黒瀬部長は部下を溺愛したい



 翌朝。
 莉央は、目を覚ましたベッドの上で頭を抱えた。

「うううぅ……なんか……最後の記憶が……やばいことに……」

 すると、慧がコーヒー片手に入ってきた。

「起きたか? ほら、二日酔いすると思って」
「……ありがとうございます……昨日はほんとにすみませんでした」

 莉央が申し訳なさそうに頭を下げると、慧はふっと笑った。

「体調はどうだ?」
「あ、はい。大丈夫、です」
「そうか……なら良いが……莉央」
「はい?」
「今後お酒飲むときは……俺が一緒のときにして」
「え……?」
「あんなふうに潰れて、無防備で……俺じゃなかったら危険すぎる」
「そ、そんなに酷かった、ですか……すみません」

 しゅん、と落ち込む莉央。

「あ~……そうじゃなくてだな」

 ギシッと慧がベッドの縁に腰かける。

「酔った莉央が可愛すぎたんだ」
「えっ……」

 正直、昨日の記憶は曖昧で……。
 莉央は自分がなにを言ったか正確には覚えていなかった。

「あ、の……私、なにかご迷惑かけちゃいましたか……?」
「……いいや」
「そうですか」
「でも……」

 ホッとしたのも束の間。

「可愛い彼女に『私って魅力ないですか?』なんて言われるとは思ってもなかったよ」
「へっ!!??」
「覚えてない?」
「うっ……す、すみません……」

 どんどん小声になって縮こまる莉央。
 自分の醜態に頭を抱えて俯いてしまった。

(恥ずかしいいいいい! 穴があったら入りたい……)

 布団に隠れてしまった莉央を慧は丸ごと抱き締める。

「顔、見せて……莉央」
「っ……恥ずかしいです」
「ふっ……じゃ、手だけでも繋いで」
「…………」

 ゴソゴソっと布団から手だけが出てくる。
 慧が握るとぎゅっと握り返ってきた。

「莉央……まだ?」
「待って、くださいっ」

 莉央の手を握って、時折優しく撫でたりする。
 重なった手のひらから、彼女が緊張しているのが伝わってくる。

「莉〜央」
「うぅぅ……」

 細くてしなやかな莉央の指を絡め取る。

「っ!?」

 表情は見えないけど、驚いてることくらいは容易に想像できる。

「莉央……早くしないと……」
「……???」

 ちゅ…………。

「!?」

 軽く触れるキス……だと思ったら。

 ペロッ…………。

「慧さんっ!!??」

 手のひらに唇じゃない感触。
 温かくてしっとりとしたそれに、莉央は布団から飛び出した。

「やっと出てきた」
「い、今のって……」
「なんだと思う?」
「あ、うっ……その……」

 ニヤニヤと笑う慧は完全に楽しんでいる。

「慧さん!」
「くくっ……これくらいは昨日のご褒美として許してくれ」

 赤い顔の莉央をそっと引き寄せて、慧は満足そうにキスを重ねた。

To be continued