天使の白い秘密



春、僕は高校生になった。
受験が成功し、行きたい高校、というのではなく、中三の時の担任におすすめされた所に行った。
そして、先日入学式を迎えた。
体育館を見渡したが、知り合いは誰一人いない。
唯一、小学生からの付き合いだった友達とは案の定別の高校になったが、連絡先は持っているためまだ安心だ。

「 幸〜、朝だよ降りてきな〜! 」

母親の声がする。
いつも起こしてくれる。その前に起きているため意味はないが。
僕は一階にいる母親に聞こえる声量で返事をし、一階に降りた。
そのままリビングへ行こうかと思ったが、気が変わり、洗面所へ行き顔を洗ってからリビングへ行った。
琥珀色に焼けているパンテーブルの上に置いてあり、バターを付けてかぶりついた。

「 幸、高校で変なことしないでよ? 」

そんなに心配する必要は無いと思う。
小学も中学も、問題を起こすようなことはしていないはずだから。

「 平気だよ母さん、いつも通り過ごしてるよ 」

僕のいつも通りとは、教室に入り自分の机で授業が始まるまで本を読んでいる事だ。
退屈だが暇潰しにはちょうどいい。

パンを食べ終わる頃には少しいい時間だった。
すぐ服を着替え、歯を磨き、荷物を持ち、玄関に足を運んだ。

「 忘れ物してない?自分の教室は覚えてる? 」

「 してない、覚えてるよ。母さん心配しすぎ 」

母親は少し過保護なところがある。
だが、それも母親のいい所だ。

「 行ってきます 」

そう家に言い残して外へでた。
昨日より一段と晴天で雲ひとつない空だった。
だが、それはそれで少し嫌だ。
太陽が出ているため眩しいからだ。

僕の家から高校まで歩いて20分ほどだ。
少し面倒くさい。
バスで行こうかと思ったが、学校周辺にはバス停がないため歩いた方が早いということに気づいた。

10分ほど歩き、ふと後ろを見た。足音がしたのだ。
同じ学校の女子用の制服を着ている人が後ろにいた。
僕には及ばないが少し背が高く、長めの黒い髪の毛。
手入れがちゃんとされている様だ。
彼女が隣に並んだ。それを僕は横目で見ていたその時、彼女が口を開いた。

「 ねぇ、貴方も蓬莱高校? 」

僕が行く高校名が彼女の口からでた。
僕は嘘をつく必要もなかったため、「 うん 」とだけ彼女に告げた。

「 そっか、私と一緒だ。私浅倉怜。そっちは? 」

聞いてもいないのに紹介された。
まぁ、言っても損はないため自分の名前を相手に伝えた。それを聞いた彼女は「 へぇ 」とだけ言って会話を終わらせた。
なんなんだ。

真っ直ぐ歩いているが横にいる彼女が先に行ったりすることはない。
何故だ。
僕と一緒に歩いていてなにか意味があるのか?
僕は彼女の顔を少し見た。
口角が少しだけ上がり普通の笑顔でいる。
色白で肌荒れひとつない肌。
真っ直ぐな目。
…人形みたいだ。
本当は失礼になり、思っては行けないのだろう。
だが、そう思うしか出来なかった。

「 …私の顔になにか着いてる ? 」

しまった、見すぎた。
僕は即座に謝り前を向いた。
彼女の顔を見ていたからか、いつの間にか校門が目視できる場所までたどり着いていた。

「 同じクラスだよね、よろしくね 」

同じクラスなのか、初めて知った。
昨日の入学式後のクラス内では同中の人を探すのに精一杯だったから彼女のことは目に入らなかったらしい。
まぁ、誰も同中の人はいなかったが。

「 うん、よろしく 」

そう言って下駄箱へはいる。靴を上履きに履き替え、廊下に足を踏み込む。
その後ろに彼女がいる。
何故か足が止まった。体が彼女を待っているのか。
僕の体は僕でもよく分からない。


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