罪人令嬢は、二度目の人生でも幸せになれない~誰にも愛されていないと信じたまま、私はまた笑う~

隠し子なのか。

カシリアはそう考えた。

おそらく、どこかの高位貴族が、身分の低い貴族の娘との間にもうけた子なのだろう。

彼女はカシリアの存在など気にも留めず、景色を眺めながら黙々と食べ物を口に運んでいた。

その食べっぷりは実に爽快で、思わず羨ましくなるほどだった。

やがて、自分が見つめられていることに気づいたのか、彼女は少しだけ動きを緩めた。

「なあ、そんなにじろじろ見ないでくれない? こういう食べ方が貴族のエチケットに反してるのは分かってるけどさ……でも、私はこうやって食べるのが好きなんだ」

「今のうちだ。学院に入ったら、少しは作法に合わせたほうがいい」

カシリアは苦笑しながら忠告した。

「分かってるって! なんでママと同じこと言うんだよ……みんなして脅すんだからさ。貴族になったら、どれだけ面倒なことが待ってるのか考えるだけで頭が痛くなるぜ」

――貴族になったら?

その言葉に、カシリアは違和感を覚えた。

法律上、正妻が生きてる限り、

私生児が貴族になることは不可能だ。

では、彼女はどういう立場なのか。

問いかけようとした、その瞬間だった。

【バルコニーのカーテンが勢いよく引かれた。】

「エリナ! どうしてこんなところに……探し――」

慌てた様子で現れたのは、先ほど会場の端で戸惑っていたあの夫人だった。

「あっ……!? カ、カシリア殿下!?」

夫人は彼を見るなり、即座に優雅な貴族の礼を取った。

その所作の滑らかさからして、決して低い家格の出ではない。

ますます不可解だった。

この国に、娘を平民のように育てるほど放任する貴族家が存在するとは思えない。

「殿下に失礼なことはしておりませんでしょうか……?」

夫人はエリナの腕を引き寄せ、小声で問いただした。

「してないってば! ここで隠れて料理食べてただけだよ。ねえママも食べる?」

母親が今にも噴火しそうな表情を浮かべていることなど意にも介さず、彼女は相変わらず呑気に食べ続けている。

「エリナ! 殿下がいらっしゃると分からないの!?」

夫人の声は一段と鋭くなり、無理に作った微笑みはすでに限界だった。

「ねえママ、殿下ってどんな貴族なの? そもそも“殿下”って爵位、なかったよね?」

「エリナ! この前渡した資料、ちゃんと読んだの!?」

ついに堪えきれず、夫人は声を荒げた。

その美しい顔は、もはや鬼の形相である。

「だってさ……あんな分厚い資料……長い名前ばっかりで、公爵と伯爵の顔と名前覚えるだけで限界なんだぜ……」

「昔通ってた騎士学院の一学期分より多いんだよ……」

肩を落とし、今にも泣き出しそうな様子だった。

「エリナ!!」

夫人の怒声は、会場まで響き渡りそうだった。

「ブハハハハ!」

あまりにも破天荒なやり取りに、カシリアはついに耐えきれず、再び大笑いしてしまった。