Bメロみたいな恋だった

「卒業式の日、少しだけ時間もらえないかな」

前日の夜、久しぶりにみずきとのDMを開いてそう送った。
みずきからは「わかった!」というメッセージと、オーケーのポーズをしたうさぎのスタンプが返ってきた。

当日、俺たちはグラウンド側の木の下で待ち合わせをした。
春の風が土埃を立てていたのを覚えている。

「おまたせ」

後輩たちからもらったのだろう花束を抱えて、みずきがやってきた。
引退して、短くする必要がなくなった髪は肩まで伸びていて、風に揺られていた。

俺が少し見とれていると、みずきが気恥ずかしそうに言った。

「えっと、話って?」

俺は目を見て、ゆっくり話し始めた。

「その、この前はごめん」

みずきはきょとんとした顔をした。

「最後の試合の日。俺、なんて言えばいいかわかんなくて。みずきの悔しい気持ちとか、そういうの、雑に扱ったと思う。本当にごめん」

みずきは少しだけ笑った。

「そうだよ、あれはひどかったですな」

冗談っぽい言い方だったけど、ちゃんと本音だった。
俺が言葉に詰まると、みずきは続けた。

「でも、ありがとう。というか、私の方こそごめんね。あの日から、ちょっと変になっちゃって」

その言葉に少しだけ安心しながら、俺は続けた。

「なんかさ、あのあと少し考えたんだよね。気にすんなとか、もっと大変なやついるとか、そういうので片づけるの、違うんだなって。その人がその時どう思ったかが、大事なんだなって」

それから俺は、りょうの話をした。

「なにそれ」

みずきは声を出して笑った。
花束じゃなくて俺は白飯をもらったかもしれない、と言ったら、お腹を抱えていた。

それから、と俺は続けかけた。

本当は、もう少し別のことを伝えたかった。
でも、卒業式だからとか、もう会えなくなるかもしれないからとか、そういう空気に押されて言うのは違う気がした。

もし伝えるなら、そうじゃないときに、ちゃんと言いたかった。そういう風に自分が思ったから。

だから、その先の言葉を飲み込んだ。