頭、真っ白になった私は伊織さんの胸を押して、心臓をバクバクさせながら言った。
「わ、私、着替えてきます……!」
上ずった震える声で言うと、すっと伊織さんが離れていく。
伊織さんの顔、まともに見られない。
私はばっと携帯を掴んで、くるっと伊織さんに背を向けて逃げるように台所を離れて廊下へと出た。
そして、バタバタと足音を立てて廊下を走り、部屋へと向かう。
障子をあけて中に入って、私は畳のうえに置かれた座椅子になだれ込むように腰掛けた。
やだ、心臓がどうにかなりそう。
どうしたらいいかわかんなくって、逃げてきたけど私……どうしよう。
携帯を隣に放り投げて、私は両手で顔を挟んだ。
私は伊織さんとのやりとりを思いだす。
『愛してる』
って、確かに言った。
「あれって、告白、だよね……?」
そう口に出したら、全身の血が沸騰してるんじゃないかってくらい、身体が熱くなってくる。
どうしよう、私、伊織さんに告白された。
理由も全部言われたけど……でも私、伊織さんを受け入れる覚悟なんてないよ。
だって、伊織さんは……
「あやかし……だよ……?」
あやかしとの恋愛って成就するの?
雪女だって、鶴の恩返しだって、ハッピーエンドじゃないじゃないの。
里見八犬伝だって可哀想なことになってたし。
私なんかが伊織さんに愛されていいの?
よくないって。
伊織さん、強いしかっこいいし、お金あるしミステリアスだし、でもだらしないし、お菓子大好きだし。
そこまで思って私は頭を抱える。
「キスまでされて……それ嫌じゃなかったしな……」
私は、自分の唇に指先でふれる。
キスが嫌じゃない時点で答え、出てるじゃないの。
でも私みたいな十八歳の子供が、千年以上も生きているあやかしに愛されてはいそうですか、なんてできないよ。
私は膝を抱えて大きく息をつく。
「私伊織さんのこと……たぶん……」
きっと好きなんだ。
そう認めたら楽になる。でもそれ以上に私は、伊織さんに愛されてるって事実が怖かった。
あー、ひとつ屋根の下に暮らしてるっていうのに、このあと私、どんな顔したらいいんだろう。
この後お茶の時間もあるし夕飯もあるのに。
それは伊織さんも一緒よね。
伊織さんは気まずくないのかな。
……ないか。だって人間じゃないし。私と感覚が違うから。
私はどうしたいんだろう。
膝を抱えて私はひとり、ため息をつく。
あぁ、そうだ。
携帯。
メールが来ていたことを思い出して、私は携帯を手に取って、メッセージを確認した。
それは奈美からのメールだった。
『やっほー、葉月! 今日、超びっくりした! あんなところで会うなんてびっくり! ほんとごめんねー。連絡取れなくなってびっくりしたよね。携帯壊れて電話帳全部吹っ飛んじゃってさー。その時にはもうこっちに住んでたからどうにもなんなくって。それでさ、葉月もこっちに住んでるってことだよね? ご飯いこうよ!』
って書いてある。
ご飯かぁ……どうしよう。
奈美、私が知っている奈美なのかな。ちょっと不安になる。
だって、高校の時から全部が変わっているんだもの。
髪色も、服装も。
会いに行って大丈夫なのかな。
どうしよう。
悩みばかりが増えていく。
携帯を見ていると、新しいメッセージを受信する。
思わずビクって震えて私は受信メールを開く。
相手はもちろん奈美だ。
『葉月ー、やっぱり怒ってる? いきなり連絡取れなくなってほんとごめんね! 無理にって言わないからさ、ご飯、おごらせて!』
と書いてある。
そこまで言うなら……一度くらい会ってもいいかな。
私はそう思って、メッセージを入力する。
『連絡取れなくなったときはびっくりしたけど、携帯壊れたんじゃ仕方ないよね。大丈夫だよ。私も今こっちに住んでるから、ご飯、いこうよ! 土日なら大丈夫だよ』
そして私は大きく息を吸ってからメールの送信ボタンを押す。
大丈夫、だよね。
そう自分に言い聞かせて私は携帯を見つめた。
すると、すぐに返信が来て私はまた、大げさに震えた。
『よかったー! じゃあさ、今週の日曜日どう? 二十五日の日曜日。夕方の、六時に――』
その後に場所の名前が続く。
どこだろう、これ。
シンジュクってひとりで行けるかな。しかも夜だと、さすがに伊織さんに言わないと駄目だよね。
言わなくちゃ、伊織さんに。
大丈夫、だよね。
そう自分に言い聞かせて私は携帯を閉じた。
「わ、私、着替えてきます……!」
上ずった震える声で言うと、すっと伊織さんが離れていく。
伊織さんの顔、まともに見られない。
私はばっと携帯を掴んで、くるっと伊織さんに背を向けて逃げるように台所を離れて廊下へと出た。
そして、バタバタと足音を立てて廊下を走り、部屋へと向かう。
障子をあけて中に入って、私は畳のうえに置かれた座椅子になだれ込むように腰掛けた。
やだ、心臓がどうにかなりそう。
どうしたらいいかわかんなくって、逃げてきたけど私……どうしよう。
携帯を隣に放り投げて、私は両手で顔を挟んだ。
私は伊織さんとのやりとりを思いだす。
『愛してる』
って、確かに言った。
「あれって、告白、だよね……?」
そう口に出したら、全身の血が沸騰してるんじゃないかってくらい、身体が熱くなってくる。
どうしよう、私、伊織さんに告白された。
理由も全部言われたけど……でも私、伊織さんを受け入れる覚悟なんてないよ。
だって、伊織さんは……
「あやかし……だよ……?」
あやかしとの恋愛って成就するの?
雪女だって、鶴の恩返しだって、ハッピーエンドじゃないじゃないの。
里見八犬伝だって可哀想なことになってたし。
私なんかが伊織さんに愛されていいの?
よくないって。
伊織さん、強いしかっこいいし、お金あるしミステリアスだし、でもだらしないし、お菓子大好きだし。
そこまで思って私は頭を抱える。
「キスまでされて……それ嫌じゃなかったしな……」
私は、自分の唇に指先でふれる。
キスが嫌じゃない時点で答え、出てるじゃないの。
でも私みたいな十八歳の子供が、千年以上も生きているあやかしに愛されてはいそうですか、なんてできないよ。
私は膝を抱えて大きく息をつく。
「私伊織さんのこと……たぶん……」
きっと好きなんだ。
そう認めたら楽になる。でもそれ以上に私は、伊織さんに愛されてるって事実が怖かった。
あー、ひとつ屋根の下に暮らしてるっていうのに、このあと私、どんな顔したらいいんだろう。
この後お茶の時間もあるし夕飯もあるのに。
それは伊織さんも一緒よね。
伊織さんは気まずくないのかな。
……ないか。だって人間じゃないし。私と感覚が違うから。
私はどうしたいんだろう。
膝を抱えて私はひとり、ため息をつく。
あぁ、そうだ。
携帯。
メールが来ていたことを思い出して、私は携帯を手に取って、メッセージを確認した。
それは奈美からのメールだった。
『やっほー、葉月! 今日、超びっくりした! あんなところで会うなんてびっくり! ほんとごめんねー。連絡取れなくなってびっくりしたよね。携帯壊れて電話帳全部吹っ飛んじゃってさー。その時にはもうこっちに住んでたからどうにもなんなくって。それでさ、葉月もこっちに住んでるってことだよね? ご飯いこうよ!』
って書いてある。
ご飯かぁ……どうしよう。
奈美、私が知っている奈美なのかな。ちょっと不安になる。
だって、高校の時から全部が変わっているんだもの。
髪色も、服装も。
会いに行って大丈夫なのかな。
どうしよう。
悩みばかりが増えていく。
携帯を見ていると、新しいメッセージを受信する。
思わずビクって震えて私は受信メールを開く。
相手はもちろん奈美だ。
『葉月ー、やっぱり怒ってる? いきなり連絡取れなくなってほんとごめんね! 無理にって言わないからさ、ご飯、おごらせて!』
と書いてある。
そこまで言うなら……一度くらい会ってもいいかな。
私はそう思って、メッセージを入力する。
『連絡取れなくなったときはびっくりしたけど、携帯壊れたんじゃ仕方ないよね。大丈夫だよ。私も今こっちに住んでるから、ご飯、いこうよ! 土日なら大丈夫だよ』
そして私は大きく息を吸ってからメールの送信ボタンを押す。
大丈夫、だよね。
そう自分に言い聞かせて私は携帯を見つめた。
すると、すぐに返信が来て私はまた、大げさに震えた。
『よかったー! じゃあさ、今週の日曜日どう? 二十五日の日曜日。夕方の、六時に――』
その後に場所の名前が続く。
どこだろう、これ。
シンジュクってひとりで行けるかな。しかも夜だと、さすがに伊織さんに言わないと駄目だよね。
言わなくちゃ、伊織さんに。
大丈夫、だよね。
そう自分に言い聞かせて私は携帯を閉じた。
