触れた唇が熱い。
すぐにそれは離れていったけど、伊織さんの顔はまだ目の前にある。
吐息が絡まるくらいすぐ近くに。
私、どんな顔してるんだろう。
何言えばいいのかわかんなくって声も出ない。
キス、された。
その前に、愛してる、って言われた。
私の脳じゃ処理、追いつかないよ。
私は人間で、伊織さんはあやかしなのに。
私の唇、震えている。
伊織さんは愛おしそうに目を細めて私を見つめて、吐息交じりに言った。
「葉月」
と。
さっきまで葉月さん、だったのに。
甘く、低く私の脳を壊すかのように響いたその声に、私は口を開いて呆然とするしかできなかった。
何言えばいいのこれ。
私はただの人間なのに。
伊織さんみたいなあやかしに愛されるなんてありえないでしょ?
しかもその理由が、私の意味のない、伊織さんを銃から守ろうとした行動だなんて信じられるわけがない。
やっぱり伊織さんはあやかしだから、私とは考え方、違うのかな。
ごちゃごちゃと考えていると、伊織さんが言った。
「ちゃんと答えたぜ、俺があんたをどう思っているかって」
そうだった。
私が、自分で聞いたんじゃないの。
私の事、何だと思っているのかって。
だからってこの展開は想像していなかったから、私、すごく混乱している。
「う……あ……」
なんとか絞り出した声は言葉にすらならなくて、私は伊織さんをただ見つめた。
私は伊織さんのその答えに、何を言えばいいんだろう。
だめだ、何も出てこない。
目が泳いでいる私の顔を見て、伊織さんが穏やかな笑みを浮かべて言った。
「顔が真っ赤だな」
その言葉の後、伊織さんの唇がまた触れる。
今度はさっきよりも長く。まるで私たちの境界を溶かすように。
「ん……」
私は伊織さんの胸に手を当てて、でも手に力は入らなくて。
だって私、キスされて嫌だなんて思ってないんだもの。むしろ心のどこかで喜んでいる。
そのことに気が付いて、私は桔梗さんとのやり取りを思い出した。
やっぱり手遅れなんだよ。
私はとっくに、伊織さんの腕の中に囚われているんだから。
唇が離れたときやっと、声を出せた。
「い、伊織、さん……私……」
私、なんだろう。
何言えばいいのかわかんないよ。
震える私を抱き締めて、伊織さんは自嘲気味に言った。
「何の力もない、ただの人間なのにな。そんなあんたに俺は狂わされた」
「伊織、さん……」
私が伊織さんを狂わせるなんて。ただの人間なのに? いや、ただの人間だからか。
そう自分を納得させる。
ただの人間じゃなくちゃきっと伊織さんは私に興味を抱かなかっただろう。
出会った最初から私に選択肢なんてなかったんだ。
伊織さんは私の腰を抱いたまま、切なげな声で言った。
「だから葉月。俺は何があってもあんたを守る。あの銃で撃たれた時みたいなことは絶対におこさねーから」
その言葉に私はゾクゾクしてしまう。
伊織さんはきっとそれを実行するだろう。だってそれだけの力があるんだもの。
そして私はこの腕の中から絶対に逃げられない。
「伊織さん……」
「だから俺だけを見てろ、葉月」
そう言って、伊織さんは私の身体を両手でぎゅっと抱きしめた。
遠くでケータイが震える音がする。
これ、私のケータイだ。
食卓の上に無造作に置いたから、すぐ近くにあるはずなのに。
なんでこんなに遠くに感じるんだろう。
ケータイの音はすぐに止む。きっとメールだ。
相手はひとりしかいない。
でも伊織さん、何も言わない。
私のケータイの連絡先、知ってるのは伊織さんと奈美だけだ。
きっと伊織さんは気がついている。私が、誰かと連絡先交換したってこと。
私が今日、誰かと会ってきたってこと。
でも伊織さんは何も言わないだろうな。
だって、私が誰と会おうと、私たちの間を壊すようなことはないと思ってるだろうから。
愛してる、て言葉がすごく重い。
軽々しく答えていいわけないよ。
私みたいな何も持たない人間が、伊織さんの愛に答えて大丈夫なのかな。
今の私にはその答えを出すことができなかった。
すぐにそれは離れていったけど、伊織さんの顔はまだ目の前にある。
吐息が絡まるくらいすぐ近くに。
私、どんな顔してるんだろう。
何言えばいいのかわかんなくって声も出ない。
キス、された。
その前に、愛してる、って言われた。
私の脳じゃ処理、追いつかないよ。
私は人間で、伊織さんはあやかしなのに。
私の唇、震えている。
伊織さんは愛おしそうに目を細めて私を見つめて、吐息交じりに言った。
「葉月」
と。
さっきまで葉月さん、だったのに。
甘く、低く私の脳を壊すかのように響いたその声に、私は口を開いて呆然とするしかできなかった。
何言えばいいのこれ。
私はただの人間なのに。
伊織さんみたいなあやかしに愛されるなんてありえないでしょ?
しかもその理由が、私の意味のない、伊織さんを銃から守ろうとした行動だなんて信じられるわけがない。
やっぱり伊織さんはあやかしだから、私とは考え方、違うのかな。
ごちゃごちゃと考えていると、伊織さんが言った。
「ちゃんと答えたぜ、俺があんたをどう思っているかって」
そうだった。
私が、自分で聞いたんじゃないの。
私の事、何だと思っているのかって。
だからってこの展開は想像していなかったから、私、すごく混乱している。
「う……あ……」
なんとか絞り出した声は言葉にすらならなくて、私は伊織さんをただ見つめた。
私は伊織さんのその答えに、何を言えばいいんだろう。
だめだ、何も出てこない。
目が泳いでいる私の顔を見て、伊織さんが穏やかな笑みを浮かべて言った。
「顔が真っ赤だな」
その言葉の後、伊織さんの唇がまた触れる。
今度はさっきよりも長く。まるで私たちの境界を溶かすように。
「ん……」
私は伊織さんの胸に手を当てて、でも手に力は入らなくて。
だって私、キスされて嫌だなんて思ってないんだもの。むしろ心のどこかで喜んでいる。
そのことに気が付いて、私は桔梗さんとのやり取りを思い出した。
やっぱり手遅れなんだよ。
私はとっくに、伊織さんの腕の中に囚われているんだから。
唇が離れたときやっと、声を出せた。
「い、伊織、さん……私……」
私、なんだろう。
何言えばいいのかわかんないよ。
震える私を抱き締めて、伊織さんは自嘲気味に言った。
「何の力もない、ただの人間なのにな。そんなあんたに俺は狂わされた」
「伊織、さん……」
私が伊織さんを狂わせるなんて。ただの人間なのに? いや、ただの人間だからか。
そう自分を納得させる。
ただの人間じゃなくちゃきっと伊織さんは私に興味を抱かなかっただろう。
出会った最初から私に選択肢なんてなかったんだ。
伊織さんは私の腰を抱いたまま、切なげな声で言った。
「だから葉月。俺は何があってもあんたを守る。あの銃で撃たれた時みたいなことは絶対におこさねーから」
その言葉に私はゾクゾクしてしまう。
伊織さんはきっとそれを実行するだろう。だってそれだけの力があるんだもの。
そして私はこの腕の中から絶対に逃げられない。
「伊織さん……」
「だから俺だけを見てろ、葉月」
そう言って、伊織さんは私の身体を両手でぎゅっと抱きしめた。
遠くでケータイが震える音がする。
これ、私のケータイだ。
食卓の上に無造作に置いたから、すぐ近くにあるはずなのに。
なんでこんなに遠くに感じるんだろう。
ケータイの音はすぐに止む。きっとメールだ。
相手はひとりしかいない。
でも伊織さん、何も言わない。
私のケータイの連絡先、知ってるのは伊織さんと奈美だけだ。
きっと伊織さんは気がついている。私が、誰かと連絡先交換したってこと。
私が今日、誰かと会ってきたってこと。
でも伊織さんは何も言わないだろうな。
だって、私が誰と会おうと、私たちの間を壊すようなことはないと思ってるだろうから。
愛してる、て言葉がすごく重い。
軽々しく答えていいわけないよ。
私みたいな何も持たない人間が、伊織さんの愛に答えて大丈夫なのかな。
今の私にはその答えを出すことができなかった。
