それから数日が過ぎた。
季節は少しずつ春らしくなり、過ごしやすい気候になってきている。
学校生活は相変わらずだった。
授業を受けて、友達と笑って、部活へ行く。
特別な出来事なんて何もない。
それでも、以前とは少しだけ違うことがあった。
学校で野球部の話題が聞こえてくると、自然と耳を傾けてしまう。
廊下を歩いていると、ついつい藤原くんを探している自分がいる。
そんな自分に気づいては、「何やってるんだろう」と、小さく笑ってしまう。
放課後、部活へ向かう途中、渡り廊下からグラウンドが見えた。
野球部はすでに練習を始めている。
カキーン、と乾いた金属音が校舎まで響いてきた。
思わず足を止める。
「花奈?」
前を歩いていた陽菜が振り返る。
「あ、ごめん」
慌てて歩き出す。
「もしかして、野球見てた?」
「うん。ちょっとだけ」
「やっぱりー。花奈は本当に野球が好きだね」
陽菜はそう言って笑った。
「お父さんの影響かな」
そう答えながら、もう一度だけグラウンドを見る。
すると、試合の日に見たようなノックが始まっていた。
軽快な足取りで打球に追いつき、鋭い送球を投げる選手たち。
「ナイス!」
グラウンドに響いた声で、すぐ藤原くんだと分かった。
練習中でも仲間への声掛けを欠かさない。
試合の時と同じだった。
「すごい」
思わずつぶやく。
「あれだけ毎日練習してるんだから強いわけだよね」
真帆もグラウンドを見つめながら言った。
「県大会優勝できるかな」
陽菜の言葉に、
「大丈夫。きっとできるよ」
私は自然と答えていた。
そのまま何気ない話をしながら部室へ向かって歩き出す。
後ろから聞こえてくる打球音は、校舎の中へ入ってもしばらく耳に残っていた。
その日の帰り道で駅に向かう途中、陽菜がふと思い出したように言う。
「そうだ、みんなに聞こうと思ってたこと忘れてた。
野球部って今週の土曜日決勝じゃん?
よかったら応援しに行かない?」
「私は行きたい!」
紬が真っ先に手を挙げた。
「初戦面白かったし!」
「私も行きたいな」
「私も!」
真帆や千尋も後に続いて賛成した。
四人の視線が私に集まる。
「花奈はどう?」
少しだけ考える。
けれど、最初から答えは決まっていた。
「私も行きたい」
そう言うと、陽菜が嬉しそうに笑った。
「じゃあ決まり!
今度は応援だけだから、ゆっくり試合見られるね」
その言葉を聞いた瞬間、不思議と胸が弾んだ。
前回は手伝いの合間に見た試合だった。
今度は他のことは気にせず試合にだけ集中できる。
ーーまた、藤原くんのプレーが見られる。
そんなことを思った自分に気づき、なんだか少し照れ臭くなった。
季節は少しずつ春らしくなり、過ごしやすい気候になってきている。
学校生活は相変わらずだった。
授業を受けて、友達と笑って、部活へ行く。
特別な出来事なんて何もない。
それでも、以前とは少しだけ違うことがあった。
学校で野球部の話題が聞こえてくると、自然と耳を傾けてしまう。
廊下を歩いていると、ついつい藤原くんを探している自分がいる。
そんな自分に気づいては、「何やってるんだろう」と、小さく笑ってしまう。
放課後、部活へ向かう途中、渡り廊下からグラウンドが見えた。
野球部はすでに練習を始めている。
カキーン、と乾いた金属音が校舎まで響いてきた。
思わず足を止める。
「花奈?」
前を歩いていた陽菜が振り返る。
「あ、ごめん」
慌てて歩き出す。
「もしかして、野球見てた?」
「うん。ちょっとだけ」
「やっぱりー。花奈は本当に野球が好きだね」
陽菜はそう言って笑った。
「お父さんの影響かな」
そう答えながら、もう一度だけグラウンドを見る。
すると、試合の日に見たようなノックが始まっていた。
軽快な足取りで打球に追いつき、鋭い送球を投げる選手たち。
「ナイス!」
グラウンドに響いた声で、すぐ藤原くんだと分かった。
練習中でも仲間への声掛けを欠かさない。
試合の時と同じだった。
「すごい」
思わずつぶやく。
「あれだけ毎日練習してるんだから強いわけだよね」
真帆もグラウンドを見つめながら言った。
「県大会優勝できるかな」
陽菜の言葉に、
「大丈夫。きっとできるよ」
私は自然と答えていた。
そのまま何気ない話をしながら部室へ向かって歩き出す。
後ろから聞こえてくる打球音は、校舎の中へ入ってもしばらく耳に残っていた。
その日の帰り道で駅に向かう途中、陽菜がふと思い出したように言う。
「そうだ、みんなに聞こうと思ってたこと忘れてた。
野球部って今週の土曜日決勝じゃん?
よかったら応援しに行かない?」
「私は行きたい!」
紬が真っ先に手を挙げた。
「初戦面白かったし!」
「私も行きたいな」
「私も!」
真帆や千尋も後に続いて賛成した。
四人の視線が私に集まる。
「花奈はどう?」
少しだけ考える。
けれど、最初から答えは決まっていた。
「私も行きたい」
そう言うと、陽菜が嬉しそうに笑った。
「じゃあ決まり!
今度は応援だけだから、ゆっくり試合見られるね」
その言葉を聞いた瞬間、不思議と胸が弾んだ。
前回は手伝いの合間に見た試合だった。
今度は他のことは気にせず試合にだけ集中できる。
ーーまた、藤原くんのプレーが見られる。
そんなことを思った自分に気づき、なんだか少し照れ臭くなった。



