幾星霜の呪いの子 ―下町駆け込み寺の怪異譚―

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「もう繋がってんの? 繋がってる? ――こんばんは! オカルト倶楽部です。今日は月一の生配信の日です! 今日はですね、視聴者の方からいただいた情報をもとに、ある心霊スポットに来ています。僕の声、聞こえてます? ……大丈夫? 聞こえてますね。リンさん、コメントありがとうございます! 山ゆーさん、こんばんは! ――声を潜めているのはですね、ここが都内の住宅街の中だからです。住宅街の真ん中ですよ? でも出るんです、幽霊が」
「ほんとにぃ? 普通の住宅街だよ? ここ」
「あ、ヒトコワ担当の岸田(きしだ)さんはあんまり信じてませんね?」
「信じてないっていうか……。超普通の住宅街ですもん、ここ」
「大丈夫です。そこの角を曲がるとすぐに怖くなります。あっ、申し遅れました。僕が心霊担当の早見(はやみ)です!」
「静かに、静かに。さっき自分で住宅街の中だから声小さくって言ったばっかじゃないすか。それに夜中なんだから」
「あっそうですね、すみません」
「で、今から行くのはどんな所なんですか?」
「それは、現場を見ればすぐにわかると思います」
「見ればわかる? どうして」
「わかるんです。――あっ、ありました、ありました! あれです岸田さん、あの家です!」
「……うわ」
「ね? ちょっとすごいでしょ?」
「すご……。火事、だよねこれ。真っ黒こげじゃん……。え、て言うか、なんでそのままにしてあるんすか」
「なんか、取り壊しの際に業者の一人が突然死したとか、現場に入ろうとした作業員が死亡したとか、いろいろと噂があります」
「だからって、焼け跡をそのままにしてるなんて……」
「不気味ですよねぇ。――ということで、今日は幽霊が出ると噂の住宅火事跡に来ています。見てください、辛うじて柱と屋根が残っているだけで、壁は焼け落ちちゃってますね。どこもかしこも真っ黒です。黒い家ですよ、黒い家。……家の周りには立ち入り禁止のテープが貼られていて、中には……ちょっと入れないですね」
「暗いし、真っ黒だし……なんか、焦げ臭いっていうか、変なにおいもする」
「においますねー。ここ、かなり高齢のおばあちゃんの一人暮らしで、住んでるときからゴミ屋敷になっちゃってたらしいんです。そのせいでしょうか、この悪臭は」
「ゴミか。――ちょっと待って、じゃあそのおばあさんはもしかして、火事で……?」
「――それは、」
「お前たち! こんな夜中に何してる!」
「やばい、誰か来たっ」
「隣りの家のひとだ! カメラ下ろして、下ろして! ……お騒がせしてすみませーん、俺たち怪しい者じゃないです。あの、撮影をしてまして」
「夜中にうるさいんじゃ! 帰れ!」
「す、すみません! すみません!」
「帰れーっ!」
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