君が見た夢の正体について教えよう

暗闇の中、私は一人だった。
土の匂い、水の匂い、そして遠くの方から青々とした植物の匂いがした。

顔を上げると暗闇の中で、一輪の花が白くぼんやりと浮かび上がる。

根を張って伸びた茎と、大きな葉に支えらながら、頼りなく頭を下げるつぼみ。
白い花弁がまるで隠すように、その花は顔を閉ざしているようだ。

湿った土の上、私は裸足で踏み締めた。
花に向かって歩いているのだろうか。
先程よりも花との距離が近いが、
自分で歩いている感覚はない。
でも確実に近づいている。
足元にも同じような、
白い花がたくさん
たくさんある。

それらは今にも咲きそうに揺れて、私の足を擽っていた。

風が私と花の間を吹き抜ける。
大きな葉と共に、つぼみがゆらゆらと揺れる。
人の躯がゆらゆらと靡いているようだ。

その躯は近づく程にだんだんと大きくなり、
気がつくと目の前には自分とそう背丈が変わらない、大きな植物が佇んでいた。

一瞬、白いつぼみが人の頭に見えた。
頭を下げて私の顔を覗き込もうとしている。
首筋を嫌な悪寒が走ると、肉厚の白い花弁が一片、私の腕に触れた。

花弁と思ったそれは女の腕だった。
つぼみが花開いた途端、深く芳醇な匂いが鼻をつく。

私は恐怖に慄き、女の腕を払いのけようとして気が付いた。
これは遠い昔に母の腕の中で嗅いだ匂いだと。
微かに残る母乳のような甘い匂いと水の匂いと、百合の花のような深い香りが、混ざり合っていた。

恐怖の感覚は一瞬にして、安堵へ溶けていく。
途方もない充足感が身体を満たしていく。



安心した私は急に泣きたくなって、
白い腕に抱かれながら声をあげた。