程までの整備された道ではなく、明らかに木が生い茂った場所で獣道を辿って歩いている。
「さっき、山小屋の管理人さん?に声掛けられました!
外真っ暗だからめっちゃビビりました〜。
道教えてもらって、逆に助かったけど。
山道から外れた場所に石祠があるらしいです。
向かっているのはそこです」
ほとんど同じ画角だが、草木の少ないスペースに出たようだ。
高橋くんが録画を再開したことがわかった。
「はあ、はあ……。
ずっと歩いてるせいか、疲れたな。
もう夜だから寒いし、あ、ちょっと場所が開けてるから、ここら辺。
……あった!皆さん、ありましたよ!
例の石祠です!」
ライトで照らした先には、小さな石祠があった。
苔の生した古めかしい見た目から、定期的な手入れはされていないようだ。
お供物もなく、完全に自然の一部と化している。
高橋くんは周辺一帯をライトで照らしながら、画角に収めた。
山中の為、周りは草木で覆われている。
しかし石祠の周り数メートルに関しては、不自然に何もないスペースがあった。
黒い土泥が広がっており、そこだけ草も花も咲いていない。
「こんな場所で〜す。
この石祠、なんだろう?
どうしよう、一応拝んでおくか。
あ、両手塞がってるから無理か。
う〜ん、コメントないとイマイチ何していいかわかんなくなるな。
ここで配信開始してみるか?
ちょっと待って……あ、ここ電波ないのか。
うわ〜もったいね!この不気味な感じ配信できたらなあ。
っていうか、何でここだけ土がドロドロなんだよ」
後半は独り言のようだった。
手持ち無沙汰になった高橋くんは石祠に近づき、間近の距離で石祠を映し始めた。
「はい、ということでね。
皆さんいかがでしたか?
K県××市の新たな心霊スポットでした。
AちゃんとBさんは一体、どこに消えてしまったんですかね。
変な声や映り込みはありましたか?
もし、そういったものがあればコメント欄にて教えてください。
チャンネル登録もよろしくお願いします!
でわまたね〜」
締めのコメントで動画は終わったように思えたが、すぐに画面が切り替わる。
よほど焦っているようで、画面が左右に揺れた。
一瞬、白いナニから映った気がするがカメラを構える手元が落ち着かず、よくわからない。
「早く早く!おい、やばいやばいやばい
はあ、は、はあ、はあ
ちょっと……え?
うああ ヒイいい ヒイいいい!
ひ、人!?なんだあれ なんだあれ
なんでこんなとこに うああ、やばい」
ざっざっざっ 土を踏む音
ライトに照らされたわずかな先しか見えない。
画面が激しく揺れて、まともに映像が映っていない。
「はあ、はあ、はあっ
あれ、あれ、え?え?え?え?
うわああっ、あああああ! あ」
〈暗転〉
ドシャッ
何かが崩れる音と共に画面が暗闇で大きくブレる。
カメラが地面に落ちたのだとわかった。
薄暗闇の中、画角の隅に石祠が静かに佇んでいる。
カメラのわずかな電子音以外には何の音もしない異様な静寂。
ざく、ざく、と人が歩いてくる音がした。
ぬちゃ
粘ついた水音と共にカメラが拾い上げられる。
━━ ブツッ
カメラが切られる音がして、
映像はそこで終わった。
