黒瀬部長は部下を溺愛したい



 腰に回された慧の腕に莉央の頬が熱くなった。

「……」
「…………」

 薄暗い中、お互いの呼吸が耳に届く。
 バレるのを恐れて莉央は微動だにしないが、内心はかなりパニックだった。

(こ、この体勢きつい……慧さんの太ももの上だし、動いたらバレちゃうかもだし……)

 うまく呼吸ができないくらいに緊張している莉央に。

「……そんな顔されたら余計キスしたくなるな」
「だ、だめですよ……バレちゃいます」
「莉央が可愛いせい」
「そ、んな……だって慧さんが……」
「俺だって……莉央のせいで困ってる」
「な、なにがですか?」
「だって、ほら……」

 そう言って慧の視線が下に落ちる。
 よく見れば胸を押し当てる形で密着していた。

「す、す、すみませんっ……すぐ離れますから」
「だめ」
「でもっ……」
「しっ……まだ高木がいる」
「………」

 外にいる気配がする。
 鼻先が触れ合うほどの距離に莉央の頬が少し熱くなるのを感じて、慧がふっと笑う。

「な、なんですか」
「いや、可愛いなって」
「っ!!??」
「……キスしたい」
「……ダメ、ですよ。バレちゃいます」
「……我慢か?」

 そう言いながら、慧は額をそっとくっつけてきた。
 甘くて苦しい時間。
 押し入れの外では、高木がシャワーを浴びてる音がする。

「慧、さん……今なら出れるんじゃ……」
「だめ。急に高木が出てきたら終わりだし」
「たしかに……」

 だけど、この状態のままはきつい、色々と……。
 密着する体。
 鼻先に感じる呼吸。
 触れ合う体温。
 意識しない方が難しい。

「莉央……」
「はい?」
「キス……したい」
「………だ……だめですよ」

 って言いながら強くは言えない。
 耳元で囁かれたその声が、やけに低く掠れていて……。
 莉央の胸が、きゅうっと熱くなる。
 慧の指が、莉央の頬にそっと触れた。

「莉央」
「……っ」
「……触れるだけ、な?」

 そっと、そっと、唇が重なる。
 ほんの少し、かすかに、息を確かめ合うような甘いキス。
 だけど、それだけじゃ足りなかった。

「……ん、ふ……っ」
「……ごめん。やっぱ、もう少しだけ」

 そう言って繰り返されるキスは、最初よりも熱く深くて……。
 舌先が触れるたび、胸の奥がじわっと溶ける。
 押し入れという密室で誰かがすぐそこにいるという緊張感。
 それなのに、慧の手はそっと莉央の腰に回り、背を引き寄せて唇を塞ぎ続ける。

「っ……け、慧さん……ダメ、ほんとに……っ」
「……莉央が可愛すぎて……止まんない……」

 ふたりの体温が高まっていく。
 慧の膝が跨っていた部分に当たって莉央の腰が揺れる。

「ん……やぁ、ほんとに、これ……バレちゃう……」
「……しーっ。声、我慢な」

To be continued