毎週木曜日、僕は彼女の横の席で授業をうける。
清風高校の二年生は毎週木曜日の四時間目は選択授業を受けることになっている。
個人個人が好きな科目を選択し、その授業を受けるため、学年やクラスの垣根なく
受けることができる唯一の授業だ。
ゲームで知ってる偉人の名前や歴史的事件などに詳しかったので、いつの間にか得意な科目となっていた歴史。
当然選択授業においても、楽をしたいという気持ちが強かったので、歴史研究を選択することにした。
確かに僕は彼女が好きだ。大好きだ。でも、それだけなんだ。
付き合いたいなんておこがましいことは考えていない。
毎週木曜日に隣で授業を受け、たまに他愛のない話をして⋯。
それだけで十分だった。今日がその木曜日だ。内心ウキウキしてるものの
それを顔に出さずにいる。
「まあ、もし付き合ったらちゃんと報告するよ。」と期待のできない約束をする。
「絶対しないだろ。」と釘を差されたところで、キーンコーンカーンコーンと
チャイムが時を知らせてくれた。一弥はじゃーな〜とカツカツ音を立てながら
自分の席へと戻っていった。
一時間目から三時間目、偏差値の低いこの高校の授業は驚くほど簡単だ。
なんせ、教科書だけ読んでいれば授業にはついていけるほどのものだからだ。
むしろ、眠気と戦うほうが大変だ。
なんとか眠気を成敗し、待ちに待った四時間目が来た。
普段授業を行う二年G組は三階にあるが、選択授業は四階まで登る必要がある。
ただ彼女に会えるのならそんなことも苦にはならなかった。
僕の席はクラスと変わらず、廊下側の一番うしろにある。
隣の席はまだ誰もいなかった。
しばらくスマホをいじって時間を潰していると。
「おつかれ~」と肩をバシッとたたかれ、ビクッとしながら振り返ると
そこに彼女はいた。
「ビックリしたでしょ」と口を押さえながらニタニタしている。
北川理沙だ。僕の好きな人。
身長が小さく、ちょこちょこ動き回ることから、みんなからはちょこと呼ばれているナチュラルな茶色のボブヘアー、クリクリとした目、まるで小動物を彷彿とさせる見た目からは想像できないくらい常にエネルギッシュに大きな声で話す。
彼女は誰とでも気さくに話す。それは僕も例外ではないから彼女にとっては
僕に話しかけることなどただの日常であろう。
そこに僕がいたからただ話しかけた。
でも僕は違う。そもそも女子と話す機会が少ない僕。
そんな僕に対してあふれんばかりの笑顔で話しかけてくれる彼女に対して
僕は惚れてしまった。
「急に叩かないでよ、ビックリしたよ。」
「そんなこと言って、私が中々来なくて寂しかったんじゃないのー?」
冗談を言っているのであろうが、図星だ。
「いやいや、普通に授業始まるの待ってるだけだよ。」
「はいはい、そーゆーことにしといてあげるよ」
そこでチャイムが鳴り始めたと同時に先生が教室に入ってきた。
歳は六十近くだろうか?白髪交じりの、いや、割合的には黒毛混じりの白髪といったほうがいいだろう。ぴっちりと七三に別れた髪の毛。大きな黒縁眼鏡をかけ、
ちょび髭を生やしている。僕の担任教師でもある飯田先生だ。
この歴史研究では、教科書を読むだけでなんとかできる内容ではない。
通常の日本史では習わないようなことを学ぶまさに歴史研究である。
中間や期末のテストは存在していないが、定期的に小テストが行われ、
そのテスト結果が、成績に直接関係してくる。
先生曰く、授業は適当に受けても、なんならゲームしててもいい。
ただ小テストの成績が悪いものは授業態度が良くても成績はやらないらしい。
「では、この文献に関しての資料を配りますが、人数分は用意していないので隣の人と見てください。机をくっつけて構いません。」と先生が言うと、
ガガガガーと音を立てながら彼女がこちらに机をつけてきた。
先生は毎回文献の資料やらプリントやらを人数分は印刷してこない。毎週だ。
紙がもったいないし、どうせ君達は家に持って帰っても捨てるだけだろう。
と勝手な解釈をされ、毎度半分しか印刷をしてこない。
これで意地悪さや悪意があるわけでなく、本音でそう思っているのが
この先生のたちが悪いところだ。でもまあ、事実僕は教科書すら
持ち帰らないから、プリントをもらったとてすぐにゴミ箱に行くだろう。
しかし、そのおかげで毎週僕は彼女と机を一つにして歴史を学ぶ事ができる。
「渡辺君ってさ、寡黙らしいね?」と彼女がヒソヒソと声をかけてきた。
寡黙なのではない、ただの人見知りなだけだ。
「そうなの?寡黙ってタイプじゃないけどな」と言うと、
「ね。わたしとたくさん話してくれるもんね。」
「それは北川さんが話しかけてくるからでしょ?」
「なんかね、クラスの子に渡辺くんの話したらさ、みんなあの寡黙な人でしょっていうの。そんなことないのにね。」
「僕はただの人見知りなだけだよ。仲いい人じゃないとあんまり話しないからさ。」
「ふーん。じゃあわたしはその仲いい人ってことだね。」
こちらを見てニンマリとしている彼女を恥ずかしさのあまり直視することができなかった。
「まあ、そーだね。僕は仲いい人だと勝手に思ってるけど。」
「あら、意外と素直でかわいいね。」
かわいい⋯か。それは多分僕なんかは恋愛対象外だからこそ出てくる言葉なんだろうな。
「それよりさ、渡辺くんってメッセージアプリって使ってる?」
ポケットからスマホを取り出し顔の横に掲げてニコニコしている。
教壇では飯田先生が配られた文献の資料を懸命に解説をしていた。
「使ってるよ。」
「じゃあさ、授業終わったら交換しようよ。渡辺くんいじるの楽しいし。」
動機にはいささか納得いかないが、これほど嬉しい提案はない。
クラスの男子全員とはアカウントを登録し合っているが、残念ながら女子のアカウントは家族を除けば誰一人登録されていない。
「もちろん。いじるのは時々にしてほしいけどね。」
多分赤くなっているだろう顔を隠すように黒板を見て彼女からの提案をうけいれた。
こうゆう所は素直にも可愛くもなれない。照れてしまうんだしょうがないだろ。
その後も飯田先生による歴史解説が延々続いたが、授業は全く話が入ってこなかった。
清風高校の二年生は毎週木曜日の四時間目は選択授業を受けることになっている。
個人個人が好きな科目を選択し、その授業を受けるため、学年やクラスの垣根なく
受けることができる唯一の授業だ。
ゲームで知ってる偉人の名前や歴史的事件などに詳しかったので、いつの間にか得意な科目となっていた歴史。
当然選択授業においても、楽をしたいという気持ちが強かったので、歴史研究を選択することにした。
確かに僕は彼女が好きだ。大好きだ。でも、それだけなんだ。
付き合いたいなんておこがましいことは考えていない。
毎週木曜日に隣で授業を受け、たまに他愛のない話をして⋯。
それだけで十分だった。今日がその木曜日だ。内心ウキウキしてるものの
それを顔に出さずにいる。
「まあ、もし付き合ったらちゃんと報告するよ。」と期待のできない約束をする。
「絶対しないだろ。」と釘を差されたところで、キーンコーンカーンコーンと
チャイムが時を知らせてくれた。一弥はじゃーな〜とカツカツ音を立てながら
自分の席へと戻っていった。
一時間目から三時間目、偏差値の低いこの高校の授業は驚くほど簡単だ。
なんせ、教科書だけ読んでいれば授業にはついていけるほどのものだからだ。
むしろ、眠気と戦うほうが大変だ。
なんとか眠気を成敗し、待ちに待った四時間目が来た。
普段授業を行う二年G組は三階にあるが、選択授業は四階まで登る必要がある。
ただ彼女に会えるのならそんなことも苦にはならなかった。
僕の席はクラスと変わらず、廊下側の一番うしろにある。
隣の席はまだ誰もいなかった。
しばらくスマホをいじって時間を潰していると。
「おつかれ~」と肩をバシッとたたかれ、ビクッとしながら振り返ると
そこに彼女はいた。
「ビックリしたでしょ」と口を押さえながらニタニタしている。
北川理沙だ。僕の好きな人。
身長が小さく、ちょこちょこ動き回ることから、みんなからはちょこと呼ばれているナチュラルな茶色のボブヘアー、クリクリとした目、まるで小動物を彷彿とさせる見た目からは想像できないくらい常にエネルギッシュに大きな声で話す。
彼女は誰とでも気さくに話す。それは僕も例外ではないから彼女にとっては
僕に話しかけることなどただの日常であろう。
そこに僕がいたからただ話しかけた。
でも僕は違う。そもそも女子と話す機会が少ない僕。
そんな僕に対してあふれんばかりの笑顔で話しかけてくれる彼女に対して
僕は惚れてしまった。
「急に叩かないでよ、ビックリしたよ。」
「そんなこと言って、私が中々来なくて寂しかったんじゃないのー?」
冗談を言っているのであろうが、図星だ。
「いやいや、普通に授業始まるの待ってるだけだよ。」
「はいはい、そーゆーことにしといてあげるよ」
そこでチャイムが鳴り始めたと同時に先生が教室に入ってきた。
歳は六十近くだろうか?白髪交じりの、いや、割合的には黒毛混じりの白髪といったほうがいいだろう。ぴっちりと七三に別れた髪の毛。大きな黒縁眼鏡をかけ、
ちょび髭を生やしている。僕の担任教師でもある飯田先生だ。
この歴史研究では、教科書を読むだけでなんとかできる内容ではない。
通常の日本史では習わないようなことを学ぶまさに歴史研究である。
中間や期末のテストは存在していないが、定期的に小テストが行われ、
そのテスト結果が、成績に直接関係してくる。
先生曰く、授業は適当に受けても、なんならゲームしててもいい。
ただ小テストの成績が悪いものは授業態度が良くても成績はやらないらしい。
「では、この文献に関しての資料を配りますが、人数分は用意していないので隣の人と見てください。机をくっつけて構いません。」と先生が言うと、
ガガガガーと音を立てながら彼女がこちらに机をつけてきた。
先生は毎回文献の資料やらプリントやらを人数分は印刷してこない。毎週だ。
紙がもったいないし、どうせ君達は家に持って帰っても捨てるだけだろう。
と勝手な解釈をされ、毎度半分しか印刷をしてこない。
これで意地悪さや悪意があるわけでなく、本音でそう思っているのが
この先生のたちが悪いところだ。でもまあ、事実僕は教科書すら
持ち帰らないから、プリントをもらったとてすぐにゴミ箱に行くだろう。
しかし、そのおかげで毎週僕は彼女と机を一つにして歴史を学ぶ事ができる。
「渡辺君ってさ、寡黙らしいね?」と彼女がヒソヒソと声をかけてきた。
寡黙なのではない、ただの人見知りなだけだ。
「そうなの?寡黙ってタイプじゃないけどな」と言うと、
「ね。わたしとたくさん話してくれるもんね。」
「それは北川さんが話しかけてくるからでしょ?」
「なんかね、クラスの子に渡辺くんの話したらさ、みんなあの寡黙な人でしょっていうの。そんなことないのにね。」
「僕はただの人見知りなだけだよ。仲いい人じゃないとあんまり話しないからさ。」
「ふーん。じゃあわたしはその仲いい人ってことだね。」
こちらを見てニンマリとしている彼女を恥ずかしさのあまり直視することができなかった。
「まあ、そーだね。僕は仲いい人だと勝手に思ってるけど。」
「あら、意外と素直でかわいいね。」
かわいい⋯か。それは多分僕なんかは恋愛対象外だからこそ出てくる言葉なんだろうな。
「それよりさ、渡辺くんってメッセージアプリって使ってる?」
ポケットからスマホを取り出し顔の横に掲げてニコニコしている。
教壇では飯田先生が配られた文献の資料を懸命に解説をしていた。
「使ってるよ。」
「じゃあさ、授業終わったら交換しようよ。渡辺くんいじるの楽しいし。」
動機にはいささか納得いかないが、これほど嬉しい提案はない。
クラスの男子全員とはアカウントを登録し合っているが、残念ながら女子のアカウントは家族を除けば誰一人登録されていない。
「もちろん。いじるのは時々にしてほしいけどね。」
多分赤くなっているだろう顔を隠すように黒板を見て彼女からの提案をうけいれた。
こうゆう所は素直にも可愛くもなれない。照れてしまうんだしょうがないだろ。
その後も飯田先生による歴史解説が延々続いたが、授業は全く話が入ってこなかった。
