レベル1のわたしと解けない魔法

 そうしてわたしは、リーダーに救われ、ファースト・ファンタジー11も現実逃避というよりはリーダーに会いに行く気分でログインするようになった。
 ある日、ギルドチャットが賑わっていた。

 何の話かと思えば、愛・地球博の話だ。

 ギルメン数名が「行ってみたい」といっている。
 愛・地球博……今年の四月に長久手市で開催されることは知っていた。
 むかしはあの公園にはスケートリンクと温水プールがあり、わたしはスケート、弟はプールで遊んだものだ。
 昔を懐かしんでいると、リーダーがチャットに参加してくる。

   Pyuta:俺も行きたいんだよね。せっかくだし、オフ会みたいにする?
 
 リーダーの提案に複数のLSメンが「行くー」と乗り気だ。
 その会話を眺めつつ思う。
 わたしはリーダーと直接メールのやりとりをしている。
 それって特別なのかな?
 それとも、リーダーからすれば困っているLSメンに手を差し伸べているだけ?
 ……親切で付き合ってくれてるだけだよね。
 リーダーはそういう人だから。
 だけどなんだろう、この気持ち。
 わたしはリーダーの特別な存在になりたい。
 わたしのことを女性として気にかけてほしい。
 そう強く思った。
  
 深夜のテンションとは恐ろしいものだ。
 わたしは気づいたときには、リーダーへの告白メールを書いていた。
 好きです、付き合ってください。
 そんなふうに書いた。
 どれだけ自分が真剣にあなたを好きか、ということも書いた。
 それから、送信ボタンをクリックしようと思って手を止める。

 もしも、告白して玉砕をしてもリーダーなら、普段通り接してくれるだろう。
 なんならこの告白すらなかったことにして、何事もなかったかのようにゲームの世界で遊んでくれる。
 だけど、そんなの嫌だ。
 絶対に両想いになりたい。
 この告白メールが玉砕しても、わたしはリーダーを好きでいる。
 それだけわたしは、リーダーとメールをするたびに、恋愛感情が強くなっていたのだ。
 もはや今はこの人を逃してはいけないとさえ思う。
 もしも、告白をOKしてもらえたら、結婚することになるのかもしれない。
 わたしは、あの人魚みたいなウェディングドレスを思い浮かべる。
 その隣にはリーダー。
 一生、添い遂げる覚悟はあるの?
 あのマネキンが頭の中で聞いてくる。
 うん、あるよ。
 だって、わたしを暗くて深い海の底から助け出してくれた人。
 わたしは、人魚姫でリーダーは王子様。
 いやまて。
 そうなると二人は結ばれないか。
 まあ、なんでもいい。
 リーダーと結婚できるなら、わたしは幸せになれる。
 そう確信して、勢いよく送信ボタンを押した。

 リーダーからの返事は三日後に届いた。
 正直なところ、無視されてもおかしくはないと思っていた。
 だって突然こんな想いをぶつけられても迷惑だろうし。

 だけど、リーダーはわたしの告白メールに丁寧に返事をくれた。
 最初はその文章を読んでも、ピンとこなかった。
 だってあまりにも遠回しすぎて……これ、断られてる?
 いや、でも喜んでくれてる?
 お断りメールではないことは確かだ。 
 わたしは返事を送る。


  お友だちからお願いします。


 リーダーからすぐに返事がきた。


  え? なんで?! 急にどうしたの?
  ああ、そうか。遠回しすぎたか……。

  こんなおれでよければ、お付き合いしてください。


 そのメールの内容に、わたしは自分の目を疑った。
 ええっと、これ、夢じゃないよね?
 それに、わたしが都合よく解釈してるわけじゃないよね?
 わたしは何度も何度もメールを読み返し、それから大喜びして母に「うるさいよ!」と怒られた。
 それでも舞い上がる心は止められず、自室を鼻歌交じりに無意味に歩く。
 それからベッドにダイブ。

「えへへ。両想い……。付き合えるんだ……」

 そうつぶやいてみても、あまり実感はわかなかった。
 なんだか二次元のキャラと付き合う気分だ。