昼休みに僕らはいつものように三人で机をくっつけていた。
「ねえ、今日購買行かない?」
涼花がパンフレットを見ながら言う。
「いいけど、多分混んでるぞ」
「じゃあ走る?」
「なんでだよ」
「競争しよ、誰が一番早く着くか」
「子どもか」
そう言いながらも、聖真は少し楽しそうに笑う。
結局、三人で購買に向かうことになった。
廊下を歩きながら、涼花が聖真の隣に並ぶ。
「聖真ってさ、足速いの?」
「まあ普通」
「絶対速いでしょ」
「どうだろ」
そんな会話を、僕は一歩後ろで聞いていた。
前までは、自然と隣にいたはずなのに。
距離が変わったわけじゃない。
でも、立ち位置が少しだけズレている気がした。
購買はやっぱり混んでいて、人で溢れていた。
「うわ、やば」
「だから言っただろ」
「でも行く」
涼花がお構い無しに人混みの中にに入っていく。
「おい、危ねえって」
聖真がすぐにその後を追う。
僕も続こうとしたけど、一瞬だけ遅れた。
ほんの一歩分の差。
でも、その一歩が、やけに遠く感じた。
「はい、これ」
しばらくして戻ってきた涼花が、パンを差し出す。
「え?」
「雅也の分」
「……いいの?」
「うん、なんか好きそうだったから」
そう言って笑う。
その優しさが、余計に胸に刺さる。
「ありがと」
受け取りながら、小さく呟く。
三人で並んで食べるパンの味は、いつもと変わらないはずなのに。
なぜか少しだけ、苦く感じた。
それでも、僕の気持ちは消えなかった。
気づいてしまったからこそ、余計に強くなっていく。
放課後。
教室には、もう誰もいなかった。
夕焼けが差し込んで、机の影を長く伸ばしている。
僕は一人、席に座ったまま、白い紙を見つめていた。
何も書かれていないその紙は、やけに広く感じる。
ペンを持って、少しだけ迷う。
直接言えばいい。そんなことはわかっている。
でも、それができないから、こうしているわけだ。
心のどこかで怖いと思っているのだろう。
今の関係が崩れることを。涼花ならきっといつものようにまた話しかけてくれると思う。
その反面、もしもう話せなくなってしまったら、それを考えてしまって中々行動に移せなかった。
小さく息を吐いて、ようやくペンを走らせる。
「涼花へ」
たったそれだけの書き出しなのに、手が震えた。
言葉を選びながら、少しずつ書き進める。
去年のこと。
一緒に笑った時間。
どうでもいい会話が、どれだけ大事だったか。
そして——
「好きです」
その一行を書いた瞬間、手が止まった。
あまりにも単純で、あまりにも重い言葉。
これだけで全部伝わるわけじゃない。
でも、これがなきゃ何も始まらない。
何度も書き直して、何度も消して。
気づけば、机の上にはぐしゃぐしゃになった紙が増えていく。
それでも、やめる理由にはならなかった。
せめて、形にしたかった。
この気持ちが、本当にここにあったって証明を。
ようやく書き上げた手紙を、そっと折りたたむ。
——明日、渡そう。
そう決めたはずなのに、胸の奥は少しも軽くならなかった。想いを伝えようかはずっと悩んでいた。
だけど中々勇気を出すことが出来なかった。
そんな時に、SNSでとある言葉を見つけた。
『告白して失敗した経験はいずれ笑い話になって消えていく。だけど告白出来なかった後悔は一生残り続ける』
この言葉は僕の背中を押してくれた。
成功する確率が低いのは分かっている。それでも後悔だけはしたくない。自分が好きだと思った人に、ちゃんと思いを伝えたい。僕はそう決意した。
「ねえ、今日購買行かない?」
涼花がパンフレットを見ながら言う。
「いいけど、多分混んでるぞ」
「じゃあ走る?」
「なんでだよ」
「競争しよ、誰が一番早く着くか」
「子どもか」
そう言いながらも、聖真は少し楽しそうに笑う。
結局、三人で購買に向かうことになった。
廊下を歩きながら、涼花が聖真の隣に並ぶ。
「聖真ってさ、足速いの?」
「まあ普通」
「絶対速いでしょ」
「どうだろ」
そんな会話を、僕は一歩後ろで聞いていた。
前までは、自然と隣にいたはずなのに。
距離が変わったわけじゃない。
でも、立ち位置が少しだけズレている気がした。
購買はやっぱり混んでいて、人で溢れていた。
「うわ、やば」
「だから言っただろ」
「でも行く」
涼花がお構い無しに人混みの中にに入っていく。
「おい、危ねえって」
聖真がすぐにその後を追う。
僕も続こうとしたけど、一瞬だけ遅れた。
ほんの一歩分の差。
でも、その一歩が、やけに遠く感じた。
「はい、これ」
しばらくして戻ってきた涼花が、パンを差し出す。
「え?」
「雅也の分」
「……いいの?」
「うん、なんか好きそうだったから」
そう言って笑う。
その優しさが、余計に胸に刺さる。
「ありがと」
受け取りながら、小さく呟く。
三人で並んで食べるパンの味は、いつもと変わらないはずなのに。
なぜか少しだけ、苦く感じた。
それでも、僕の気持ちは消えなかった。
気づいてしまったからこそ、余計に強くなっていく。
放課後。
教室には、もう誰もいなかった。
夕焼けが差し込んで、机の影を長く伸ばしている。
僕は一人、席に座ったまま、白い紙を見つめていた。
何も書かれていないその紙は、やけに広く感じる。
ペンを持って、少しだけ迷う。
直接言えばいい。そんなことはわかっている。
でも、それができないから、こうしているわけだ。
心のどこかで怖いと思っているのだろう。
今の関係が崩れることを。涼花ならきっといつものようにまた話しかけてくれると思う。
その反面、もしもう話せなくなってしまったら、それを考えてしまって中々行動に移せなかった。
小さく息を吐いて、ようやくペンを走らせる。
「涼花へ」
たったそれだけの書き出しなのに、手が震えた。
言葉を選びながら、少しずつ書き進める。
去年のこと。
一緒に笑った時間。
どうでもいい会話が、どれだけ大事だったか。
そして——
「好きです」
その一行を書いた瞬間、手が止まった。
あまりにも単純で、あまりにも重い言葉。
これだけで全部伝わるわけじゃない。
でも、これがなきゃ何も始まらない。
何度も書き直して、何度も消して。
気づけば、机の上にはぐしゃぐしゃになった紙が増えていく。
それでも、やめる理由にはならなかった。
せめて、形にしたかった。
この気持ちが、本当にここにあったって証明を。
ようやく書き上げた手紙を、そっと折りたたむ。
——明日、渡そう。
そう決めたはずなのに、胸の奥は少しも軽くならなかった。想いを伝えようかはずっと悩んでいた。
だけど中々勇気を出すことが出来なかった。
そんな時に、SNSでとある言葉を見つけた。
『告白して失敗した経験はいずれ笑い話になって消えていく。だけど告白出来なかった後悔は一生残り続ける』
この言葉は僕の背中を押してくれた。
成功する確率が低いのは分かっている。それでも後悔だけはしたくない。自分が好きだと思った人に、ちゃんと思いを伝えたい。僕はそう決意した。



