黒瀬部長は部下を溺愛したい



 翌日。

(……うーん、頭が痛い……)

 目覚めた瞬間、軽い二日酔いと共に、ふとよぎる昨晩の帰り道。

(そういえば、黒瀬部長が送ってくれたんだっけ……)

 ベンチに座っていたことまではなんとなく覚えている。でも……その後、どうなったっけ……?

(……いや、でもまぁ、特に何もなかった……はず)

 そんなモヤモヤした気持ちを引きずったまま、会社へ。昼休み、給湯室でばったり慧と遭遇。

「白石、体調どうだ?」
「えっ、あっ……えっと、はい! 元気です! あの、昨日は……すみませんでした……」
「謝らなくていい。いいもん見れたし」
「……え、いいもん?!」
「うん。初めて聞いた」
「……え? な、なにか言ってました……私?」
「ふっ……」

 その笑い方が、明らかに何かを知っている余裕のある男のそれで……莉央の心臓が、バクンッと跳ねる。

「『最初は怖かったけど』って」
「!!?」
「『すっごく優しくて、ちゃんと人を見てて……』って」
「わああああ!! ちょ、ちょっと待ってくださいそれ以上は!!」

 莉央は耳まで真っ赤。動揺しながらお茶を入れようとして、スプーンを落とす。

「危ない」

 さっと拾ってくれる慧。その指先が、莉央の手に軽く触れる。

「……なぁ、白石」
「は、はいっ……!」

 緊張の面持ちをした莉央に慧は……。

「………いや、なんでもない。次のプレゼン、頑張ろうな」
「はい! 頑張ります!」

To be continued