星屑みたいな恋だった。

そんな気持ちのまま迎えた土曜日。

攻守ともに隙のない戦いぶりで、春の県大会は最終ゲームへ。

準決勝に勝利したことにより、両校東海大会への切符を手にしている。

そして、この試合に勝てば県大会優勝。

学校でも、野球部の話題を耳にすることが増えていた。

「また勝ったらしいな」

「今年も強いね」

廊下ですれ違う生徒たちの会話からも、野球部への期待の大きさが伝わってくる。

「おはよー」

球場で待ち合わせた私たちは、観客席に腰を下ろす。

今回は決勝というだけあって、初戦の時よりも大きい球場だ。

「初戦よりも人多いね」

紬が観客席を見渡しながら言う。

「決勝だからねー」

陽菜が笑いながら答える。

「ゴールデンウィークだし、見に来やすいのもあるかも」

千尋も周りを見渡しながら言った。

「たしかに」

私はそう返事しながら、スタンドをゆっくり見回した。

初戦では空席が目立っていた観客席も、今日は多くの人で埋まっている。

蒼陵学院側の応援席には、野球部員の保護者や在校生だけでなく、卒業生らしき人たちの姿も見えた。

試合開始まではまだ少し時間があるというのに、球場全体がどこかそわそわと落ち着かない空気に包まれていた。

「なんか緊張してきた」

紬が胸の前で手を握る。

「紬が試合に出るわけじゃないでしょ」と陽菜が笑う。

そのやり取りに、私たちも思わず笑みが溢れる。

笑いながらも、自然と私の視線はグラウンドへ向いていた。

選手たちはアップを始めている。

ランニングを終え、キャッチボール、素振り、ノック。

ここまで勝ち上がってきたチームらしく、一つ一つの動きがきびきびとしている。

その中には、仲間と言葉を交わしながらアップをこなし、時折笑顔を見せる藤原くんの姿があった。

試合前でもリラックスした表情を浮かべる彼に、一瞬で引き込まれる。

「相変わらず落ち着いてるね」

真帆がぽつりと呟く。

私は「うん」と小さく頷いた。

ここまで来れば、誰だって緊張するはずだ。

それでも藤原くんからは、不思議なくらい焦った様子が感じられない。

きっと、それだけ毎日の練習を積み重ねてきたんだろう。

試合で見せるプレーだけじゃない。

こういう何気ない時間を見ていると、その強さの理由がほんの少しだけれど分かる気がした。

「まもなく、試合を開始いたします」

場内アナウンスが響き渡った。

選手たちが整列し、挨拶をする。

春の県大会、最後の試合。

その幕が、いよいよ上がろうとしていた。