黒瀬部長は部下を溺愛したい


「……黒瀬部長……」
「……今言うの、ずるいかなって思ったけど、黙ってられなかった」

 ふと慧が莉央を見つめる。ふたりの距離が急に近くなる。

「……言わないつもりだった。立場もあるし、距離感も考えて、ずっと抑えてた」
「…………」
「けど……今日、2人きりで仕事して、こんなに自然に隣にいられるのに、何も言えないまま終わるのは嫌だと思ったんだ」

 莉央は慧の気持ちをただ黙って聞いた。

「俺は、白石が好きだよ。仕事も尊敬してるし、人としても惹かれてる……もし、少しでも俺を見てくれてるなら、付き合ってほしい」
「……っ」
「答えは、今じゃなくてもいい」

 視線を逸らした慧は、最後の一口を飲み終えた。

「黒瀬部長……今、言ってもいいですか?」
「……ああ」

 目を伏せて、小さく震える唇。でも次の瞬間、勇気を出してふわっと微笑む莉央。

「……私も、ずっと黒瀬部長のことが好きでした」

 その言葉に慧は少しだけ目を丸くして、それからふっと笑う。

「……本当か? 無理してない?」
「してません……私も、好きです。黒瀬部長のことが……ずっと前から……」
「ありがとう……莉央」
「っ……!」

 突然の名前呼び。それは低くて優しい声。目が合うと、またバクンと心臓が跳ねた。

「はぁ……ちょっと俺、無理かも」
「む、無理って……何がでしょう」
「……何もしない自信がない……」
「っ……!」

 沈黙のあと、慧が静かに続けた。

「だから、もう寝よう。何もしない。ちゃんと我慢する」

 その『我慢』って言葉に、莉央の顔はますます真っ赤になった。

(……ほんと、ずるい……)

To be continued