不器用な彼女

僕の通う清風高校は東京の繁華街からすこしずれた場所に位置し、
頭の悪い高校という不名誉な印象が結びついている場所だ。
 僕自身の頭は良くも悪くもないいわゆる平均的だったが、
受験勉強はめんどくさいという理由で地元で一番頭の悪い清風高校を選んだ。
 おかげで受験勉強など一切せずに合格を勝ち取ることができた。
 うちの学校はA組からH組まであり、各クラス30人程で構成されるそこそこの大所帯高校だが、何故か男女比は十対二十と女子のほうが多い。
 そのせいか男子生徒たちにはグループみたいなものは存在せず、
 男子同士では硬い結束で結ばれていた。
 僕自身は女性陣と話すことに耐性がないので、基本的には男友達とつるむことが多かった。
 高校に入学した時に父親が買ってくれたマウンテンバイクに跨がり、軽快にペダルをこいでいく。毎日往復2時間の登校はしんどいが、
 このマウンテンバイクがある程度僕の負担を軽減してくれていた。
 きっと高かったんだろうなと思い、自分なりにはかなり大事に扱っている。
 家を出てしばらく住宅街を走り、国道を真横に渡ると、左右には田園風景が
広がる。東京は都会だと言うけれど、もちろん田舎もあるし田んぼもあるのだ。
 田んぼ道をしばらく走りると、住宅街に入り込み、そこを抜けるといよいよ学校の近くまでくることができる。
 気温が高いと汗だくになるが、今日は過ごしやすい気候なので、額にうっすらと汗をかく程度で済んだ。
 駐輪場に自転車を置き、昇降口で上履きに履き替える。
 朝のホームルームまでまだ時間があるので、昇降口には他の生徒はあまりいなかった。
 うちの学校は正面から見てロの字のように校舎がたっており、その校舎の奥、左側に体育館やプール、武道場などがあり、右側には部室が並んでいる。
 一階校舎は主に職員室や保健室などがあり、二階は三年生、三階は二年生、四階は一年生のクラスがある。僕は二年G組なので三階にあるので、毎朝すこし息があがる。
 二年G組の教室にはいると、すでに半分くらいの生徒が来ていた。
「おはよ〜なべ」廊下側の一番うしろ、
 自分の席に着くとカツカツとローファーを擦る音を立てながら近づいてくる。
 切れ長の目、薄い唇、根元から毛先まで均一で綺麗な金色の髪の毛をなびかせながら彼が近づいてくる。岡田一弥だ。彼とは幼稚園からのいわゆる腐れ縁である。
 昔から運動が得意でよく女の子にもてはやされていた。
 中学まではあまりかかわることはなかったが、高校に進学した時に唯一の同じ中学卒業生ということもあり、仲良くなった。
 中学までに培ったコミュニケーション能力を駆使し、すぐにクラスの中心となった彼と、同じ中学で仲がいいというありがたい箔のおかげで、
 僕の周りにも自然と友人が増えた。
「彼女できたか?」
 一弥は毎朝僕にこの質問をしてくるが、答えは毎日一緒だ。
「できてないよ。」
「もうすぐ夏が到来だぜ?そろそろ焦んないとヤバくない?」
「君と違って僕はもてないし、君だって彼女いないよね?」
「モテるのって大変なのよ?俺の知らないところで彼女がハブられてたりさ、
意地悪されてたりするわけ。」
 そう。彼は今まで何度か異性との交際経験があるがそのたびに交際相手が何らかの被害を受けてしまう。
 大方一弥のことが好きな女子からの嫌がらせなのだが、そんな嫌がらせに苦しむ彼女の姿を何度も見てきている為か、彼は女子からの告白をすべて断っているそうだ。
「まあ、君の過去は知ってるから同情はするけど、
僕に彼女ができたら君とは遊べなくなるよ?ただでさえバイトで忙しいんだ。」
「それはだめだ。なべ彼女つくるな。」
「作りたくても作れないから安心しなよ。」鼻を無らしながら頬杖をつく。
「でもなべくんさぁ」急に甘ったるい声を出し始めた。
「好きな人いるんでしょー?その人とはどーなの?」と僕の顔を覗き込んでくる。
 以前遊んだ際につい口を滑らせてしまい、同じ学年に好きな人がいることを
自ら暴露してしまっていたのである。
「いや、その話は忘れてよ」
「進展なしかー。」とわざとらしく天を仰ぎ僕の肩をポンポンと叩いてくる。
僕には好きな人がいる。