罪人令嬢は、二度目の人生でも幸せになれない~誰にも愛されていないと信じたまま、私はまた笑う~

これは、他人の話なのに。

見ず知らずの、憎むべき異母姉の話なのに。

なのに、私は――自分自身を見ている。

鏡の向こう側の、もう一人の自分を。

拳を握り締める。

爪が皮膚を裂き、血が滲む。

母を壊した子。

幸福を壊した子。

生まれるべきではなかった子。

……それは――私だ。

エリナではない。

私こそが、その元凶なのだ。

彼女を拒絶することは、私自身を拒絶することと同じだ。

彼女を断罪することは、私自身の罪を暴くことと同じだ。

逃げ場など、どこにもなかった。

「……分かりました」

私は奥歯が砕けるほど噛み締めた。

「エリナの件、追及しません」

「ありがとうございます……!」

ミカレンは泣きながら何度も床に頭を打ちつけ、血を滲ませた。

その愚かで哀れな姿を見下ろしながら、私の心は死んだように冷え切っていた。

彼女が去った後、私は石の机に崩れ落ちた。

重い。

あまりにも重い。

九歳の日から、私は贖罪のためだけに生きてきた。

完璧な公爵令嬢になれば、過去は終わると思っていた。

……でも違った。

“あの日”は、終わらない。

鎖のように、何度も何度も私を縛り付ける。

そして――父の告白。

「……リリス、すまない……すべては私の過ちだ」

泣きながら抱きしめる父。

優しい父。

それが、こんなにも痛い。

私の罪を庇い、私のために嘘をつき、そしてその嘘の代償として新しい家族を背負い込んだ父。

「……分かっています。お父様」

私は笑った。

選択肢など、最初からなかった。

翌日。

私はエリナの教室へ向かった。

「……エリナ。出てきなさい」

震える彼女。

嘲笑するクラス。

私はその異質な空間に踏み込み、高らかに宣言した。

「……頭を上げなさい」

「……あなたは、タロシア家の人間よ。貴族の礼儀を学びなさい。怠れば許さない」

沈黙。

そして――歓声。

私は何も見ず、生徒会室へ戻った。

やがて――すべては、彼女へ流れた。

名声も、注目も、愛情も。

残ったのは――嫉妬と、絶望。

……後悔?当然している。

でも、それすら――私自身の罪だった。

「……リ……」

遠くから、音が聞こえる。

それは波音のようで、誰かの悲痛な叫びのようでもある。

「……リリス!」

……誰?

呼ぶのは誰?

もう、放っておいて。

私は終わったの。

役目は済んだの。

目が、開かない。

鉛を流し込まれたように重い。

ごめんなさい……。

もう……疲れました……。

どうか……このまま……眠らせてください……。

深い闇の底へ、私は自ら沈んでいく。

そこは静かで、誰も私を責めない場所。