不器用な彼女

彼女がこの世を去り、丸一年が経つ今日、僕は彼女の家に来ていた。
理沙の母親にお葬式にこれなかった分一周忌は必ず来てねと言われていた。
もちろん言われなくとも参加する予定だった。
福岡旅行から帰った後、
理沙の母親に借りたクラゲのぬいぐるみは仏壇に戻し、彼女の残したノートの
最後の□にレ点を書き込んだ。
僕だけが知っている。彼女はもうこの世にいない。福岡での不思議体験をした
僕だからわかる。彼女はもうこの世に未練はないのだろう。
理沙の家に行くと、両親と親戚数人、一弥と細川さんもそこにいた。
一通りの法要を済ませると、親戚の人たちは帰っていき、家には僕と理沙の両親、
一弥と細川さんだけがのこった。
「そろそろ俺等も帰りますね」
一弥が僕と細川さんの腕を掴んで両親に頭を下げる。
「ありがとうね。またいつでも遊びに来てね」
ニコニコした笑顔は理沙の笑顔そのものだ。
「すいません。これ、仏壇に置いてもいいですか?」カバンから手紙をとりだし、
理沙の母親に預けた。
「理沙さんが手紙を書いてくれていたので、僕も書きました。お返しです」
「じゃあ仏壇に置いておくわ。きっと読んでくれるわよ」
「ありがとうございます。では、お邪魔しました」
三人で揃って家を後にし、駅まで歩いた。
「なんか、変わったね」
細川さんが僕に向かって言ってきた。
「いいじゃん。なんか前より元気になってるよ」
一弥がすかさずちゃちゃを入れてきた。
福岡に行ったことで僕のモヤモヤは全てなくなったようだ。
理沙の分まで人生を謳歌する。天国でたくさん自慢をしてやるんだ。
「うん。もう大丈夫」

拝啓 北川理沙さんへ
残念でした。僕は全て知ってしまいましたよ。
君はヒントを出しすぎていたね。
おかげで、僕は前を向いて歩いていけそうです。
僕の気持ちに気づいていたんだね?
もちろん僕は君の気持ちに気づいてたよ。自信なかったけど⋯
僕は君が大好きだ。
生まれ変わっても、あの世であろうとも、僕は必ず君を探し出して
きちんと告白をするよ。
たくさんの感謝を伝えるよ。
あと、説教もいくつかしないとだね。
だから待っていてください。
僕は必ずあなたのところへいきます。

渡辺裕太