線香花火みたいな恋だった。

次の日の朝、
いつも通りドアを開けると、隣のドアもほぼ同じタイミングで開いた。

「おはよ」
「おはよ」
いつものやり取り。

でも、
「もう大丈夫なのか」
と聞くと、
「うん、たぶん」
と答えてから、

「昨日、ありがと」
少しだけ照れたみたいに言った。

その一言が、やけに残った。
理由はよく分からない。

ただ、いつもと同じはずの関係が、
ほんの少しだけ違って見えた気がした。


それがどれだけ特別なことなのか、
そのときの俺は、まだちゃんと分かっていなかった。

ただ、隣にいるのが当たり前で、
それが少しだけ楽しくて、
それ以上のことを考える必要なんてないと思っていた。

だから、その言葉を聞いたときも、最初はあまり実感がなかった。