
「ん……やぁ、ほんとに、これ……バレちゃう……」
「……しーっ。声、我慢な」
そう囁く慧の声が、信じられないくらい優しくて甘い。
そのせいで莉央の理性なんて、どこかへ溶けて消えてしまう。
そしてまた、深くて長いキス。
「んんっ! ぁ、慧さん……」
「……やばいな……莉央とのキス、クセになる……」
「っ………そんなこと言わないでください……」
「だって、気付いてる?」
「何がですか」
「さっきから俺の足に擦りつけてんの」
「えっ!?」
なにが、だなんて聞けなかった。
無意識とは言え、夢中になっていたのは事実だから。
「すみませんっ……!」
「いいから」
離れようとする莉央を腕の中に閉じ込める。
「ほら、キスして……」
「ん、もう……っ、ん」
離れたくない気持ちと、バレちゃいそうな緊張感で焦る気持ちがせめぎ合う。
それでもやっぱりキスしていたい。
しばらく夢中でお互いの唇を奪い合っていると……。
ガチャッ、バタン!
「どうやら高木が出て行ったみたいだな」
「ですね」
そっと押し入れをあけると、部屋は真っ暗で人の気配はなかった。
「おいで、莉央」
「ありがとうございます」
ようやく胸いっぱいに空気が吸える。
深呼吸をしてもやっぱりまだ莉央の頬は赤い。
「顔、まだ赤いな」
「慧さんのせいです」
「ごめん。抑えきれなくて……」
慧は少しだけ眉を下げ、困ったように笑った。
「あの、私少し外歩いてきます」
「俺もちょうど同じこと考えてた」
ホテルのサンダルに履き替え、静かに部屋を抜け出す。
夜の海沿いの小道。
風が気持ちよくて、肌寒いくらいなのに莉央の頬は、まだぽぉっと赤かった。
「……寒くない?」
「はい、大丈夫です……でも……」
「……ん?」
「思い出すたびに、恥ずかしいです……」
莉央の言葉に、慧はふっと笑ってポケットから手を出す。
「じゃあ……手」
その手が莉央の手を、やわらかく包み込む。
繋がれた手がじんわりと温かくて、莉央のドキドキはまた再燃する。
「……これくらいなら平気だろ?」
「…………」
慧の一挙手一投足に莉央は翻弄されっぱなし。
当の本人は気付いていないよう。
(何されてもドキドキしちゃう……なんて言えないよ)
ふわりと頬を撫でる風が心地よい。
ふたりで夜風に吹かれながら歩くその道はなんてことない散歩道だけど。
今まででいちばん、心が甘く溶けそうな時間だった。
To be continued

