松永家の帰り、仙台駅前の雑踏の中で懐かしい顔に出くわした。女学校の恩師・山辺先生だ。
「山辺先生!」
当時よりやや肉付きが良くなっていたが、少し下がり気味の優しい目元は確かに山辺先生だった。嬉しさと興奮で、駆け寄って聞かれてもいないのに勇んで近況を話していた。
山辺先生は何度も頷きながら優しく話を聞いてくれた。近くで見ると、先生の頬には茶色いシミがいくつも散っていた。女学校を卒業してから七年。月日が流れるのは早い。
「菅野さん、失礼、朝田さんは夢を叶えたというわけですね」
「……夢?」
「おや、忘れましたか? 授業で将来の夢を発表する時、朝田さんは『立派なお家に嫁いで夫を支える妻になりたい』と仰ってましたよ?」
そんなことを言っていただろうか? たった七年前のことなのに、全く思い出せない。
「仲の良かった伊藤さんとは、今も連絡を取り合っているの?」
「……静ちゃんですか? ――いいえ」
咄嵯に嘘を吐いていた。
「伊藤さんはどうかな。夢を叶えたでしょうか」
「……さあ」
静に夢なんかあったのだろうか。何もかもが自然とうまくいく人だから、きっと何も考えていなかっただろう。
それに静は何もかもを手にしている。これ以上望むものがあるとしたら、贅沢すぎる。
気付けば、すっかり日が暮れていた。
空が黒一色に染まっている。
「山辺先生!」
当時よりやや肉付きが良くなっていたが、少し下がり気味の優しい目元は確かに山辺先生だった。嬉しさと興奮で、駆け寄って聞かれてもいないのに勇んで近況を話していた。
山辺先生は何度も頷きながら優しく話を聞いてくれた。近くで見ると、先生の頬には茶色いシミがいくつも散っていた。女学校を卒業してから七年。月日が流れるのは早い。
「菅野さん、失礼、朝田さんは夢を叶えたというわけですね」
「……夢?」
「おや、忘れましたか? 授業で将来の夢を発表する時、朝田さんは『立派なお家に嫁いで夫を支える妻になりたい』と仰ってましたよ?」
そんなことを言っていただろうか? たった七年前のことなのに、全く思い出せない。
「仲の良かった伊藤さんとは、今も連絡を取り合っているの?」
「……静ちゃんですか? ――いいえ」
咄嵯に嘘を吐いていた。
「伊藤さんはどうかな。夢を叶えたでしょうか」
「……さあ」
静に夢なんかあったのだろうか。何もかもが自然とうまくいく人だから、きっと何も考えていなかっただろう。
それに静は何もかもを手にしている。これ以上望むものがあるとしたら、贅沢すぎる。
気付けば、すっかり日が暮れていた。
空が黒一色に染まっている。

