夜明けみたいな恋だった

 ──受け取り下手ねえ。

 私は幼い頃から、母にそう評されてきた。

 ひとつ例をあげると、こんな感じ──

 親戚の集まりに、伯母さんのひとりがベーゴマとヘアゴムを持ってきた。
 それもどっさりと。
 デザインや色だってとりどり。

 母は四人姉妹だったから、私にはいとこがたくさんいた。
 伯母さんが布バッグからザザアァっとそれらを出した瞬間、いとこたちからどよめきが起こった。

「何それ?」
「ほしい!」

 伯母さんがベーゴマとヘアゴムとをより分け、ふたつの山にするのを、いとこたちはワクワクしながら見守った。

 そんな中で、私だけはつまらなそうな顔を作って、横目で確認する程度に留めていた。
 内心では気になって気になって仕方なかったくせに。

「さあ、ケンカしないで仲よく分けなさいね」

 伯母さんの号令で、私ひとりを除いて、一斉に動き出す。
 男の子チームはベーゴマを、女の子チームはヘアゴムを取り囲んだ。

「ひとり何個?」
「数えるから待ってろ」
「どうやって分ける? じゃんけん?」
「えーっ、私このピンクのがほしい!」

(私もそれがほしい‼︎)

 でも、口には出さないでいた。
 ピンクのヘアゴムを視界の端っこにとらえたまま、興味のないフリを続けた。

 大人たちは私の様子を観察していた。
 けれど、何も言わない。

「愛莉ちゃんもおいでよ」

 従姉が私のことを呼んでくれた。
 気にかけてもらえてうれしかった。

 それなのに……

「私はいい。いらない」

 どうしてそんな心にもないセリフを返してしまったのか。

 こどもならこういうのが好きだろう、という伯母さんの目論み通りに、まんまと大よろこびしてしまうのが恥ずかしかった?
 それとも、『ほしい!』とガっつくのは、みっともないとでも思った?
 あるいは、ピンクのヘアゴムを手に入れられなかったときに悔しい思いをしたくなくて自衛した?

 あの当時の気持ちは、自分でも説明できない。
 理由は何であれ、私にはどうしても素直になることができなかった。

 従姉妹たちは何度も私の名前を呼んでくれた。
 が、一向に動かない私に、とうとう最年少の従妹が痺れを切らした。

「『いらない』って言ってるんだから、私たちで分けようよ」

 従姉たちは困り顔。

 そこで母がついに口を開くのだった。

「愛莉のことはもういいわ。放っておいて。姉さん、ごめんなさいね」

 ピンクのヘアゴムは早々に従妹のものとなった。

 当然の帰着だ。
 にも拘わらず、哀しかった。

 帰り道、車を運転しながら母はブチブチと言った。

「『ありがとう』って、素直にもらえばいいものを。可愛げのない子ね」
「可愛いくなくていいもん」
「本当に愛莉は受け取り下手ね」

 母は大きくため息を吐いた──