「どうやって渡せばいいの?」
次の日の朝。
わたしは学校に着くなり、そうつぶやいた。
少女漫画では、下駄箱に入れていた。
だけど……下駄箱って、誰にでも見えちゃうじゃん?
それじゃあ「桜田くんにラブレターを渡した女子がいる」ってバレバレでは?
わたしが一番避けたいのは、 他の男子に告白をからかわれることだ。
そして、告白したことが誰かにバレれば、たちまち噂になる。
そうしたら桜田くんに迷惑をかけてしまう。
わたしだって、冷やかされたいわけじゃない。
絶対に誰にもバレないようにしよう。
「桜田くんって、結構いいよねー」
給食の時間に、いつものグループの女子がそういった。
わたしは驚いて彼女を見た。
テニス部のリッチーだかミッチーがいいとかいってたのに?
よりにもよってわたしの桜田くんなの? いや、わたしのじゃないけど。
「え、桜田くん? なんで?」
べつの女子がそう聞いた。
「頭いいから。あと誰にでも敬語で真面目そう」
「あー。でも、真面目な男子ってどうなの?」
「まあ、つまんないかー」
女子たちがそんなことをいい合って笑っている中。
わたしは給食のシチューをひっくり返しそうだった。
いや、そんなことしないけど!
桜田くんはまじめなところがいいの!
それに、桜田くんは家では『どぐう』って書かれたハニワのTシャツを愛用していたり、わたしがご機嫌で踊ればいっしょに踊ってくれる、そういうおちゃめな一面もあるんだから!
まあ、わたしの妄想の中の話だけどね……。
それにしても桜田くんに目をつけるとは、いいセンスだ。
よけいにわたしは、もたもたしていられなくなった。
カバンの中のラブレターを早く桜田くんに渡さないと、誰かに彼を奪われてしまう!
結局、私はその日の放課後。
教室に誰もいなくなった隙に、桜田くんの机の中にラブレターを入れた。
これなら桜田くんにしか見られない。
わたしは任務完了とばかりに教室を後にした。
なんだかものすごい達成感で、夕日がまぶしく感じた。
夜景のきれいなレストランで、わたしと桜田くんは笑いあいながら食事をする。
だけど、今日の彼は妙にそわそわしていた。
ふとナイフとフォークを持つ手が止まる。
そういえば桜田くんの服装、今日はやけにカッチリしてる。スーツみたい。
ふふふ、似合ってるな、かっこいいな。
……じゃなくて。なんだか、今日はいつもと違う。大事な話があるとか?
ほら、こういう素敵なレストランでプロポーズってドラマでよく観る。
わたしも桜田くんも今年で二十五歳。
そろそろ結婚を考えてもいい年齢だとは思う。
だけど……桜田くんの口から「結婚」なんて言葉、聞いたことがないし。
わたしから口にして、彼が結婚どころかわたしとの未来なんて考えたことがないなんてわかったら、それこそ目の前が真っ暗になりそう。
あれこれと考えていると、桜田くんが心配そうに口を開く。
「どうしたの? 具合でも悪い?」
わたしはハッとして、首を左右に振る。
「ううん。なんでもない」
にっこり笑ったところで、テーブルにデザートが置かれる。
食べるのがもったいない花のようなきれいなケーキ。
よくよく見るとケーキの上には、キラリと光るものが乗っている。
それは指輪だった。
「結婚してください」
桜田くんが照れ臭そうにいった。
「ちょっとまて。ケーキの上に指輪を置いてあるとベチャベチャになるな」
わたしはそういって、妄想の旅から戻ってきた。
あちこちタイルのはがれたボロボロのお風呂を見ると、嫌でも今が十三歳で、おまけに桜田くんに片思いをしているという現実を突きつけられてしまう。
しわしわになった手を見て思う。
いや、でも、わたしはラブレターを渡したじゃないの。
まあ、机の中に押し込んだというのが正しいけど。
だから一歩どころか、だいぶ前進。
桜田くんにわたしの思いが伝わるんだから!
そう思ったものの、桜田くんがわたしのラブレターを読んだらどう思うんだろう?
迷惑だったら、今後の中学生活、かなり気まずいのでは?
だってまだ中学生活は始まったばかりだよ?
そんなことを考えると、どんどん後ろ向きになってしまう。
だからわたしは、妄想の中に逃げ込もうと――。
「真知子ー! いつまで入ってるのー! 寝てるのー?!」
母の声が聞こえてきて、わたしは妄想に逃げ込むことができなかった。
お湯はだいぶ冷めてしまったが、このまま出られない温度じゃない。
わたしは勢いよく湯船から上がる。
明日、桜田くんはラブレターに気づいてくれるとして。
どう思うんだろうか。
差出人がわたしだとわかったら、迷惑かな。
ああ、もう考えてもしかたないんだからやめよう!
次の日の朝。
わたしは学校に着くなり、そうつぶやいた。
少女漫画では、下駄箱に入れていた。
だけど……下駄箱って、誰にでも見えちゃうじゃん?
それじゃあ「桜田くんにラブレターを渡した女子がいる」ってバレバレでは?
わたしが一番避けたいのは、 他の男子に告白をからかわれることだ。
そして、告白したことが誰かにバレれば、たちまち噂になる。
そうしたら桜田くんに迷惑をかけてしまう。
わたしだって、冷やかされたいわけじゃない。
絶対に誰にもバレないようにしよう。
「桜田くんって、結構いいよねー」
給食の時間に、いつものグループの女子がそういった。
わたしは驚いて彼女を見た。
テニス部のリッチーだかミッチーがいいとかいってたのに?
よりにもよってわたしの桜田くんなの? いや、わたしのじゃないけど。
「え、桜田くん? なんで?」
べつの女子がそう聞いた。
「頭いいから。あと誰にでも敬語で真面目そう」
「あー。でも、真面目な男子ってどうなの?」
「まあ、つまんないかー」
女子たちがそんなことをいい合って笑っている中。
わたしは給食のシチューをひっくり返しそうだった。
いや、そんなことしないけど!
桜田くんはまじめなところがいいの!
それに、桜田くんは家では『どぐう』って書かれたハニワのTシャツを愛用していたり、わたしがご機嫌で踊ればいっしょに踊ってくれる、そういうおちゃめな一面もあるんだから!
まあ、わたしの妄想の中の話だけどね……。
それにしても桜田くんに目をつけるとは、いいセンスだ。
よけいにわたしは、もたもたしていられなくなった。
カバンの中のラブレターを早く桜田くんに渡さないと、誰かに彼を奪われてしまう!
結局、私はその日の放課後。
教室に誰もいなくなった隙に、桜田くんの机の中にラブレターを入れた。
これなら桜田くんにしか見られない。
わたしは任務完了とばかりに教室を後にした。
なんだかものすごい達成感で、夕日がまぶしく感じた。
夜景のきれいなレストランで、わたしと桜田くんは笑いあいながら食事をする。
だけど、今日の彼は妙にそわそわしていた。
ふとナイフとフォークを持つ手が止まる。
そういえば桜田くんの服装、今日はやけにカッチリしてる。スーツみたい。
ふふふ、似合ってるな、かっこいいな。
……じゃなくて。なんだか、今日はいつもと違う。大事な話があるとか?
ほら、こういう素敵なレストランでプロポーズってドラマでよく観る。
わたしも桜田くんも今年で二十五歳。
そろそろ結婚を考えてもいい年齢だとは思う。
だけど……桜田くんの口から「結婚」なんて言葉、聞いたことがないし。
わたしから口にして、彼が結婚どころかわたしとの未来なんて考えたことがないなんてわかったら、それこそ目の前が真っ暗になりそう。
あれこれと考えていると、桜田くんが心配そうに口を開く。
「どうしたの? 具合でも悪い?」
わたしはハッとして、首を左右に振る。
「ううん。なんでもない」
にっこり笑ったところで、テーブルにデザートが置かれる。
食べるのがもったいない花のようなきれいなケーキ。
よくよく見るとケーキの上には、キラリと光るものが乗っている。
それは指輪だった。
「結婚してください」
桜田くんが照れ臭そうにいった。
「ちょっとまて。ケーキの上に指輪を置いてあるとベチャベチャになるな」
わたしはそういって、妄想の旅から戻ってきた。
あちこちタイルのはがれたボロボロのお風呂を見ると、嫌でも今が十三歳で、おまけに桜田くんに片思いをしているという現実を突きつけられてしまう。
しわしわになった手を見て思う。
いや、でも、わたしはラブレターを渡したじゃないの。
まあ、机の中に押し込んだというのが正しいけど。
だから一歩どころか、だいぶ前進。
桜田くんにわたしの思いが伝わるんだから!
そう思ったものの、桜田くんがわたしのラブレターを読んだらどう思うんだろう?
迷惑だったら、今後の中学生活、かなり気まずいのでは?
だってまだ中学生活は始まったばかりだよ?
そんなことを考えると、どんどん後ろ向きになってしまう。
だからわたしは、妄想の中に逃げ込もうと――。
「真知子ー! いつまで入ってるのー! 寝てるのー?!」
母の声が聞こえてきて、わたしは妄想に逃げ込むことができなかった。
お湯はだいぶ冷めてしまったが、このまま出られない温度じゃない。
わたしは勢いよく湯船から上がる。
明日、桜田くんはラブレターに気づいてくれるとして。
どう思うんだろうか。
差出人がわたしだとわかったら、迷惑かな。
ああ、もう考えてもしかたないんだからやめよう!



