Bメロみたいな恋だった

「そんなこともあったよな」

大失敗したあの日を振り返りながら歩いているうちに、気づけば家に着いていた。
時計の針は十二時手前を指していた。

妙に懐かしい気分になって、クローゼットの奥に押し込んであった段ボールを引っ張り出す。
高校の卒業アルバムとか、大学のゼミでもらった色紙とか、そういう、なんとなく捨てられないものがまとめて入っている箱だ。

引っ越すたびに実家へ送ってしまおうかと思うのに、結局今も部屋の隅に居座っている。

段ボールの中から卒アルを取り出す。
青い表紙に「軌跡」と白字で印字されていた。

表紙は少しくたびれていたが、ページにはまだ妙な張りが残っていた。
一ページ目は文化祭の写真だった。おどけた顔をしたけんたの隣で、俺も似たような顔をしている。

「うわ、黒いな」

今では考えられないくらい焼けた自分の肌を見て、思わず呟いた。

二ページ、三ページとめくっていくと、学食の写真が出てきた。
サッカー部のやつらが何人か写っていて、俺はなぜか山みたいに盛られた白飯を持っていた。

どう見ても学食のおばちゃんがよそった量じゃなくて、あいつらが面白がって盛ったとしか思えない。

「これ、なんでだっけ」

そう呟いて、答えを探すみたいに視線を落とすと、段ボールの中に古いスマホが埋もれているのが見えた。

「……動くのか」

充電器も一緒に入っていた。
半信半疑でコンセントにつなぐと、しばらくしてメーカーのロゴが青白く浮かび上がる。

パスワードなんて覚えているか怪しかったが、とりあえず今と同じものを打ち込んでみた。

昔ハマっていたアニメキャラの壁紙が現れる。
どうやら正解だったらしい。

妙な懐かしさに包まれながら写真アプリを開く。
当時使っていたスパイク、サッカー部のやつらの変顔、教室の黒板、日々を切り取った写真が、ずらっと並んでいた。

スクロールしていると、さっきの学食写真の前後に撮られたらしい動画が出てきた。

再生すると、坊主頭のやつが泣いていた。
周りは「もう、泣くなよー」と笑いながら茶化している。

なんでこいつ、泣いてたんだっけ。
記憶を手繰っているあいだも動画は回り続ける。テーブルを叩く音、仲間の笑い声。少しずつ、あのときの空気が戻ってきた。

たしか、あれは――。