次の日の朝。
桜田くんのほうをチラリとみると、机の中のラブレターに気づいたところだった。
彼は辺りに誰もいないことを確認し、そっとラブレターをかばんの中に入れていた。
読まないのか。そうよね、ここで読んだらね。デリカシーない男子にからかわれるだけだし。
それに、かばんの中に入れたということは、ゆっくりと家で読んでくれるということだ。
もしかしたら、喜んでくれる可能性もなくはない。
そう思うと、心拍数が上がる。
どうしよう……あれを、読まれるのか。
いまさらだけど恥ずかしい。でも、伝えたい気持ちだったから。
でも、恥ずかしい。返してほしい。いや、でも返してほしくない。
わたしは桜田くんがラブレターを読むところを想像して、ドキドキしたり、後悔したりと感情が忙しかった。
桜田くんはいつも通りのようだけど、もしかしたら内心では困ってる?
それともすごく喜んでくれてる?
あ、いや、まだ中を読んでないもんね。
花柄の明らかにラブレターだとわかる身なりをした手紙でも、それがラブレターとは限らない。
それが頭のいい桜田くんの見解なのかもしれないし。
そして次の日。
ラブレターを机の中に入れて二日が経過。
さすがに家でラブレターを読む時間はあったはずだ。
だけど、今日の桜田くんもいつも通り。
とはいえ、わたしと桜田くんは、しゃべるわけではない。
むしろ、まともにしゃべったこと……ないかも……。
会釈されたのと、あとは、掃除の時間に椅子を抑えてくれたの、あれ? 会話なくない?
話したこともない相手からのラブレターって、さすがに嫌だったかな。
なかったことにされてるからいつも通りとか?
あれこれ考えていると、暗い湖に落ちていきそうな感覚になる。
わたしの椅子だけ、底なし沼に浸かっているようだ。
さすがに迷惑だったかもしれない。
まともにしゃべったこともないクラスメイトからの告白は困るかもしれない。
それどころか怖いかもしれない。
ずぶずぶと後ろ向きという沼に沈んでいくわたし。
だけど、首まで浸かったところで名案が浮かぶ。
そんなに気になるなら、迷惑かどうかを本人に聞けばいい!
途端に沼が消え、教室の景色と辺りの喧騒が戻ってくる。
そうだ。本人に聞くのが一番だ!
その日の放課後。
わたしは掃除の時間を利用して、廊下を一人で歩いていた桜田くんを呼びとめる。
今がチャンスだと自分を急かし、思い切って口を開く。
「あの、聞きたいことがあるの、その、今日の放課後、教室に残ってくれないかな」
誰かが通る前に、誰かに聞かれる前に、と思いすぎたせいで、早口になってしまった。
声もめちゃめちゃ震えた。
ラブレターを書いた勇気はなんだったのか。
わたしが言い終えると、桜田くんはうなずいた。
「わかりました」
柔らかい口調でいうと、「掃除に戻りますね」とだけいって去っていった。
わたしは小さくなる桜田くんの背中をぼんやりと見つめる。
緊張で喉がカラカラなのに、なぜか心地良い気分。
だって、桜田くんと話せたんだもん!
初めて二人きりで話せた!
「わかりました」だって!
「掃除に戻りますね」だって!
いってきます、みたいな感じじゃない?
なんか新婚さんみたいじゃない?
うふふふふふふ……笑いが止まらない!
会話ができるってこんなに嬉しいんだね。
それに妄想中に桜田くんの声が思い出せなくて困ってたけど、これで声のサンプルが脳内にストックできた。
また妄想がはかどりそう!
あ、いや、その前に今日の放課後、ラブレター読んだか聞こう。
困っていないか聞いてみよう!
わたしは放課後になると、じっと生徒がいなくなるのを待った。
すると桜田くんが教室を出ていくのが見えた。
あれ? 帰っちゃう?
いや、でも何も言わずに帰っちゃう人じゃないよね?
だけどラブレターが迷惑だったら……。
わたしが不安になっていると、桜田くんが教室に戻ってくる。
よかった……! 話を聞いてくれる気はあるらしい。
桜田くんのほうをチラリとみると、机の中のラブレターに気づいたところだった。
彼は辺りに誰もいないことを確認し、そっとラブレターをかばんの中に入れていた。
読まないのか。そうよね、ここで読んだらね。デリカシーない男子にからかわれるだけだし。
それに、かばんの中に入れたということは、ゆっくりと家で読んでくれるということだ。
もしかしたら、喜んでくれる可能性もなくはない。
そう思うと、心拍数が上がる。
どうしよう……あれを、読まれるのか。
いまさらだけど恥ずかしい。でも、伝えたい気持ちだったから。
でも、恥ずかしい。返してほしい。いや、でも返してほしくない。
わたしは桜田くんがラブレターを読むところを想像して、ドキドキしたり、後悔したりと感情が忙しかった。
桜田くんはいつも通りのようだけど、もしかしたら内心では困ってる?
それともすごく喜んでくれてる?
あ、いや、まだ中を読んでないもんね。
花柄の明らかにラブレターだとわかる身なりをした手紙でも、それがラブレターとは限らない。
それが頭のいい桜田くんの見解なのかもしれないし。
そして次の日。
ラブレターを机の中に入れて二日が経過。
さすがに家でラブレターを読む時間はあったはずだ。
だけど、今日の桜田くんもいつも通り。
とはいえ、わたしと桜田くんは、しゃべるわけではない。
むしろ、まともにしゃべったこと……ないかも……。
会釈されたのと、あとは、掃除の時間に椅子を抑えてくれたの、あれ? 会話なくない?
話したこともない相手からのラブレターって、さすがに嫌だったかな。
なかったことにされてるからいつも通りとか?
あれこれ考えていると、暗い湖に落ちていきそうな感覚になる。
わたしの椅子だけ、底なし沼に浸かっているようだ。
さすがに迷惑だったかもしれない。
まともにしゃべったこともないクラスメイトからの告白は困るかもしれない。
それどころか怖いかもしれない。
ずぶずぶと後ろ向きという沼に沈んでいくわたし。
だけど、首まで浸かったところで名案が浮かぶ。
そんなに気になるなら、迷惑かどうかを本人に聞けばいい!
途端に沼が消え、教室の景色と辺りの喧騒が戻ってくる。
そうだ。本人に聞くのが一番だ!
その日の放課後。
わたしは掃除の時間を利用して、廊下を一人で歩いていた桜田くんを呼びとめる。
今がチャンスだと自分を急かし、思い切って口を開く。
「あの、聞きたいことがあるの、その、今日の放課後、教室に残ってくれないかな」
誰かが通る前に、誰かに聞かれる前に、と思いすぎたせいで、早口になってしまった。
声もめちゃめちゃ震えた。
ラブレターを書いた勇気はなんだったのか。
わたしが言い終えると、桜田くんはうなずいた。
「わかりました」
柔らかい口調でいうと、「掃除に戻りますね」とだけいって去っていった。
わたしは小さくなる桜田くんの背中をぼんやりと見つめる。
緊張で喉がカラカラなのに、なぜか心地良い気分。
だって、桜田くんと話せたんだもん!
初めて二人きりで話せた!
「わかりました」だって!
「掃除に戻りますね」だって!
いってきます、みたいな感じじゃない?
なんか新婚さんみたいじゃない?
うふふふふふふ……笑いが止まらない!
会話ができるってこんなに嬉しいんだね。
それに妄想中に桜田くんの声が思い出せなくて困ってたけど、これで声のサンプルが脳内にストックできた。
また妄想がはかどりそう!
あ、いや、その前に今日の放課後、ラブレター読んだか聞こう。
困っていないか聞いてみよう!
わたしは放課後になると、じっと生徒がいなくなるのを待った。
すると桜田くんが教室を出ていくのが見えた。
あれ? 帰っちゃう?
いや、でも何も言わずに帰っちゃう人じゃないよね?
だけどラブレターが迷惑だったら……。
わたしが不安になっていると、桜田くんが教室に戻ってくる。
よかった……! 話を聞いてくれる気はあるらしい。



