黒瀬部長は部下を溺愛したい



 会社の飲み会で、二次会が解散になった頃。
 帰ろうとした慧の腕を引っ張ったのは……酔ってふにゃふにゃの莉央だった。

「えへ……慧さんっ……次はバー……いきましょ〜ぉ?」
「……莉央、もう飲みすぎだ。今日はもう帰ろ……」
「んー、まだいけます……!」

 そうして向かったバーに到着して10分後。
 莉央はソファ席でぐったり、完全に潰れていた。

「……はぁ、やっぱりこうなったか」

 困った顔をしながらも、慧は莉央を優しく抱き上げる。

「……ったく、酔っても可愛いとかずるいだろ」

 仕方なく近くのホテルの一室にチェックインし、莉央をベッドに寝かせて、額に冷えたタオルを置いた。
 1時間ほどして、莉央がゆっくりと目を覚ます。

「……ん、ここ……どこ……」
「起きたか?」

 ベッドの傍に腰をかけた慧が、静かに言う。
 莉央はぼんやりした顔のまま、ふと慧を見上げた。

「……私、なにか、やらかしました……?」
「いや、飲みすぎて潰れただけ。送ろうと思ったけど、無理そうだったからここに」
「ここ……?」

 ぐるりとあたりを見渡して、そこがホテルだってことに気付く。

「!!?? すみません! ほんと……すみません……」

 顔を覆いながら、うつむく莉央。
 
「謝るな。明日は休みだしゆっくり休んでから帰ろう」
「………はい」

 どんな時でも優しい慧に莉緒の目がじんわりと熱くなる。

(慧さん……普通だなぁ。私だけかな……こんなに意識してるの……)

 ぽつりと湧き出た不安が莉央の口から溢れ出す。

「慧さん……」
「どうした?」
「…………やっぱり、私って……魅力ない、ですか?」
「……は?」

 慧は鳩が豆鉄砲を食ったような目で莉央を見た。

「それは……どういうことだ?」
「だって慧さん……全然その気配ないし。私が酔ってても、手ぇ出さないし。優しいけど、なんか、私って……女として、全然だめ……ですか?」

 慧の目が、すっと細くなった。

「……莉央、それ、酔って言ってる?」
「……よく、わかんない、ですけど……ちょっとだけ、本音」

 一瞬の沈黙。
 次の瞬間、慧はそっと莉央の頬をつかんで、顔を近づけた。

「言わなかったか? 俺、酔ってる女には手ぇ出さないって」
「……はい」
「でも、それが魅力ないっていう話になるなら……」

 吐息が触れる距離で、目を伏せずに言った。

「責任取ってもらうけど、いいの?」
「え……ン…」

 ふわりと柔らかく、どこまでも優しいキス。

「ふっ……んぁ……」
 
 優しかったキスに熱がこもって、どんどん深くなる。

「んんっ……ん、ぁ……」
「せっかく我慢してたのに……」
「ん、はっ……あぁ……ん、慧さんっ……」
「お前が可愛すぎて……」
「ん……ぇ……?」
「やっぱり初めては、お互い覚えておきたいだろ?」
 
 耳元で囁かれる低音。

「それなのに『魅力ないですか?』なんて聞かれたら、正気じゃいられなくなるだろ……」
「あ……慧さ、んっ……」
 
 何度も落ちてくる、やわらかいキス。

「頼むから、あんま煽んないでくれ……大事にしたいんだ」
「慧さん……」

 甘やかすように、やさしく撫でられて、莉央の心はとろり、とろりと溶けていった。

To be continued