君が見た夢の正体について教えよう



◇◇◇

俺は隆之さんの日記をこっそり持ち出した。
奈津美には遺書はなかったと伝えておいた。
あれは遺書ではない、家族に向けた言葉でもない。
家族に話す前に謎を解かないと、説明ができない。
そう自分に言い聞かせて、俺は旭さんに連絡をした。

隆之さんの失踪から数日後、
俺たち四人は探偵事務所に集まっていた。

日記の最後の一週間部分を皆で確認する。
同じ夢、真っ暗な山の中、白い花、白い女が見ている。
例の共有夢と出てくる単語が同じだ。
隆之さんは遠藤努、椎名心音たちと同じ夢を見ていた。

「これは偶然でしょうか」
高橋くんが興奮を隠しきれない様子で言う。
「小学生の間でだけ見る夢かと思ってた」と佑斗は言った。

同じ小学校に通う子供たちのDMが、全ての始まりだった。
確かに、その小学校に原因があると考えるのは通常の発想だ。

「失踪する直前に見てたってのが気になるな」
旭さんが日記を手に取り、過去の分も遡って読んでいる。

そういえば、三人目のDM依頼主については何も情報がない。
「DM依頼主の斎藤希美とは連絡が取れないままなんですか。
住所までDMに書いてきたのに……3年生でしたっけ?」

「あのDMは去年送られたものだから、今は4年生のはずだよ」
佑斗が再度DMの内容を確認してくれた。
遠藤努と椎名心音と斎藤希美は同級生だったのか。

「遠藤努と椎名心音に斎藤希美を知っているか確認したら、二人とも知らないって言ってたんや。せやから詳しく調べたんやけど」
旭さんが日記のある部分を指さして言う。一週間前の日記だった。


『遥の同級生が行方不明になって一年。
さらに自ら命を絶つなんて、同じ子を持つ親としても心が痛い。
遥もショックを受けている様子だ。
今夜はパパとママと一緒に寝たいと言ってきた。
そんなの断るわけがない』


「この行方不明の同級生が斎藤希美や」

「同級生が行方不明なのに名前を知らないなんて」
「薄情や思うやろ?調べて分かったことやけど、斎藤希美は特別支援学級の生徒やったんやと」

同級生が行方不明になったとしても、元々面識がなく、一年も経てば記憶から薄れてしまうのは悲しい。

「この自ら命を絶つっていうのは?」
「斎藤希美の母親や。母子家庭やったらしい」

当時の新聞によると、一年前の6月16日に斎藤希美は失踪した。
失踪日は朝登校の為一人で家を出たきり行方知れずになったらしい。
周辺聴き込みをしたが、めぼしい目撃情報は得られず捜索は行き詰まってしまった。

特別支援学級という少人数制学級に在籍していたこともあり、親しい交友関係は少なく事件に巻き込まれるような背景事情は確認できなかった。

そして、半年も経たずに捜索は打ち切られた。
斎藤希美は見つからないまま、春になっても同級生のように4年生にはなれなかった。
その結果、母親は自殺した。

斎藤希美と隆之さんは同じ夢を見て行方知れずになった。
ならば、消えた場所も同じなのではないか。

「隆之さんが失踪した付近の山ってのは?」
「地元の人たちにとっては、ごく普通の山。
標高約600メートルの低山で、今くらいの時期は日帰り登山する観光客も多いらしい」

では、斎藤希美と隆之さんの共通点は何なのか。
白い女の共有夢を見ていることが最大の共通点ではある。
そもそも夢を見るトリガーは何なのだろうか。

「斎藤希美が在籍していた特別支援学級について、少し調べた。
当時のクラス担任に連絡を取ってみたんやけど、SNSはブロックされてもうた」
旭さんが申し訳なさそうに言う。

「突然、知らない人からのメッセージだもんね。当たり前だよ」と佑斗がフォローを入れた。

「しかも、元生徒の親が自殺してもうたからな。責任を感じて当然や」

「じゃあ、二人の共通点は不明ということですか」
「いや、それがな、あったんや共通点が」
「え、何だったんですか」

俺は驚きに目を見開き、答えを待つ。
まるで準備していたかのように、佑斗が女性の写真を見せてくる。
小学校のクラス写真のようだ。
中央最前列で椅子に座った女性が笑みを浮かべている。


「佐藤 由美子」


誰だっけ。
俺は疑問符を浮かべた。
だが、すぐに写真の女性に既視感を覚える。

肩につく黒髪。
痩せ型で、恐らくまだ20代の若い女教師。
そうだ、確かジャージを着て、あの写真では髪を束ねていた。
俺が見たのは運動会の写真だ。


隆之さんと不倫疑惑のあった、佐藤由美子だった。