
時間はすぎ、シャワーを済ませた後、気まずさ全開の空気でベッドに潜り込むふたり。距離感、ギリギリ。むしろ一歩間違えば………触れる。莉央は背を向けて眠ろうと必死。
(ちょっと待って、心臓……壊れるんだけど……)
そして……。
「……白石」
「っ……」
反応してしまった。
「な、な、なんでしょう?」
「そう怯えるな」
「すみません……」
「寝れそうか?」
「……はい」
(たぶん……なんとか)
背後で人の動く気配がして振り向くと、すぐそばまで慧が近づいていた。
「えっ……」
「やっぱり普通に寝ていいか? 端だと落ち着かない」
「あ、はい。私のことは気にせず使ってください」
「………そうか。なら………」
突然、腰に回った慧の腕……と思ったらそのままぐいっと引き寄せられる。
「わっ……く、黒瀬部長?」
「人の気配があるのに、いないような態度とられたら寝にくい」
「えぇ~……なら、どうしましょう? やっぱり私ソファに……」
身体を起こそうとした莉央は慧の腕によってベッドに沈み込む。
「それは却下だ。大人しくここで寝ろ」
「え、でも……」
「頼むからじっとして寝てくれ……」
「……はい」
後ろから感じる慧の規則正しい吐息。後頭部あたりで揺れる空気がやっぱり莉央を落ち着かなくさせる。
(部長、もう寝た……かな)
こっそりと盗み見た慧の寝顔は、寝てても綺麗で整っていた。
(イケメンってなにしてもイケメンなのね。っていうか……年上だけど寝てると幼く見える)
意外な一面を知った莉央はなんとなく胸が温かくなって微笑んだ。
「なに笑ってるんだ?」
「ひっ!?」
聞こえないはずの声が聞こえて莉央は飛び退いた。
「お、起きてたんですか」
「隣でモゾモゾされたら寝れない」
「すみません……」
「明日、早いんだからそろそろ寝ろ」
「ですね……」
(って、寝れるかな……)
慧はまたすっ、と瞼を閉じてしまった。数分ほど寝る努力をしてみた莉央だが、目は冴え眠気がこない。
(寝れない……)
その気配を感じ取った慧は後ろから莉央をぎゅっと抱き締めた。
(へっ!? 部長、寝ぼけてる?)
「早く寝ろ」
「え、あ、あの……」
「いいから黙って目瞑ってろ。そのうち眠くなる」
「………は、い」
言われるがままに目を閉じると、背中から伝わる慧の温度と鼓動が耳に届いた。エースと言われるだけあって仕事はできるし、たくさんの部下からは慕われていて。圧倒的なカリスマ性とこの容姿で女性からは引く手あまたなのも頷ける。そんな近寄りがたい人が、隣でとても穏やかな寝息をたてている。
(なんか……部長の心臓の音、落ち着くかも……)
莉央は自分でも気付かないうちに穏やかな寝息をたててようやく眠りについた。
To be continued

