星屑みたいな恋だった。

一球目。

外角低めいっぱいのストレート。

藤原くんはバットを動かさない。

「ストライク!」

球審の声が響く。

相手投手は小さく頷き、テンポよく二球目のサインを受けた。

二球目。

今度は内角への速いストレート。

藤原くんは素早くバットを振る。

鋭い打球が三塁線へ飛んだ。

「惜しい!」

打球はわずかに切れ、ファウル。

カウントは追い込まれた。

私は思わず手を握りしめる。

相手投手も簡単には勝たせてくれない。

決勝まで勝ち上がってきただけあって、一球一球に力がこもっていた。

三球目。

高めへ浮き上がるようなストレート。

藤原くんは反応したものの、わずかにタイミングが合わず、またファウル。

簡単には終わらない。

そんな空気が、球場全体に広がっていた。

四球目。

低めへ落ちる変化球。

藤原くんは最後までボールを見極め、バットを止める。

「ボール!」

カウントは一ボール二ストライク。

相手投手は、もう一度大きく息を吐いた。

捕手も立ち上がって声を掛ける。

そして五球目。

相手投手が大きく振りかぶる。

捕手のミットめがけて投げ込まれたのは、この日一番と言っていいほど力のこもったストレートだった。

藤原くんは、一歩も引かない。

踏み込んだ右足と同時に、迷いなくバットを振り抜く。

ーーカキーン!

乾いた金属音が球場中に響き渡った。

打球はライナーで三遊間へ飛ぶ。

ショートが横っ飛びでボールに飛びつく。

グラブの先がわずかに触れた。

それでも勢いは衰えず、そのままレフト前へ抜けていく。

「抜けた!」

蒼陵学院の応援席から歓声が上がる。

一塁ランナーは迷わず二塁を蹴り、三塁へ滑り込んだ。

藤原くんも一塁ベースへ駆け抜け、二塁ベースに到達すると、小さく拳を握る。

派手なガッツポーズはない。

すぐに視線を五番打者へ向け、軽く頷いた。

「やっぱり打った…」

私は思わず、そう呟いていた。

七回まで続いていた均衡を破るチャンス。

二死一、三塁。

球場全体の視線が、次の打席へ集まる。

五番打者がゆっくりとバットを握り直し、打席へ向かった。

あと一本。

その一本で、試合の流れは大きく変わる。

膝の上で握った手に、自然と力が入っていた。

相手投手はゆっくりとセットポジションに入る。

一球目は高めのストレートで、五番打者は見送り、ボール。

続く二球目は、外角いっぱいの変化球をファウルで粘る。

そして三球目。

低めへ沈むボールをなんとかバットに当てると、打球は高く上がった。

レフト。いや、ショートか。

観客席からどよめきが起こる。

「捕れ!」

相手ベンチから声が飛ぶ。

しかし、打球はショートの頭上を越えてレフト前へ落ちた。

「よしっ!」

蒼陵学院の応援席が一気に湧いた。

三塁ランナーがスタートを切る。

ホームへ滑り込みーー。

「セーフ!」

球審が大きく手を広げた。

球場中に歓声が響き渡る。

八回表。

蒼陵学院がついに均衡を破った。

ホームへ踏んだ三番打者は笑顔で仲間とハイタッチを交わす。

尚も二死一、二塁。

追加点のチャンスは続いていた。

応援席からはさらに大きな声援が送られる。

「もう一本!」

「つなげ!」

ベンチからも力強い声が聞こえてきた。

続く六番打者も初球からバットを振っていく。

鋭い打球はセンター方向へ伸びる。

「抜ける!」

そう思った瞬間だった。

センターが素早く前へ詰め、ダイビングキャッチ。

球場から大きなどよめきが起こる。

「アウト!」

最後の打者が打ち取られ、攻撃終了。

追加点こそ奪えなかったものの、ついに試合は動いた。

蒼陵学院が八回表に待望の先制点。

スコアボードに刻まれた「1」という数字を見つめながら、私は静かに息を吐いた。

あと三つ。

そのアウトを取れば、県大会優勝。

そう思うだけで、胸の鼓動はさらに速くなっていった。