「先輩たち、本当にすみませんでした」
俺たちが学食で飯を食っていると、一年のりょうが神妙な顔で近づいてきて、そう言って深く頭を下げた。
りょうは一年ながら得点力があって、ベンチ入りしていた期待のルーキーだった。
俺たちの最後の夏の大会でも途中出場して得点を決めた。
でも試合はPK戦までもつれ込んで、最後、りょうのキックが止められて負けた。
りょうは普段、くるくるの髪をワックスでちゃんとセットしていて、どこかチャラく見えるやつだった。正直、それをあまりよく思っていない三年もいた。
そのりょうが、きれいな坊主頭になって現れた。
最初、誰だかわからなくて、俺たちは一瞬黙った。
次の瞬間、どっと笑いが起きた。
「お前、なんだその頭」
「気合い入りすぎだろ」
りょうは頭を下げたままだった。
俺も最初はつられて笑った。
笑いが少し収まると、今度はみんな口々に慰め始めた。
「いや、お前のせいじゃねえって」
「むしろお前入ってから流れ変わったじゃん」
「一年のくせに責任感じすぎだろ」
でも、りょうは頭を上げなかった。
それを見ていたら、何故かみずきの言葉が頭の中に浮かんだ。
別に、平気なふりしなくてもいいんじゃないですか。
「……そういうことじゃないんじゃないか」
気づいたら、そう言っていた。
みんながこっちを見る。
「いや、なんていうか……りょう、たぶん慰めてほしいわけじゃないだろ。気にすんなって言われても、今は無理だし。だって、こいつ、あの試合で俺らの代を終わらせたって思ってるんだろ。次があるとか、そういう話じゃなくて、今、悔しいんだろ」
自分でも、うまく言えている気はしなかった。
でも、りょうの肩が少しだけ揺れた。
「……っす」
くぐもった声がして、それからりょうは泣き出した。
「おい、泣いてんじゃん」
誰かがそう言って、でもさっきみたいに笑えなくなった空気が、少しだけ学食のテーブルに落ちた。
そのとき、けんたが箸を置いて言った。
「じゃあ、お前は俺らの分まで勝てよ。優勝したら許す」
りょうはぐしゃぐしゃの顔のまま何度も頷いた。
それから、少しだけ顔を上げて俺を見た。
「……先輩」
「ん?」
「さっき、ちゃんとわかってくれたじゃないですか」
何のことかわからなくて、俺は黙った。
「だから、俺の分までご飯食べていいですよ」
「は?」
「いや、なんか……感謝の気持ちっす」
そういうとりょうは自分のトレーの白飯を俺の皿によそい始めた。
「ちょ、お前やめろって」
それを見ていたけんたが吹き出した。
「じゃあ俺も盛るわ。責任取って食えよ、エース」
「おい待てって」
そこからはもう早かった。
周りのやつらも面白がって俺の皿に白飯を盛り始めて、気づけば山みたいな量になっていた。
気がつくと動画はとっくに終わっていた。そういえば、あれはあのとき撮られた写真だったな。
あの頃の俺は、みずきに言われたことを、少しだけ自分のものにできていたのかもしれない。
誰かの悔しさを、茶化したり、きれいに片づけたりせずに受け取ることを。
でも、そうなると気になる。俺はみずき本人には、何か返せていたんだっけ。
そう考えたとき、卒業式の日のことを思い出した。
俺たちが学食で飯を食っていると、一年のりょうが神妙な顔で近づいてきて、そう言って深く頭を下げた。
りょうは一年ながら得点力があって、ベンチ入りしていた期待のルーキーだった。
俺たちの最後の夏の大会でも途中出場して得点を決めた。
でも試合はPK戦までもつれ込んで、最後、りょうのキックが止められて負けた。
りょうは普段、くるくるの髪をワックスでちゃんとセットしていて、どこかチャラく見えるやつだった。正直、それをあまりよく思っていない三年もいた。
そのりょうが、きれいな坊主頭になって現れた。
最初、誰だかわからなくて、俺たちは一瞬黙った。
次の瞬間、どっと笑いが起きた。
「お前、なんだその頭」
「気合い入りすぎだろ」
りょうは頭を下げたままだった。
俺も最初はつられて笑った。
笑いが少し収まると、今度はみんな口々に慰め始めた。
「いや、お前のせいじゃねえって」
「むしろお前入ってから流れ変わったじゃん」
「一年のくせに責任感じすぎだろ」
でも、りょうは頭を上げなかった。
それを見ていたら、何故かみずきの言葉が頭の中に浮かんだ。
別に、平気なふりしなくてもいいんじゃないですか。
「……そういうことじゃないんじゃないか」
気づいたら、そう言っていた。
みんながこっちを見る。
「いや、なんていうか……りょう、たぶん慰めてほしいわけじゃないだろ。気にすんなって言われても、今は無理だし。だって、こいつ、あの試合で俺らの代を終わらせたって思ってるんだろ。次があるとか、そういう話じゃなくて、今、悔しいんだろ」
自分でも、うまく言えている気はしなかった。
でも、りょうの肩が少しだけ揺れた。
「……っす」
くぐもった声がして、それからりょうは泣き出した。
「おい、泣いてんじゃん」
誰かがそう言って、でもさっきみたいに笑えなくなった空気が、少しだけ学食のテーブルに落ちた。
そのとき、けんたが箸を置いて言った。
「じゃあ、お前は俺らの分まで勝てよ。優勝したら許す」
りょうはぐしゃぐしゃの顔のまま何度も頷いた。
それから、少しだけ顔を上げて俺を見た。
「……先輩」
「ん?」
「さっき、ちゃんとわかってくれたじゃないですか」
何のことかわからなくて、俺は黙った。
「だから、俺の分までご飯食べていいですよ」
「は?」
「いや、なんか……感謝の気持ちっす」
そういうとりょうは自分のトレーの白飯を俺の皿によそい始めた。
「ちょ、お前やめろって」
それを見ていたけんたが吹き出した。
「じゃあ俺も盛るわ。責任取って食えよ、エース」
「おい待てって」
そこからはもう早かった。
周りのやつらも面白がって俺の皿に白飯を盛り始めて、気づけば山みたいな量になっていた。
気がつくと動画はとっくに終わっていた。そういえば、あれはあのとき撮られた写真だったな。
あの頃の俺は、みずきに言われたことを、少しだけ自分のものにできていたのかもしれない。
誰かの悔しさを、茶化したり、きれいに片づけたりせずに受け取ることを。
でも、そうなると気になる。俺はみずき本人には、何か返せていたんだっけ。
そう考えたとき、卒業式の日のことを思い出した。
