奈美の家の場所もわかって、学校の場所もわかった。
とりあえず事件じゃないみたいだけど、私の心は晴れなかった。
あんなに知りたくって、行方を心配していたのに。でも奈美は私が知っている奈美じゃなくなっているみたいだった。
私は渡された書類を畳み、伊織さんの方を見て力なく笑って言った。
「伊織さん、ありがとうございました。奈美が無事だってわかってよかったです」
無理やりつくった私の笑顔を伊織さんの紅い目が見つめてる。
何かを見透かすような目に見えて、私は自分の顔からすっと笑顔が消えてていく感じがした。
伊織さんは私の頬に手を伸ばしてくる。ちょっと冷たい伊織さんの手。
静かな縁側に、鳥のさえずりが響く。
伊織さんは小さく首を傾げて言った。
「なんか苦しそうに見えるけど」
図星をつかれて、私は伊織さんから目をそらしてしまう。
「そう、みえちゃいますよね」
って、力ない声で答える。
だって私、すごく衝撃受けてるんだもの。
家族いなくなって、誘拐されてオークションで売られそうになって。
でも私はひとりじゃないって、皆心配してくれてるって。そう思ってたのになぁ。
家族にはまだたどり着けなくって、一番仲がいいって思っていた友だちは、私の事なんて忘れているみたいなんだもの。
そんなの、知らない方がよかったなぁ。
そう思ったら顔が熱くなってきた。視界が曇ってる。私、泣いてるんだ。
私は涙でよく見えない目を伊織さんに向けて、とぎれとぎれに言った。
「友だちだって……思ってたのになー」
そう思っていたの、私だけだったのかな。
事件がなくても私、こうして切られていたのかな。卒業旅行の後、またね、って別れたはずなのに。
でも仕方ないよね。奈美の世界に私は必要なかったって事なんだもの。悲しいけど。
伊織さんが私の顔を両手で挟んで、私の涙を拭う。
伊織さん、優しいなぁ。
こんなに優しくされたら私、伊織さんから離れられなくなっちゃう。
霞んだ視界に見えるのは、心配げに目を細める伊織さんの顔だけだった。
「伊織……さん」
涙声で名前を呼ぶと、伊織さんは顔を近づけてきて言った。
「ここには俺しかいないし。どんだけ泣いても大丈夫だよ」
その言葉を聞いた瞬間、私の目からぶわって涙があふれた。
私は想いをぶつけるように伊織さんにしがみつく。
「う……あ……」
声といっしょに涙もたくさん溢れてきて、静かなお屋敷に響き渡った。
伊織さんの手が私の背中に回って、ぎゅって力がこもるのがわかる。
本当に優しいな、伊織さん。
親にも親友にも捨てられた私を、こんなふうに受け入れてくれるんだもの。
私、奈美に何かしたかなあ。中学生のときに同じクラスで友だちになって。
修学旅行で班も一緒だったのになぁ。
あー、ところどころ思い出せないことあるけど、今はそのほうが幸せかもしれない。
だって、楽しかった思い出があればあるほど、縁を切られたって事実が重くなってしまうから。
たくさん泣いて、だんだんと落ち着いてきて。
私は着ている羽織の裾で涙を拭って、伊織さんの肩に手をかけその顔を見る。
「ありがとうございます、伊織さん。だいぶ落ち着きました」
「ああ、ならよかった」
そう言いながらも、私を抱きしめる手の力は緩まない。
「私、伊織さんたちが調べてくれなかったらずっと不安でどうしようってなっていたと思うから、わかってよかたです。奈美は私と違って、お金持ちの子だから犯罪に巻き込まれたのかと思ったから」
そう私が言うと、伊織さんの眉がぴくり、と動いたような気がした。
あれ、どうかしたのかな。そう思うけど、すぐに伊織さんは笑顔になる。
「ねえ葉月さん」
「はい、なんですか?」
「夕食、あいつらも呼んで食べに行こうと思うんだけど」
「あいつら?」
伊織さんは頷いて言った。
「あぁ、桔梗と祐飛と、真琴。真琴が葉月さんの歓迎会したいってずっと言っていて。飲みてえだけだろうけど」
「つまりそれって……」
「そ、飲み会ってやつ」
「い、行きます!」
飲み会って初めての言葉に私は、胸が高鳴るのをかんじた。
とりあえず事件じゃないみたいだけど、私の心は晴れなかった。
あんなに知りたくって、行方を心配していたのに。でも奈美は私が知っている奈美じゃなくなっているみたいだった。
私は渡された書類を畳み、伊織さんの方を見て力なく笑って言った。
「伊織さん、ありがとうございました。奈美が無事だってわかってよかったです」
無理やりつくった私の笑顔を伊織さんの紅い目が見つめてる。
何かを見透かすような目に見えて、私は自分の顔からすっと笑顔が消えてていく感じがした。
伊織さんは私の頬に手を伸ばしてくる。ちょっと冷たい伊織さんの手。
静かな縁側に、鳥のさえずりが響く。
伊織さんは小さく首を傾げて言った。
「なんか苦しそうに見えるけど」
図星をつかれて、私は伊織さんから目をそらしてしまう。
「そう、みえちゃいますよね」
って、力ない声で答える。
だって私、すごく衝撃受けてるんだもの。
家族いなくなって、誘拐されてオークションで売られそうになって。
でも私はひとりじゃないって、皆心配してくれてるって。そう思ってたのになぁ。
家族にはまだたどり着けなくって、一番仲がいいって思っていた友だちは、私の事なんて忘れているみたいなんだもの。
そんなの、知らない方がよかったなぁ。
そう思ったら顔が熱くなってきた。視界が曇ってる。私、泣いてるんだ。
私は涙でよく見えない目を伊織さんに向けて、とぎれとぎれに言った。
「友だちだって……思ってたのになー」
そう思っていたの、私だけだったのかな。
事件がなくても私、こうして切られていたのかな。卒業旅行の後、またね、って別れたはずなのに。
でも仕方ないよね。奈美の世界に私は必要なかったって事なんだもの。悲しいけど。
伊織さんが私の顔を両手で挟んで、私の涙を拭う。
伊織さん、優しいなぁ。
こんなに優しくされたら私、伊織さんから離れられなくなっちゃう。
霞んだ視界に見えるのは、心配げに目を細める伊織さんの顔だけだった。
「伊織……さん」
涙声で名前を呼ぶと、伊織さんは顔を近づけてきて言った。
「ここには俺しかいないし。どんだけ泣いても大丈夫だよ」
その言葉を聞いた瞬間、私の目からぶわって涙があふれた。
私は想いをぶつけるように伊織さんにしがみつく。
「う……あ……」
声といっしょに涙もたくさん溢れてきて、静かなお屋敷に響き渡った。
伊織さんの手が私の背中に回って、ぎゅって力がこもるのがわかる。
本当に優しいな、伊織さん。
親にも親友にも捨てられた私を、こんなふうに受け入れてくれるんだもの。
私、奈美に何かしたかなあ。中学生のときに同じクラスで友だちになって。
修学旅行で班も一緒だったのになぁ。
あー、ところどころ思い出せないことあるけど、今はそのほうが幸せかもしれない。
だって、楽しかった思い出があればあるほど、縁を切られたって事実が重くなってしまうから。
たくさん泣いて、だんだんと落ち着いてきて。
私は着ている羽織の裾で涙を拭って、伊織さんの肩に手をかけその顔を見る。
「ありがとうございます、伊織さん。だいぶ落ち着きました」
「ああ、ならよかった」
そう言いながらも、私を抱きしめる手の力は緩まない。
「私、伊織さんたちが調べてくれなかったらずっと不安でどうしようってなっていたと思うから、わかってよかたです。奈美は私と違って、お金持ちの子だから犯罪に巻き込まれたのかと思ったから」
そう私が言うと、伊織さんの眉がぴくり、と動いたような気がした。
あれ、どうかしたのかな。そう思うけど、すぐに伊織さんは笑顔になる。
「ねえ葉月さん」
「はい、なんですか?」
「夕食、あいつらも呼んで食べに行こうと思うんだけど」
「あいつら?」
伊織さんは頷いて言った。
「あぁ、桔梗と祐飛と、真琴。真琴が葉月さんの歓迎会したいってずっと言っていて。飲みてえだけだろうけど」
「つまりそれって……」
「そ、飲み会ってやつ」
「い、行きます!」
飲み会って初めての言葉に私は、胸が高鳴るのをかんじた。
